「この本はなんだい? アニメの本かい?」
「純然たる歴史の本だ。ノンフィクションだ」
「なら、なぜタイトルに宇宙戦艦ヤマトと入っているんだい?」
「70年代の宇宙戦艦ヤマトにまつわる神話の闇に切り込む内容だからだ」
「宇宙戦艦ヤマトの本ではない?」
「宇宙戦艦ヤマトを切り口に70年代に切り込んだ本だ。主題はどちらかといえば、70年代だ」
「じゃあ最近やってるリメイクの宇宙戦艦ヤマトは?」
「全く扱っていないよ」
「宇宙戦艦ヤマト・イズ・デッドって、ヤマトはオワコンという意味ではないの?」
「違うよ。ここで死んで頂こうとしているのは宇宙戦艦ヤマトではなく、神話の方だ」
「神話と聞くと神に楯突いているような大それた話に思えるね」
「じゃあ、偽史と言い直そうか。宇宙戦艦ヤマトという作品には偽史がまとわりついている。そのことを示して偽史に引導を渡す。これが【イズ・デッド】の意味」
「偽史よ死んでくれ、という願いがあってのタイトルだね」
「作り手と客がいればいつまでもコンテンツは続く。別に終わることはない」
「でも、不確かな俗説や偽史はきちんと処理した方がいいわけだね」
「そう。そして、そのような曖昧な情報は実は70年代全般に対して存在する。しかも、70年代を経験している者達がいちばん危ない。自分は経験しているという過信があって脇が甘い」
「宇宙戦艦ヤマトは切り口に過ぎないってことだね」
「そう。1つのアニメ作品に限定される矮小な話ではない」