「自転車で走っているとき、突然正解に行き当たった気がした」
「正解とはなんだい?」
「ハーロックというキャラクターには中身がない。だから、作り手、受け手が自分のヒーロー像を投影する」
「つまり【地球の秩序に逆らうからヒーロー】というハーロック像もあれば、【海賊になっても本当は地球を守る愛国者】というハーロック像もあるわけだね」
「他にもいっぱいあるぞ」
「どうなってるんだ?」
「結局、ガンフロンティアのハーロック像がもっと純粋なハーロック像だろう」
「ガンフロンティアのハーロック像とは?」
- 混血し過ぎて何者か分からない
- 自己主張が薄い
- 白人みたいなものとして白人社会から受け入れられたり、やはり有色人種として追い出されたりする
- いつもシヌノラのセックス相手をしているのに、最終的にシヌノラがこわだるのはトチロー
「結局要約するとなんだい?」
「【何者かよく分からない】ということだ」
「何者でもあり、何者でもないのか」
「そう。それが中空ということ。その空隙を埋めるのは作り手であり受け手である。そういう意味で、正しいハーロック像というものは存在しない。誰でも自分のハーロック像を持っているが、それはハーロックというキャラクターに中身がなく、鏡として機能するからに過ぎない」
「今最大公約数的に【ハーロックだ】と思われているハーロック像は?」
「おそらく、りんたろう解釈、テレビアニメの宇宙海賊キャプテンハーロックの解釈だろう」
「切田や繭がいる解釈だね」
「そう。ダメな地球でも結局守ってくれるある意味でご都合主義的なヒーロー像」
「ふむふむ」
実は古代も §
「そのように考えたとき、実は古代進も同じように中空なヒーローとして機能していることに気付いた」
「古代進が中空のヒーローとは?」
「エピソードごとに性格が微妙に違うのだ。個々のエピソードに適合するように、古代進の性格はその都度修正されている」
「確かに、繊細なのか大胆なのか分からないね」
「だから、意外と作り手や受け手が持っている【自らのヒーロー像】が古代進に投影されているのではないかと思うのだ」
「それは何を意味するんだい?」
「だからね。方舟や2202の古代に対して【古代君最高。やっぱり古代君はいい】から、【これが古代とは笑わせる。まるで別人】までいろいろな感想を誘発する」
「なんてことだ」
「だからハーロックのリメイクが成功しないのと同じように、ヤマトのリメイクも成功しない」
「【これでいい】【いやダメだ】という無限に続く無益な争いが続くだけ……ってことだね」
「そう」
「つまりなんだい?」
「個々人が古代進だと思って見ていたものの正体は実は鏡だったということだ。だから、最初から人によって違うものが見えていた。それに対して新し具体像を提示すると、必ず【これだ】という人と【これじゃない】という人が出る」
「単純なリメイクは紛争の火種として必ず機能してしまうわけだね」
「そう。出来の善し悪しは関係ない。ともかく火種になる」
「ヤマトファンならみんな仲良く新作ヤマトを見よう……というのは?」
「むしろ、火に油を注ぐ悪手。それは誰かの個人的感想の強制否定につながり、断絶を激化させる」
オマケ §
「余談だが、おそらく同じ理由でキューティーハニーのリメイクも失敗する。というか、キューティーハニーのリメイクは破綻の積み重ねだ。結局、新キューティーは良かったね……という話から先に進めない」
「えー」
「実は鉄腕アトムも同じかもしれない。でもジェッターマルスなら大丈夫。ジェッターマルスにはジェッターマルスの強い個性があって、自己主張するからだ」