2019年03月23日
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【新日本宇宙軍重巡洋艦『高尾』7: 最終突入指令! 神の絶対不可侵領域!!】はパンドラの箱を開く

Written By: 遠野秋彦連絡先

新日本宇宙軍重巡洋艦『高尾』7: 最終突入指令! 神の絶対不可侵領域!! 新日本宇宙軍重巡洋艦『高尾』7: 最終突入指令! 神の絶対不可侵領域!!

 作品は書かれたものが全てであって、受け取った読者のものである。

 であるから作者があれこれ作品を語るのは全て野暮というものだし、後書きにいろいろ書いてあるのも本来は要らない情報である。

 しかし、作者の語りを望む読者も多いし、語らねば宣伝にならないので少し語ることにする。

 本作は高尾第2シリーズの最終巻を意図して書かれた。

 高尾第2シリーズは、高尾第1シリーズで描かれなかった謎、【人類にマージウムなどの宇宙航行物質を与えたのは誰か】という問題に解決を与えるための書かれた。従って、本作の結末ではそれ(ギフター)が誰であったのかが明らかになって終わるが、正体を明かしてはネタバレになるのでここでは書けない。

 その代わり、本作の特質について説明しよう。

 前巻では改装中の高尾がテロリストの空飛ぶ潜水艦GO天狗号と砲撃戦を行って勝利した。主砲は撃てなかったが副砲で撃ち合いをやった。しかし、本作で高尾は一発も撃たない。高尾艦内でテロリストとの銃撃戦は発生するが、高尾に装備された主砲も副砲も発射されることはない。それはなぜか。

 軍人は海外にあっては外交官として振る舞うものである。その外交官としての交渉の振る舞いにこそ重点を置いて書かれた小説だからである。高尾は、メガウォールの向こう側にジー・オー・ディーという存在を発見する。それを守護するガーディアンという存在も発見する。高尾に派遣されたガーディアンの代表者、ガーディアン・ガイを経由して、ガーディアン本部とジー・オー・ディーと交渉しつつ、ギフターを探す物語になる。高尾を妨害するテロリストとは戦うが、ガーディアンもジー・オー・ディーも高尾が戦うべき相手ではない。むしろ、誤った交渉で敵にまわしてはいけない存在なのだ。

 従って、高尾艦長崎村ミゲルに要求されるのは戦って勝つことではない。交渉を上手くこなし、妨害を排除し、高尾が人類への贈与者ギフターの元に辿り着くことなのだ。

 それゆえに、高尾第2シリーズ最終巻となる本巻の内容は、宇宙の彼方で未知の驚異に立ち向かう冒険物語ではあるが、戦争物語ではない。

 取りあえず大砲を撃って敵を倒して万歳万歳と叫ぶ小説の方が受けるのは分かっているが、こういう物語の方が本来の意味での軍艦の軍艦らしさを描いていると思う。それに敵を倒す作品なら山のようにある。もっと違う軍艦の魅力を描くことに価値があるに違いない。

余談。 §

 当初の予定にはなかったが、高尾第2シリーズの最終巻ということもあり、本作の巻末にはミニミニ用語集を付けた。例によって本編には登場していない多くの設定がここで開示されている。(一部は用語集のために追加設定された)

 野球に関する用語がいくつか含まれているのは、野球を宇宙に広めようとしている密航者が高尾に乗り込んでいるからである。予測不能の彼の行動が物語の展開をねじ曲げてしまうのだ。ちなみに、作中では高尾のブリッジで三角ベース(ハンドベース)を行うシーンがあるが、野球に親しみの無い読者への便宜として用語集で三角ベース、ハンドベースを解説している。これを行うために用語集を付けると決断したのである。

 読者としては、是非とも用語集を読んで、スター・ヒューマン選手が二十世紀のアニメの魔球を再現する光景や、アイドル歌手詩宮四季が行う始球式、光学迷彩で消える透明ランナーなどを想像して楽しんで頂きたい。

表紙の文言について §

 表紙に"FINAL BATTLE, FINAL HOPE, and FINAL FANTASY"と書いてあるのは、本作の英題と考えて頂いても構わない。ただし、ゲームで有名なFINAL FANTASYシリーズとは何の関係もない。本作の内容をイメージする単語として、FINALとFANTASYが浮かんだのでつないでみただけである。本作はBATTLEを経てHOPEを見いだし、最後にFANTASYの領域に至るのである。そして、それらは全て終わり(FINAL)である。

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