昨日の十兵衛ちゃん (感想) を再エンコードしたデータを少しチェックしておこうと思って見たら、また見てしまいました。
やはり、これは凄いですね。
複雑な心理が変化し続ける絶品の会話 §
特に凄いのは、最後の鮎之介と自由の会話のシーン。
自由の感情の動きと、鮎之介の感情の動きが絶品。とてつもない演出力だと思います。
自由の鯉之介への気持ちが吹き出す「聞いてねえよ」という台詞。こんな言い方は、自由らしくありませんが、絞り出すようにそう言いたい時もあるでしょう。それが言える相手は、鯉之介だけだったのかもしれません。
そして、鯉之介に女房子供がいたということの衝撃。
この女房子供が憎い気持ちもあるでしょう。
しかし、あの鯉之介の息子が、しかもこんなに健気かつ必死に来ている事実を受け止めてあげたい気持ちもあるでしょう。
複数の感情が複雑に絡まって、一度は、鮎之介に手をのばすけれど、とうとう鮎之介とラブリー眼帯という事実を受け止めることができません。
みんなを救う優しい強さを持った自由も、今は救われるべき傷を持った存在になっているのですね。
そして、鮎之介はと言うと、一時はラブリー眼帯を渡せそうで、役目を全うできそうな状況になったにもかかわらず、急転直下、「私の前から消えて」という全否定を突きつけられてしまいます。
これはもう泣ける話であるのは当然として、そのプロセスを複雑な心理描写を含めて丁寧に描ききったことが、とても素晴らしいことだと思います。
解説キャラが能書きを垂れない戦い §
戦いのシーンも凄く良いですね。何が良いと言って、解説キャラが能書きを垂れません。そして、自分で技の名前を叫んだりもしません。突然スローになったりもしません。ただ、映像だけで、戦いを表現し尽くしています。
もちろん、能書きを垂れる戦いのドラマには、それなりの面白さはありますが、能書きで強さを説得するよりも、映像だけで強さを説得する方がより困難なチャレンジです。それに正面から取り組む作品があるというのは、とても嬉しいですね。