「実ははっと気付いたことがある」
「それはなんだ?」
「以下の対立には深い意味があった」
「その意味とはなんだい?」
「オタクとの断絶、3次元忌避との断然そのものだ」
「詳しく説明してくれ」
「子供時代の自分の根っ子にあったのは模型と特撮だった。つまり、父親が作る模型を見て育った」
「ではH君は?」
「親が漫画家であったから父親が描く絵を見て育ったはずだ」
「それで?」
「つまり、ここで既に2Dと3Dの断絶が存在していて、絵が全く異質な方法論で描かれている」
「それがそんなに大きな問題かい?」
「そうだ。これは最近の自分がおかれていた状況そのものだ」
「というと?」
「マンガやアニメを前提として同人誌を作るオタク達は2D的な発想をする人たちだ。最初から立体で発想するおいらとは、実はもの凄く感性に相容れないところがある」
「君は3Dで発想するのだね?」
「そう。模型を作り特撮を見て大人になってからは3DCGも自分でやった。発想は完全に3次元」
「今でもその対立はあるの?」
「いや、マンガ作成ソフトでも3Dの人形を使えるみたいなのでね。このギャップは縮まりつつあると思うがね。10年ぐらい前には普通にあったと思うよ」
「その縮図がそもそも1970年代の子供の頃には既にあったわけだね?」
「そう。でもあまり顕在化はしていなかった。H君はレッドバロンが好きだったと記憶するが、あれはれっきとした特撮。おいらが見ていた宇宙戦艦ヤマトはアニメだからね。そこは綺麗にわかりやすい世界ではない。しかし、描かれたものを見れば発想の根っ子がどこにあるかは明確だ。2Dか3Dかの違いはくっきり読み取れる。そのことは、今どきのオタクとの間に明確にラインが存在する」
「今どきのケースだと、たとえばどこで違いが分かる?」
「たとえば、宇宙戦艦の格好いいパース絵一つで既に違いが出るよ。こっちはあくまでカメラとレンズと立体形状の問題として捉えるが、2Dの人は割と絵的な嘘を付いてインパクトを入れてくるから」
「なるほど。それが一部の人気メカデザインをぶっこき降ろす理由?」
「まあ理由の1つではあるな。どんなかっこいいパース絵を量産できても、それは形状をデザインしたことにはならない」
「全部合わせると矛盾しまくって立体形状にならないわけだね」