「いや、驚いた」
「なんで?」
「予想以上に面白かった」
「どこが?」
「上の句とは全く別の映画と思うべきだろう。ストーリーは連続しているが内容的にはまったくの別物」
「ずばりそれはなんだい?」
「上の句は5人のチームの話なのだがね。下の句はちはや対クイーンに話の焦点が集中していく。その中でチームの位置づけは個人主義者のクイーン対チームから力を受け取るちはやという構図に収束していく。チームは大切だが、物語的にはクイーン対ちはやという一点に収斂していく。当初、恋敵、三角関係という凡庸な構図に収まっていた物語が、最終的にその枠組みを壊してしまい、おいらが言うところのいわゆる【レズもの】に収束していく。途中まで王子さまのような顔をしていた男達は全員遠景に退場し、ひたすら女と女の対決に進むのだが、それは途中で【男を間に挟んだ抗争】の枠組みを外れて、男抜きで余人の入れない特別な領域に踏み込んでしまう。ゼロ領域を極めたクイーンは、もはやメガネ君がゼロの領域の住人ではないと知ると興味を失うが、今度はちはやという別の住人に触れて目が離せなくなる」
「クイーンとちはやの間にだけある特別な領域があるのだね」
「そう。もはやメガネ君とキザ夫君はちはやを争っているとは言えない状態だが、それでも二人で競い合ってゼロの領域を目指さねばならない立場のだ」
「他に何か気付いたことがある?」
「なぜ福井なのが。それは滋賀で全国大会をするからだ。福井からなら駆けつけられる」
「で、結局君が一番良かったのは?」
「最後に主人公が負けちゃうところ」
「負けてもいいの?」
「負けたことは実は本質ではない」
「ゼロの領域に入ったことが重要なのだね」
