「デラックス版の古書を手に入れてよく分かったが、さらば宇宙戦艦ヤマトという映画の本質は古代の贖罪だ。だから、古代は死なねばならずヤマトは沈まねばならない。ヤマトが残存する結末はあり得ない。戦いの無益さを悟った古代は戦闘兵器であるヤマトが存在し続けることを許容できないからだ」
「つまり、ガミラスを滅ぼした負い目が古代を贖罪に駆り立てるわけだね」
「そうだ。だから古代は死なねばならない。理由は、ガミラスを滅ぼしたからだ」
「ポイントはそこか」
「ところが、この話をヤマト2202に持ちこむと話がおかしくなる」
「なんで?」
「古代はヤマト2199でガミラスを滅ぼしていないから贖罪すべき罪が存在しないのだ」
「えー」
「従って、ヤマト2202は新しい罪を産み出すことから話を始めねばならない」
「時間断層の軍艦工場とか波動砲だね」
「そうだ。だが古代自身が作ったわけではないから、古代は贖罪者にはなれない。むしろ、沖田が交わした約束を破る悪い地球の糾弾者なってしまう」
「なるほど。さらば宇宙戦艦ヤマトとヤマト2202の違いは、古代が贖罪者になるか糾弾者になるのかか」
「そうだ。藤堂が煽ってヤマトを反乱させたのがさらば宇宙戦艦ヤマト。ガミラスが自分で糾弾すると角が立つのでヤマトを反乱させて代弁者としたのがヤマト2202ってことじゃないのかなあ」
「代弁者としてきちんと行動するか監視するためにキーマン君を乗せたわけだね」
「そうだな。実はさらば宇宙戦艦ヤマトの古代は主体的に動いているようで藤堂の手の平の上だった。フリーになるのは藤堂が自分の正体を明かして土方が艦長になった後だ。とすれば、ヤマト2202の古代も主体性はなくキーマンの手の平の上。何かの切っ掛けがあるまで、古代は主体的に動けないのかもしれない」