既刊全巻読み直しが13巻まで進みましたが、ここで驚いたのはさりげなく小さな数コマで、四葉五月が美空とココネを地下深部から助け出したことが描かれている点です。ここで、四葉は食事を運ぶと推定される台車を押しています。
これは、12巻106時間目で超が拘束されたタカミチに対して「食事を届けさせる」と言う台詞に対応したものでしょう。
また、その直後、タカミチは意味ありげに口を動かして「モゴッ」と言わせています。
この状況から以下のことが推定できます。
- タカミチは口の中に拘束から脱出する道具か何かを持っていた
- 四葉は食事をタカミチに届けに来た
- 四葉は逃亡するタカミチを止めなかった
- それどころか、一緒に美空とココネを助けに行った可能性すらあり得る
- 四葉は美空とココネを明日菜達のところに届けるまでが自分の役目だと認識していた可能性がある
この四葉の行動は、超一味の重要人物としてはあまりに一味の利益に反します。
それにも関わらず、超からは敵としては認識されていません。
実は、その矛盾の理由についての推理を続けると、移動屋台電車に大砲らしきものが付いている理由が解釈可能であることに気付きました。
四葉の立場とは何か §
四葉はエヴァンジェリンが評価する唯一のクラスメートです。
精神的に成熟した大人であるようです。
とすれば、超の陰謀に真面目に荷担するとは到底思えません。
それにも関わらず超一味の重要人物として参加している理由は、「大人の視点から超達を見守る」ためでしょう。つまり、協力者ではなく、保護者的な立場です。
それと同時に、精神的に成熟した四葉は、超が説得で止まることができないことも理解していたでしょう。
だから、四葉が取った行動は以下ようなものだったと推測できます。
- 超には好きなようにさせる
- しかし、何か致命的な問題が起こりそうなら介入して、安全に被害者を出さずに超の思いを貫徹させる
タカミチの逃亡を止めない、美空とココネを助ける、落下する超とネギを移動電車屋台を飛行させて受け止める、といった行動は、このような行動原理があるとすれば全て説明できます。
移動電車屋台が封印された大砲を持つ理由 §
四葉の精神が大人であれば、最悪の状況に介入するためには、それ相応の力が必要だと理解していたはずです。それは、言い訳を聞かない子供にプレッシャーを掛けて暴走を止める手段としての力です。だから、使うための力ではありません。むしろ、積極的に使用することが封印された力でなければなりません。そのように考えると、「封印された大砲」は四葉が持たねばならない「力」そのものを示していると言えます。
そこから逆に言えば、実は大砲は四葉が望んだものであり、それを実現することを超は拒めなかったとも考えられます。
そして、結局学園祭編の最後までこの大砲が使われなかった理由も明らかです。それは、四葉が持つ最終的な介入可能能力の担保であり、担保とは使われないことが前提であるからです。しかし、移動屋台電車そのものは、ラストシーンで介入するために使用されています。
感想 §
一気読みで浮かび上がってくる新しい印象がありますね。
特定の巻だけ繰り返し読んでいても見えてこない印象です。