魔法先生ネギま! 16
紀伊國屋書店

2007年01月10日
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魔法先生ネギま! 16 赤松健 講談社 感想の続き・あるいは蛇足……

Written By: 川俣 晶連絡先

 魔法先生ネギま! 16巻の感想(魔法先生ネギま! 16 赤松健 講談社)では、「今回もまっとうに感想を書くことを断念しました」「あまりに中身が濃すぎて、とても書き切れません」と書きましたが、いくつか感想のためのメモが残っていたので、それを書いておきます。

 なぜ今頃なのかというと、年が明けて様々なメモを整理していたら出てきたからです。

 もう1つ、「ネギま!?」の出現により、「ネギま!」に関する注意力が一時お休みしていた……というのもありますね。

夕映のアーティファクト §

 初歩的な魔法教本かと思われた夕映のアーティファクト。

 しかし、その実体は自動更新される魔法百科事典。

 これはとても面白い展開であり、アイデアです。

 あまりにも知識と経験の足りない第1次ネギ・パーティーが、知力戦による大逆転を可能にする切り札になるからです。

 更に言えば、「本が好き」という嗜好が「強さ」に転化する、あるいは仲間に対する貢献になりうるという意味でも、なかなか例のない嬉しい特殊能力です。

 その上、自動更新されるという「弱点」まで用意され、緊迫感も十分。

 これ1つで、もう凡庸な他の作品のコミックス1冊分を超えるインパクトがありました。

燃える展開 §

 そして何より素晴らしいのは、親友とネギを競い合う三角関係を乗り越えた夕映が、このアーティファクトを完全に使いこなし、より経験豊富な仲間達でも切り抜けられないピンチに勝利したことでしょう。しかも、自分が傷つきながらも慎重に事実を確かめた上で、決定的な証拠を突きつけます。

 単に殴り合うのとは違う、推理ドラマにも似た爽快な勝利であり、これは燃えますね。

ここまで来て更に緊張感ある展開へ §

 ネギを救出した彼らには、逆転の可能性が与えられます。

 地下の奥深くに進み、ドラゴンに追いかけられ、残された時間跳躍のための魔力を追います。時間との競争という側面も緊張感があってドキドキするし、しかも逃げるのではなく最深部に進むことで逆転するというベクトルの逆行も面白い!

「一人」 §

 足止めのために戦っていた桜咲刹那と長瀬楓の二人。

 しかし、実は長瀬楓は途中から偽物(式神?)。仮契約していない長瀬楓を先行させ、一人二役で残った桜咲刹那はアーティファクトによる瞬間移動で撤退。

 これは、まさに「技を駆使した超人バトル」と見せかけた知力戦です。

 相手を倒すことだけが勝利ではなく、時間を稼いで自分も無事に脱出するのも別種の勝利です。それは、より高度で知的な勝利といえます。

 そういう戦いを見られただけでも、もう最高ですね。これだけでコミックス1冊分の満足感があります。

いしのなかにいる §

 PC-9801版のWizardry (Proving Grounds of the Mad Overlord)が発売されたとき、Apple-II無くてもWiz遊べるのか!と喜んで買い込んだ後、あまりにシビアな内容に焦りまくりました。

 そして、長い長い時間を費やし、手塩に掛けて育てた育てたLv13パーティーが地下10階のTeleporterの罠に引っかかって石の中に飛ばされて消えてしまったときの衝撃……。

 それを思い出しました。

寝ているネギ、活躍するみんな §

 主人公であるはずのネギが寝込み、その代わりに仲間達が活躍する展開は燃えますね。

 圧倒的な存在感のあるネギ抜きで、個性豊かなキャラが動くのも良いし。

 読者の僕らは、ネギというよりは周辺のみんなに感情移入するのだと思うなら、僕らの活躍を描いた展開ということもできます。つまり、僕らも活躍できるのだという感覚ですね。

迷うことを肯定する §

 迷うネギに対して、迷う余地はないと諭しつつ、同時に迷うことは正しいと肯定する千雨や夕映。

 明らかに矛盾したことを言っていますが、逆に言えば絶対的な正解の不在を言い当てた至言です。正解のない世界をよりよく生きるためには迷う余地はなく、そして迷うことは良いことなのです。

イベントコスのファッションセンスがいい §

 どちらかといえば、1980年代っぽいスマートな感じを受けます。

 たとえば、女の子の股間部分のラインがハイレグっぽかったりするのは、自信のあるスマート感ですね。

 こういうのは好きです。

千雨と夕映 §

 従来、ネギの身近にいて、親身になってネギのことを考えるのは明日菜の役目でした。

 しかし、明日菜ではネギの本音までは踏み込めません。

 踏み込めたのは、千雨です。

 そして、仮契約した夕映も、その領域に来たと言えます。

 なぜかといえば、ネギ、千雨、夕映の3人は、いずれも大きな心の傷を抱えた存在だからです。他人が容易に踏み込めない理解と共感がそこにあるのでしょう。

 それと同時に、ネギに第1次ネギ・パーティー最強の参謀が付いたとも言えます。知性派の千雨、夕映がネギをアシストします。

 しかし、この二人は知性派とは言っても、傾向が全く異なります。言ってみれば、夕映は「論理」を司り、千雨は「情」を司ると言ったら良いでしょうか。

 千雨は理屈抜きの感情でネギの心の中に踏み込んできますが、夕映はあくまで理屈によってネギの心を支えようとします。

 論理と情の二人の知性派に支えられた主人公というのは、なかなか見つからない革新的なものかもしれません。そして、それはとても素晴らしいものです。

ヒーローユニットの格好良さ。ゲームとしての演出のカモフラージュが噛み合う §

 いやもう、格好良いのです。

 しかも、カモフラージュと完全にマッチしています。

 ビジュアル、ストーリーの全てが絡み合ったこういう凝った構成で酔わせてくれるのは嬉しいですね。

ネギを起こさない千雨 §

 予定外の敵の出現にネギを起こそうとするみんな。

 そこで、ギリギリまで寝かせておけと言う千雨。

 千雨の、敗北への恐れに負けることなく、最善の道を踏み外さない精神力が素晴らしいですね。たいていの人は、この恐れに負けてしまうのです。

 これはもう、本当に味方に欲しい「知将」です。

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