「さて。70年代終末思想と311と宇宙戦艦ヤマトはつながっているという話をそのまま延長していくと面白いことが分かってくる」
「それはなんだい?」
「70年代終末思想はそれ単体で独立したものではない。戦中戦後の混乱期を経験した日本人は70年代を【本当の光景には思えなかった。何かしっぺ返しがあるように思えた】と思っていた。だから、終末思想が受けた」
「それで?」
「その思想の延長線上に311以降の反原発はある。彼らは【何となく納得が行かないから、その気持ちを正当化する論拠を創造する】ということで、ノストラダムスの大予言に対応するフクシマを産み出した。しかし、ここで問題が1つある」
「どんな問題だい?」
「彼らは世代的に戦中戦後の混乱期を経験していない。従って、その時代のトラウマを持っていない」
「確かに」
「では何が彼らのトラウマなのだろうか」
「何だろう?」
「【ジャパンアズナンバーワン】あるいは【普通の国日本】だろうと考えてみた」
「なぜそれがトラウマになるんだい?」
「現実ではなかったからさ」
「えー」
「特に【普通の国日本】は一番よくない」
「なぜだい?」
「なぜなら、日本は普通の国にはなれないからだ」
「どうしてなれないの?」
「在日米軍がいるから、アメリカに尻尾を振るしかない。自国の舵取りを自力で決める力は無いんだよ」
「在日米軍を追い出したら?」
「常識的に考えれば在日米軍は既得権益だから出て行かない。実力で追い出すだけの戦力は日本にはない。別の国の戦力で追い出したら、親分がアメリカからその国に変わるだけ。もし何かの方法で円満に退去をさせることができたとしても、その後日本だけで日本を防衛することはまず無理。それだけの戦力はない。特に核兵器を持っていないのは痛い」
「なぜ核兵器がないと痛いの?」
「核兵器は威力に比して安上がりだからね」
「じゃあ、普通の国には絶対になれないのに、普通の国になると言い張った政治家がいたから、それが日本人のトラウマになっていると?」
「そう。結局、今流行りの【ニホンスゴイ】も同根だ。子供が【僕は強い】と言い張るのと同じように日本は凄いと言い張らねば崩壊してしまう何かがある」
「間違った【ジャパンアズナンバーワン】だね」
「そう。【日本の努力はお手本にするに値する】という話が、どこかで【日本人は優秀だから努力する必要はない】に化けた」
「それがどうヤマトに関係するんだい?」
「だからね。ヤマト2199やヤマト2202に流れる思想性のバックグラウンドはそれだと思えば筋が通るんだよ」
「つまりなんだい?」
「【ヤマトは強い】【地球は優秀】という【ヤマトスゴイ】の思想に染まっている。ヤマトが沈むという危機感はそこにはない。危機感がないから、なぜかガミラスを救って帰ってこられる。地球を救うコスモリバースを積んだヤマトで撃ち合いもできる」
「それを何か象徴することはあるかい?」
「第3艦橋が一度も失われていない」
「第3艦橋が無くなれば、次はヤマトそのものかもしれない……という危機感の演出は無いわけだね」
「そう。危機感がなくなったら物語は平べったくなってつまらなくなる」
「つまりなんだい?」
「だからね。ヤマ2199や2202は【普通の国日本】と【ヤマトスゴイ】を描こうとしていると思えばだいたい当たりではないかと思う」