「あるとき、ナスカ級の空母にレスカという名前を与えた」
「うん」
「ヤマト2199のスタッフはキスカという名前を与えた」
「それがどうした」
「その2つは何が同じで何がどう違うのか」
「ふむふむ」
「そもそも、同型艦で語尾を揃えるネーミングの事例は少ない。ラト姫物語ではやったがね」
「それで?」
「そういう意味で、特殊なネーミングで似ていると言えば似ている」
「じゃあ、何が違うの?」
「うん。そういう前提で考えると、先頭1文字を置換して同型艦の名前を作るとすると、いちばん似合わない名前がレスカ。いちばん付けてはならない名前がキスカ」
「どっちもダメじゃん」
「そう。どっちもダメなのだ」
「なぜダメなの?」
「レスカと言えば、レモンスカッシュの略称。これほど軍艦に似合わない名前もない」
「そうだよな。コーヒー級空母とかコーラ級戦艦とか紅茶級巡洋艦なんてないものな」
「ましてレスカだ。とても似合わない」
「そんな似合わない名前をなぜ付けた」
「似合わない名前をあえて付けるミスマッチだよ。諧謔と言っても良い。これは本気で書かれたストレートな作品ではない、という意思表示だ」
「つまり、【飛鳥の征けぬ空はなし】のパロディに過ぎないってことだね」
「そうだな。真面目な体裁を取り繕っているが、本来は笑いのために書かれたものだ」
「それでキスカは?」
「キスカは【奇跡の作戦キスカ】という映画があり、しかも史実の奇跡的な撤退作戦が行われた場所でもある。あれは史実の上で意味がある名前であって、うかつに使っても変なイメージが付いてしまって好ましくない名前だ。まあはっきり言って普通のフィクションなら名前負けする。それどころか、要らない反感を買う可能性すらある」
「だから、付けてはならない名前なのだね」
「そうだな。おいらはそう思う」
「だから、いちばん似合わない名前がレスカで、いちばん付けてはならない名前がキスカなのだね?」
「そう思うよ」
オマケ §
「だからさ。レスカの艦長の名前はカフェオレで、『そうだ。サイダーを飲むか?』と言われるダサい展開に入るんだぜ」
「やってやるぜ、的な展開だね」
「しかも次に来るのはミルク」
「まさに、スタン帆船的な、というかラムネ的な展開」
「これは真面目に書かれた作品ではありませんよ、というサインとしてそこに入っているのだ」
「下手に真似したら自動的に『真面目に書かれていませんよ』というサインを取り込むことになってしまうわけだね」