正統があれば異端あり。異端の宇宙世紀史へようこそ。
ブラウブロのテストパイロットとして選ばれたシャリア・ブルは、元々は木星船団所属で、勘の鋭い男という評判を取っていました。フラナガン機関のニュータイプ理論に寄れば、地球の重力から離れれば離れるほどニュータイプの発現に有利であるはずでした。ですから、木星帰りで勘の鋭い男こそ、ニュータイプそのものである可能性は高いと考えられたのです。
そこで、フラナガン機関に肩入れしていたキシリア・ザビは兄ギレン・ザビにつきまとい、ブルをくれブルをくれと、言い続けました。根負けしたギレンは、ブルをフラナガン機関に転属させることを決めましたが、ただで渡す気はありませんでした。
ギレン自身、ニュータイプ思想など信じてはいませんでし、フラナガン機関は国家の寄生虫かもしれないという疑念を抱いていました。更に、怪しげな話をつい信じ込み、肩入れしてしまう性格を持つ妹も心配でした。
そこで、ブルにはフラナガン機関の実体をその目で見て報告して欲しいと思っていました。ギレンはブルに、極めて間接的にそのことを伝えました。
ところが、ブルの受け取り方は違いました。ギレンはまともな人間がニュータイプ思想など信じるはずはないと思い込んでいましたが、実際にはそうではありませんでした。ブルは、ギレンがキシリアを恐れていると判断しました。つまり、キシリアがニュータイプという大きな力を持とうとしていることを恐れていると思ったのです。
ブルは権力闘争の道具に使われようとしていると思い込み、勝手に葛藤して、自分で自分を追いつめていきました。
しかし、ブルの心情などフラナガン機関から見れば、どうでも良いことだったのです。あくまで、フラナガン機関は、ブルをニュータイプの素質ありと評価しただけで、ニュータイプであると保証したわけではありません。期待された成果をブルが上げることは絶対にあり得ないことで、ブルが何を思い何をなそうと、結果は同じなのです。
さて、ブルをテストパイロットとしてブラウブロの試験が開始されました。しかし、ブルが機体に慣れても、大した成果は得られませんでした。オールレンジ攻撃を可能とする4基の有線操縦ビーム砲を、一人のパイロットが操作するなど、常識で考えれば無理なのは当たり前です。それに加えて、ブラウブロ本体も操縦しなければなりません。更に、有線コントロールですから、制御ワイヤーの長さの範囲内に敵を捉えねばなりません。つまり、ブラウブロ本体は敵の至近距離に接近する必要があり、敵の攻撃に対する回避運動などもこまめに行う必要がありました。普通のパイロットなら、その回避運動だけで手一杯であり、とても他のことにまで手が回るはずがありませんでした。
それでも、実直なブルは、その不可能を実現しようと努力しました。そして、まがりなりにもブラウブロを使いこなせるようになってきました。このことは、ブルが確かにある種の才能の持ち主であった証拠と言えるでしょう。
しかし、関係者は、ブルを今ひとつ能力に欠けるニュータイプと見なすようになりました。
その後、ブラウブロは、ホワイトベース隊と交戦します。
オールレンジ攻撃は、敵パイロットを驚かせました。しかし、オールレンジ攻撃時のパイロットは、ビーム砲を操るだけで精一杯であり、隙だらけであったのも事実でした。
敵パイロットが驚きから回復し、冷静さを取り戻したとき、付け入られる隙はいくらでもありました。
しかし、ブラウブロの火力、装甲、加速力はけして小さいものではありません。特に4基の有線ビーム砲を本体に固定した状態で前方に射撃すれば、シャワーのごとく濃密なビームを発射することが可能でした。これなら、わずかな回避運動ぐらいでは回避できない射撃が可能であり、このような戦法を取った場合、ブラウブロに勝機があった可能性も考えられます。
しかし、ニュータイプ思想を信じる関係者が運用する限り、そのような戦法を取ることはあり得ない話で、非人型派の軍需産業企業やキシリア・ザビがフラナガン機関にうまうまと騙された時点で、必然的に運命づけられた敗北であったと言えます。
ご注意: このコンテンツは、「バーチャルネットライター と～のZERO歳」と呼ばれるサイトに書き込まれた内容を変換して、本サイトに転送したものです。このコンテンツの内容は、「と～のZERO歳」という仮想人格が書いたものという設定であり、謎のアニメ感想家トーノ・ゼロと限りなく近いものの、必ずしも同一人格ではないことをお断りしておきます。
