「宇宙戦艦ヤマトは松本零士だけのものではない。そのことは再三言ってきた」
「そうだね。そもそも企画の原点は彼には無いわけだね」
「かといって、【松本ワールドの統合】と言ったとき、宇宙戦艦ヤマトを除外して良いのかと言えばそれも違う。宇宙戦艦ヤマトの一部は間違いなく松本ワールドなのだ」
「確かに、一部の要素は確かに松本ワールド由来だね」
「そう。しかも、ヤマトの原作は松本零士ではないが、一部のヤマトでは原作松本零士とクレジットされているのは事実」
「つまり、松本ワールドの問題という視点から見た宇宙戦艦ヤマトという問題があるわけだね」
「そうだ。それはダンガードAの問題と似たような位置づけだ」
「ダンガードAには松本零士の趣味とは到底思えない要素も含まれているが、それでも松本零士原作として松本ワールドの一部として扱う意味があるわけだね」
「そうだ。帰属の曖昧さ、多数の外部の貢献があるとしても、松本零士要素もあるから松本作品として松本ワールドを構成する一部になってしまう」
「それで話の要点はなんだい?」
「松本ワールドの統合という問題がずっと長い間存在している。1990年代ぐらいからずっとあったはずだ」
「なぜ統合という問題が浮上したんだい?」
「似た世界観、似たキャラクターが登場することが多いにも関わらず設定が個々の作品ごとに行われていて、世界が一貫しているのか一貫していないのか曖昧過ぎた……ということだろうな。手塚的なスターシステムと言うにはそこまでは割り切れていなかった。そこで、世界の統合という遠大な目標が産まれるのは必然だろう」
「でも、それは上手く行ったの?」
「90年代はあまり上手く行っていなかったような気がする。だから、松本アニメのも駄作が多かったような気もする。松本零士がアホなことをしている……という目で見られた時期もあったと思うよ」
「でも流れは変わったの?」
「新宇宙戦艦ヤマトの失敗を受けた00年代ぐらいから、流れが変わっていると思う」
「たとえば?」
「もともとアルカディア号を作ったトチローは四畳半に住んでいるようなキャラではなかった。そかし、コスモウォーリアー零OVAではトチローは四畳半に住んでいることになってしまった。似たようなキャラが他の作品では四畳半に住んでいるからだ。そういう、割り切りができるようになってきたのが新しい潮流だと思う」
「だから次元航海でも、本来別人の設定がいろいろ流れ込んできているわけだね」
「そう。そこで、本来関係ない他人から見た新しいイメージがいろいろ沸いて出てくる」
「テロリスト扱いされた星野鉄郎みたいな描写だね」
「そう。それは新鮮だ」
「羽黒妖が予定調和的に人を集めるだけの緊張感の無い話とは違うわけだね?」
「そうだ。むしろ陣営分けが難しい世界になっている。イルミダスがマゾーンの味方というわけではない宇宙で何が起こるのか」
「メタノイドと戦えば良い世界とは違うわけだね」
「そうだ」
「ってことは、メタノイドと戦っていた大ヤマト零号は古い時代の最終段階って事になるのかな?」
「そういう面はあるのかも知れない。大ヤマト零号の挫折が、メタノイド頼みの物語構成にダメ出しをしたのかも知れない」
「でも、大ヤマト零号はそれなりに面白いのだろう?」
「そうだ。メタノイドと違うガイラー総統を登場させて、メタノイド頼みの物語構成にはなっていないからな」
「今でもメタノイドという言葉は出てくる場合がありそうだけど」
「出てきても位置づけはもう同じではあるまい」
「その新しい松本ワールドの担い手は誰なんだ?」
「おそらくスタッフが世代交代している」
「じゃあ、その新しい世界に入り込んだ宇宙戦艦ヤマトはどんな風に扱われるんだ?」
「それこそ、予測が付かない。どんな役割が与えられるのか。かつて、999やアルカディア号と並んで宇宙を飛ぶ宇宙戦艦ヤマトは違和感だらけだった。しかし、次元航海の描き方を見ていると、今なら宇宙戦艦ヤマトも無理矢理同居させてしまうことが可能ではないか……という気もした」
「ヤマトが出ると聞いてダナサイト9999を買ったが本当に一瞬しか登場せずにガッカリした昔とは違うわけだね」
「新宇宙戦艦ヤマトにがっかりした昔とは違う流れになっている」