2005年12月30日
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この解釈を喜んで全面肯定しよう・現在の「萌え」とは「ポルノ」である!

Written By: 川俣 晶連絡先

 さる事情から、秋葉原のさる同人誌・同人ソフトショップへ行きました。

 階段を上がると、正確な表現は忘れましたが、以下のような説明が張り出されていました。

  • 2階・3次元ショップ
  • 3階・2次元ショップ

 2次元ショップとは、同人誌や同人ソフトを販売するフロアです。

 では、3次元ショップとは何かというと、アダルトDVDなどを売るフロアです。

 つまり、この店においては、映像ポルノ商品と同人商品は、2次元と3次元の違いでしかない同種の商品として扱われているということです。

 これを見て私が怒ったと思いますか?

 いえいえ。

 「おお! やはり今時の萌えはポルノだったのか!」と納得しました。

 まだまだ「萌え」が「ポルノ」でしかない現実を、美辞麗句で隠蔽する動きが多い中、このショップは赤裸々にその現実を店舗構成に反映させてしまっています。

 おそらく、やってくる客に対する誠実な対応という観点で、このような店舗構成は正しいのでしょう。

 実は、このショップを見て、私は非常に嬉しくなったのです。

 ここに私の居場所はあるし、しかもここでは喜々として(しかも恥ずかしさを交えて)、萌えについて語れます。

「萌え」の旧解釈 §

 嬉しくなる前の今時の「萌え」の私的な解釈は、以下のようなものでした。

オタクとしてのぬるさを埋め合わせるための呪文。ぬるいオタクであればあるほど、「萌え」という言葉を多用したり、強調したりする

この呪文を唱えることで、一般人が秋葉原に足を踏み入れることができる

この呪文を唱えることで、ぬるいオタクは同類を認識し、徒党を組むことで自らが濃いオタクになったかのように錯覚することができる

 しかし、この解釈はあまり良いものではありません。

 一見何かを定義しているように見えながら、「濃い」であるとか「ぬるい」であるとか、そのような曖昧な言葉に過度に依存するために、具体性がありません。

 ある種の実感を表現した言葉ではあるにせよ、これは定義たりえません。

「萌え」の新解釈 §

 大塚英志さんの本にも似たようなことが書いてあったような気がしますが。

 非常に単純化して言ってしまえば、以下の一言で要約されます。

萌えとはポルノである

 この解釈は、私が「萌え」に抱く、以下の疑問に対してすっきりとした明快な説明を付けられるという意味で秀逸です。

「萌え」を口にする者達は、どうしてあれほどクソつまらないアニメを喜んで消費し続けるのだろう?

 つまり、彼らはアニメを見ているのではなく、ポルノを見ているのだと考えればすっきりと理解できます。一般の映画とアダルトビデオでは、作り方が違うし、見せ場も違います。アダルトビデオを一般の映画の価値観で論評しても、すれ違うだけなのです。

 しかし、一般の大多数のアニメは性交シーンが存在しません。また、大ヒットアダルトゲームから性行為に関するシーンを取り除いた一般向けゲームも売れています。

 これはどういうことでしょうか?

 これは、事実上エロ同人誌しか売っていない同人誌ショップの存在によって、解釈可能です。(あるいはインターネット上のエロ画像でも良い)

 一般向けアニメであっても、そこに多数の美少女キャラクターを並べ、それに欲情した視聴者はそのキャラクターが登場するエロ同人誌を買って、欲望を満たすことができるのです。

 ここで重要なことは、このようなシナリオが一般性を持って存在するという認識が、おそらくはオタク層に浸透していることです。実際にエロ同人誌を買わないとしても、そのような結末が可能だという認識を持ってアニメを見たりゲームをやることによって、それらは実質的にポルノとしての存在感を持ち得ます。

 つまり、健全な歌舞伎を上演して、それを見た客が女優(あるいは男優)を指名して身体を買うような行為ということですね。

歴史的な認識 §

 実は「萌え」という言葉が生まれた時から、その言葉には「ポルノ」としてのニュアンスが多分に含まれていたと思います。

 しかし、他のニュアンスもあったことも事実です。

 いつの間にか、他のニュアンスが抜け落ち、ポルノとしての側面だけが強く残ったというのが私の印象です。

 では、誰が他のニュアンスを落としたのかというと、マスコミが誤った情報を流したからではなく、他ならぬオタク自身がそのような方向性に「萌え」を推し進めていたのだと思います。

 実際、コミケではあれほど多くの「エロ」ではない同人誌が売られているにも関わらず、同人誌ショップはほとんど「エロ同人誌」しか扱いません。それは、事実上エロ同人誌しか商業レベルでは売れないということであり、売れないということは買う側(=オタク)の多数派がそれしか求めていないということを意味します。

 つまり「萌え=ポルノ」というのは、オタクという集団が自らが生み出した状況であって、多数派から支持されていると考えます。

なぜポルノであることが隠蔽される必要があるのか? §

 それにも関わらず、萌えがポルノである事実 (少なくとも「萌え」の一部は生まれたときからポルノであるという事実) は、理屈を付けて隠蔽されようとします。このような試みがあちこちで、様々な人によって行われるのは、やはり自分が使っていた言葉が「ポルノ」の同義語であるということになると、とても恥ずかしいからでしょう。萌えがポルノであることを隠蔽しようとする試みが繰り返されるのは、非常に当然の成り行きです。

なぜ私はポルノであることを歓迎するのか? §

 しかし、これは重要なことです。

 なぜ、私が「萌えがポルノである」という認識を喜んで受け入れるのかと言えば、「それが社会的に恥ずかしいこと」だからです。

 え? 意味が分からない?

 恥ずかしいことの方が、快感は大きいということです。

 誰にも認められ、堂々と行う行為から得られる快楽など、たかがしれています。

 「日本の誇る文化」としての同人誌を売る店に行っても、何も興奮することはありません。

 しかし、アダルトDVDの同類が売られる恥ずかしい店に行くとなれば別です。それは、ある種のスリリングな冒険になるのです。(念のために言えば、ごくたまにアダルトDVDを売っている店に行きます。実はアダルトDVDを買うならアニメではなく実写だと思っていたりするし。まあ滅多に買わないけど)

 更に言えば、萌えを口にするオタク達とも上手く共存できます。要するに、同じポルノに興味を持った仲間であり、そのような切り口でコミュニケーションしようと思えば、それは楽々と達成可能なのです。

おまけ・メイド喫茶はなぜ一般受けするのか §

 秋葉原では、「おかえりなさいご主人様」とメイドが来店者に挨拶するメイド喫茶が流行っているそうです。

 これは全く理解できないことでした。なぜなら、メイドとはそういうものではないし、昔からある本来のメイド趣味と合致しないからです。

 この現象は、「萌え=ポルノ」という視点で解釈するとすっきり理解できることに気づきました。

 自宅ではない場所に行って「おかえりなさい」と挨拶されるということは、それは別宅の暗喩であり、そこで待っている女性は「愛人」の暗喩と考えることができるでしょう。

 一般的に愛人は、好ましくないものとされ、おおっぴらに愛人が欲しいなどとは言えません。

 そこで、愛人願望にメイド服を着せて偽装したものが今時のメイドブームであると解釈すると、なぜそれに一般人が群がるかという理由が納得できます。メイドとはどのような存在であるか大多数の日本人は良く分かっていないはずですが、「愛人」なら分かるからです。そして、「愛人」を「メイド」と呼び換えることで、それが恥ずかしい趣味ではないかのような印象を持つことができます。メイド服は、「これは愛人ではない」と偽装するためのアリバイです。

 もちろん、実際に愛人としてのサービスを受けるわけではありません。しかし、愛人気分、愛人ごっこのようなムードは味わえるでしょう。しかも、コーヒー1杯分の格安価格で (笑。

 このようなメイド趣味は、伝統的なメイド趣味と異なっているのはもちろん、エロゲーの初期に見られるマニア向けのメイドをテーマにしたゲーム等の世界とも違うのではないかと予想します。

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