「ときどきさ。見えちゃうわけだよ」
「何が?」
「ヤマトファン銀河百年戦争の戦闘場面を」
「つまり、それは実在の戦争なんだね?」
「そうだ」
「過去にはどのへんが主戦場だった?」
「ヤマト1974原理主義者と後継作品ファンの間の戦いが主であったが、そのうちに西崎派と松本派になって、最近では旧作派と新作派だな。今は、ヤマト2202ファン対アンチ2202派の対立がおそらくはメインだろう。まあ他にも戦場は無数にあるのだが」
「なぜ停戦協定は発効しないの?」
「永遠に発効しないよ」
「なぜ発効しないんだ?」
「なぜなら、実は【みんなで争わずに仲良くヤマトを見ましょう】というメッセージそのものが火種だから」
「えー。まさか」
「この主張には、実はもう1つ別のメッセージが付いてくる」
「それはなんだい?」
「旧作から順番に見ろなどと無理強いはいけない。新規のファンが逃げてしまう」
「まあ確かにそうだね。明らかに古すぎるアニメの無理強いは良くないだろう」
「そうすると、【みんなで争わずに仲良くヤマトを見ましょう】というメッセージは、自動的に現行の新作ヤマトをみんなで仲良く見ましょう、というメッセージになるのだ」
「それは新作よりも旧作が好きなファンには耐えがたいね」
「そうだ。そのメッセージには絶対に乗れない。乗ったって永遠に彼が見たい旧作を見られる機会は生まれないからだ」
「そんなの知るか、と言って尻を蹴飛ばして家に帰って旧作のDVDかBDを見るわけだね」
「そうだな。その方がずっと彼には楽しい」
「それだけなら個人の自由じゃないの?」
「単純に同じ趣味を持っていないと理解して、層がセグメント分けされるだけならそれで終わる。だが、そうはならない」
「なぜ、それで終わらないの?」
「新作ヤマトの情報だけが世間に溢れているから彼の周囲はヤマトイコール新作ヤマトということになる。従って、彼は高確率で誤解される。好きでも無いものを好きだとレッテル貼りをされる」
「それは耐えがたいわけだね?」
「そう。忍耐の限度を越えて切れた彼には、理屈も理性も事実も何も無い。ただ不快だから暴れるだけだ」
「なぜ暴れるの?」
「他の選択肢が奪われているからさ」
「なぜ奪われてしまうの?」
「ヤマトの新作が欲しいならば応援しなければならない。それが正しいファンのあり方である、という主張の前に彼の立場は弱い。応援しない彼は正しいファンではない。罰すべき罪人であると見なされてしまうからだ。罪人が何を言っても、そんなものは聞いてもらえない。彼は正しき秩序という名の戦闘衛星をぶっ壊して旅立つだけだろう。そこに秩序も正しさも存在しないよ。反乱とはそういうものだ」
オマケ §
「つまり、古代の行動は古代視点で見ているから正義に見えるだけで、視点が違えばクソだよってことだね」
「そうだよ。もし、職場の誰かが突然職務放棄して集団で公用車かっぱらってどっかに走って行ったらどう思うか。大口顧客が『うちのためのパシリだから見逃してやって』と言ってきたら追跡を辞めても、それで気持ちが許せると思うか?」
「古代大悪党説だね」
オマケ2 §
「そうか。これもパンドラの箱だな。叛逆の物語は、叛逆そのものがテーマであるがゆえに、常にファンにも叛逆が付きまとう。従って、オフィシャルは厳しい締め付けを行って、正しいファンを正しいとして選別しなければならないが、それをやればやるほど叛逆の目が産まれる。そしてアニメ作品そのものが叛逆のやり方をファンに教えてしまうという逆説が存在する」
「セーラー服叛逆同盟の感想だね?」
「そういうことにしておこう」
オマケIII §
「大変です! セーラー服叛逆同盟はアニメじゃないというセーラー服叛逆同盟警察の人たちが表に!」
「なに、セーラー服の警察? スケバン刑事か?」