「一つ気付いたことがある」
「それはなんだい?」
「なぜ「トリスを飲んでHawaiiへ行こう!」の柳原良平のアートミュージアムが横浜港にあるのか」
「何か理由があるのかい?」
「横浜こそがハワイへの窓口だからさ」
「成田じゃないの?」
「まだ成田に国際空港は存在しないよ」
「じゃあ羽田」
「そう。なぜ羽田ではなく横浜なのか。その理由はやっと分かった」
「理由があるの?」
「そうだ」
「教えてくれ」
「WikiPediaによれば、【当時、海外旅行は自由化されていなかったため、1等賞品はハワイ旅行ではなく積立預金証書となっている。】とされている。つまり、旅行資金がもらえる証書であって旅行が当たったわけではないのだ」
「実際には行ってないってことだね」
「【1964年4月に海外旅行が自由化され[9]、1等当選者は4月18日夜にハワイへと旅立った[10]。しかし、1等当選者の大半は商品を現金(約40万円)と引き換えることを選択したため、実際にハワイへ行ったのはわずか4人であった[4]。】と書かれている。4人以外は行ってない。しかも行ったのは後日」
「つまり、当初はあくまでハワイのイメージだけで売っていたわけだね」
「そうだ。そして、民間航空が本格化するのは戦後のことなので、海外旅行自由化前の一般庶民の海外旅行のイメージは船旅なのだ」
「ってことは、空港から旅行に行くイメージではない?」
「おそらく、横浜あたりの国際港から出港するイメージが濃厚なのだろう」
「だからトリスを飲んでHawaiiへ行こう!が横浜につながってしまうわけか」
「柳原良平は船の絵が得意だから、たぶん船旅のイメージと連動していたと思うよ」
「それが起用理由として想定できるわけだね」
「そうかもね」
「実際にハワイに行ったのは海路? 空路?」
「トリス広告25年史を見たら書いてあるのかも知れないが。見るのは手間が掛かりそうだな」
オマケ §
「で、君がそれを気にする理由はなんだい?」
「これもまた、戦後の歪んだ時間空間が引き起こした状況の事例だからさ」
「なぜ歪む」
「進駐軍がいろいろ日本に制約を課したので、やたら古い価値観が温存される場合があった。それらが昭和30年代になって急速にギャップを埋めるために急伸する場合があったからだ。そのタイムスケールの歪みが、いろいろな珍事を引き起こしている」