2020年11月21日
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宇宙戦艦ヤマトの名称変遷の仮説

Written By: トーノZERO連絡先

 【アニメ・特撮ヒーロー誕生のとき―ウルトラマン、宇宙戦艦ヤマトから六神合体ゴッドマーズまで】を入手できたので、少々ヤマト研究が進展した。話が小さいので電子書籍にはまとめないでブログ記事にまとめる。

表紙

 宇宙戦艦ヤマトの名称は、当初藤川案の宇宙戦艦コスモと、豊田案のアステロイド6/アステロイドシップ、西崎案の名称としての戦艦ヤマトがあったとされる。アステロイド6/アステロイドシップのどちらが正しいのかは不詳である。ただし、豊田本人はアステロイド6表記で本に書いている。

 この他に、以下の情報がある。

  • パイロットフィルムの絵コンテにはヤマトではなく大和と書かれている
  • 戦艦大和を飛ばすというアイデアは松本零士である

 いずれもどこまで正しい情報かは分からないが、一応正しいと仮定しよう。

 上記の書籍で、これに追加して以下のことが書かれていた。

  • 戦艦を飛ばすというアイデアは西崎義展と藤川桂介が相談して決めた
  • 企画書の表紙にあるイラストの宇宙船が松本零士参加前のヤマトであると書いている

 宇宙戦艦コスモという企画を作った藤川自身が企画書の表紙を【ヤマト】と書籍で言い切っているので、そこには何か意味があると考えたい。

 以上の情報を総合して考えると時系列はこんな感じだったのではないか、という仮説が立てられた。ただし、不確かな情報に依存しているので、これが正しいという主張ではない。

  1. 西崎義展と藤川桂介が、戦艦を飛ばすというアイデアを得る
  2. 藤川桂介が宇宙戦艦コスモという企画をまとめる
  3. 豊田有恒がアステロイド6という企画をまとめる
  4. 西崎義展が戦艦ヤマトというタイトルを発案する
  5. 宇宙戦艦コスモ+アステロイド6+戦艦ヤマトで最終的に企画書が成立する。この企画書のタイトルは【宇宙戦艦ヤマト】と推定する。(西崎義展案はタイトルだけなので、タイトルに使わないと使い所がない)
  6. この時点で、主役宇宙船の名前はヤマトであるが、形状由来は戦艦大和ではない
  7. 企画は弱く流れてしまう
  8. 企画の補強とリベンジが必要とされる
  9. 松本零士が参加する
  10. 松本零士、戦艦大和を宇宙に飛ばすことを主張。承認される
  11. 戦艦大和が宇宙を飛ぶ以上、【戦艦ヤマト】ではなく、【戦艦大和】がタイトルに相応しくなるが、それでは【飛ぶ】というニュアンスが伝わらない。そこで【宇宙】を前置する【宇宙戦艦大和】というタイトルが成立する 【推定】
  12. 不明の理由により、【大和】は【ヤマト】に戻る。これにより、【宇宙戦艦ヤマト】のタイトルが成立する 【推定】

 この仮説を是とすると、実は宇宙戦艦ヤマトというタイトルが決まった回数は2回になる。

 1回目の決定時の主導権は西崎義展にあったと推定される。

 2回目の決定時の主導権は松本零士にあったと推定される。ただし、西崎義展は元の名前に戻しただけと認識していた可能性があり、松本零士の関与に特別な意味を見出していなかった可能性がある。

余談 §

 上記書籍で、藤川桂介は、対立する西崎義展と松本零士の間に入って、両者をうまくまとめる形で脚本を書いていたが、徐々に西崎義展の振る舞いが目に余るようになり、ヤマトよ永遠にで抜けたと書いている。実際にはヤマトIIIの4,5話の脚本も書いているので、ヤマトIIIの序盤で抜けたのが正解ではないかという気もするが実際の執筆作業の時期が分からないと何とも言えない。(完結編に藤川桂介の名前はない)

 藤川桂介は、戦艦が空を飛ぶというアイデアを得たときからの西崎義展の盟友であるが、その後、徐々に心が離反していったものと推定される。

 藤川桂介が対立する西崎義展と松本零士の間に入ってバランスを取ろうとした者だったとすると、おそらく発言の信頼度、重要度は主要スタッフ中で最も高い。主要スタッフには、バイアスが掛かっている者、話を面白おかしく盛りすぎている者、記憶が曖昧になっている者もけっこう多いので、これは重要な特徴である。その点で藤川桂介はあまり語らないし、そもそもヤマトについて語ることも少ない。上記書籍はかなりの例外でたいへん貴重な資料である。

更に余談 §

 個人的にヤマトIIIで最も面白いと思うのは5話である。その5話が藤川桂介最後のヤマト脚本だと思うといろいろ思うところがある。

 しかし、結果的に5話はヤマトIIIの異色作になって終わってしまったので、5話の作風こそが藤川桂介のやりたかった方向性で、それが否定されることでスタッフから抜ける踏ん切りが付いたと思うと、それはそれで理解できる。

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