「そもそもパソコンとは何かという定義からして曖昧であるが、ここではアラン・ケイの話は除外して、【はじめて自らパーソナルコンピューターを名乗った国産機は何か】という観点で話を進めよう」
「君がこれまで考えていた初の国産パソコンとはなんだい?」
「PC-8001だ」
「その理由は?」
「箱に書かれたPersonal Computerの文字が凄く異質に感じられたからだ。当時はみんな【マイコン】と呼んでいたからね」
「ふむふむ。製品がPersonal Computerを自称したわけだね」
「でもね。MZ-80Kの本体や箱にもパーソナルコンピューターと書かれていたという指摘をもらって改めて調べて仰天した」
「何に驚いたんだい?」
「以下は月刊I/O 1979年2月号の九十九の広告だ」
「パーソナルコンピューターとはっきり書かれているね」
「この時代PC-8001はまだなく、COMPO BS/80が売られている。それどころか、ワンボードマイコン製品がまだ大量に売られている時代だ。COMPO BS/80はコンポと書かれている。その他はだいだい何も書かれていないかマイコンだ。この号の中でパーソナルコンピューターと書かれて宣伝されているのはざっと見た限りApple-IIとPET-2001とMZ-80Kだけ。ただし、MZ-80Kもミズデンの宣伝ではマイコンと明言されてしまっている」
「つまりなんだい?」
「Apple-IIもPET-2001もアメリカ製だから、明らかにパーソナルコンピューターを名乗ったのはPC-8001よりもMZ-80Kの方が先。ただし、MZ-80Kは初期段階ではマイコン博士ジーエイティであり、MZのMは明らかにマイコンのMだから、最初にアナウンスされたMZ-80Kはまだパーソナルコンピューターではなくマイコンだったと思われる。それからネットには【ホビーコンピュータ】と書かれていたという情報もあるので、パーソナルコンピューターではなかったと思われる。製品化するに当たって、最終的にパーソナルコンピューターという呼び名に変化していったものと思う」
「でもマイコンと呼ばれることもあったのだね?」
「マイコンとパーソナルコンピューターの表記は混在したものと思う。たとえば、http://retropc.net/ohishi/museum/mz80k.htmのページの真ん中あたりに掲載された【MZ-80Kが製品として発売された時のパンフレット】だと表は【本格派マイコン】なのに裏は【パーソナルコンピューター】と書かれている」
「切り換え過渡期の混乱?」
「用語の混乱はかなりあったものと思う。だから、ミズデンはマイコンと言い切り、九十九はパーソナルコンピューターと言い切ったのだと思う」
「では、ここから【パーソナルコンピューター】という用語は普及したのかな?」
「PC-8001発売時でもまだ【マイコン】の全盛期だから普及しなかったと思うよ」
「それでもMZ-80Kを初の国産マイコンだと思うの?」
「少なくとも、こちらが典拠をチェックした限りでは、自ら【我こそはパーソナルコンピューターなり】と声を上げた初の国産機ということになる」
「しょせん、パソコンは定義のない【自称】ってことだね」
2019/08/20追記 §
「その後の研究の成果はこの本にまとめた」
「はじめてパーソナルコンピューターを自称した国産機ってどれ?」
「読めば分かる」
「ケチ。教えてよ。ベーシックマスターだろ?」
「はずれだ。たぶんみんな知らない機種だから読まないと分からないぞ」