2008年07月23日
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マイクロソフトが開発したDOS 4.0は、マイクロソフトだけあってバグだらけ!!

Written By: 川俣 晶連絡先

 フォトレポート:時代を振り返る--「MS-DOS 4」のインストールには以下のような文章が見られます。

 1988年6月、Microsoftは「MS-DOS 4.0」をリリースしたが、バグだらけで、多くのアプリケーションとの互換性の問題に見舞われたことから、前途多難なスタートを切った。

 これを見て以下のように思った人も、おそらく多いと思います。

技術力もないくせに思い上がったマイクロソフトらしいバカな話だぜ。IBMやOracleのような、本物の企業を見習えよ。IBMがオープンソース界に提供したApacheの素晴らしさを見れば、その差は歴然!

 ところが、この解釈は正しくなかったりするのだな、これが。

実際はIBM主導だったDOS 4.0 §

 WikiPediaのMS-DOSより

IBM主導で開発されたバージョン。

 つまり、品質の低いOSを作り出したのは、マイクロソフトではなく、実質的にIBMだったというわけです。そして、その出来の悪さにマイクロソフトがぶち切れて作り直したものがDOS 5.0となります。DOS 5.0は大成功し、DOS時代末期はこれを使っていたユーザーも多いと思います。

なぜIBMは品質の低いOSを作ってしまったのか? §

 背景には様々な事情があるでしょう。

 しかし、理由を納得するには、以下のような一般論を述べるだけで十分でしょう。

ある程度以上規模の大きな組織には、あらゆるタイプの人間が属していて、全てが適材適所に割り当てられているとは限らない

 つまり、IBMやマイクロソフトのような規模の大きな企業には、賢い人間もそうではない人間も必ずいる、ということです。そして、個々の仕事に適した人材が常に割り当てられているわけでもありません。

 従って、開発される多数のソフトの中に、とんでもないソフトが入ってしまうことは避けられません。そのようなソフトの多くは、世に送り出される前に組織内のチェックで弾かれるでしょう。しかし、企業の戦略上どうしても必要なものであれば、後から必死に品質向上を図る前提でリリースせざるを得ないことも珍しくありません。

 つまり、そのようなソフトは「バカな組織」だから生まれるのではなく、ある程度の規模のある組織であれば、どの組織からでも生まれ得るものだ、ということです。

なぜDOS 4.0はリリースせざるを得なかったのか §

 DOS 4.0が必要とされる必然性は上記の記事からは良く分かりません。というよりも、不適切な記述によって必然性から遠ざけられているとも言えます。

 以下がそれに該当する箇所です。

MS-DOS 4のインストールのもう1つのおもしろさは、Selectプログラムの「Welcome」画面が、OSを固定ディスク、フロッピーディスクのどちらにインストールしたいか尋ね、インストールに必要な空のフロッピーディスクの枚数が表示されることだ。ハードディスクは高価だったため、当時のコンピュータの多くはフロッピーディスクドライブしか搭載していなかった。

 1988年当時、日本ではまだハードディスクを持たないパソコンは珍しくありませでしたが、アメリカではハードディスクの普及は急速に進んでいました。当時のコンピュータの多くはフロッピーディスクドライブしか搭載していなかった、訳ではないのです。(ただし、サーバ上のハードディスクを使う前提のハードディスクレスのマシンはあったと思われる)。そこで問題になったのは、大容量化するハードディスクに、DOSが対応し切れていなかったことです。つまり、目の前に既に大容量ハードディスクが物理的に存在しているにも関わらず、それを活用するための適切なOSを欠いていたのです。だから、それを扱うためのDOS 4.0はどうしても必要とされていたわけです。

日本でリリースされたDOS 4.0 §

 マイクロソフトは日本語版のDOS 4.0を作成しましたが、これはEPSONだけが販売しました。

 IBMは日本でも日本語版のDOS 4.0を販売していました。特に、いわゆるDOS/Vの最初のバージョンが「IBM DOS J4.05/V」として発売されたことは特筆すべきでしょう。

余談 §

 ただでさえメモリ消費量が多いDOS/Vが、やはりメモリ消費量の多いDOS 4.0上の構築され、それがFEP等メモリ消費量の多い日本語環境に提供されたわけですから、かなり無理のある選択だったことは間違いないでしょう。それにも関わらずDOS/Vブームが起こってパソコン業界の勢力地図を塗り替えてしまったのは、マイクロソフト主導で開発されたコンパクトなDOS 5.0があればこそ、でしょう。たぶん、DOS/Vブームを担った人々の大多数は、DOS 5.0以降にDOS/Vブームに参入したのだと思います。仮に、DOS 4.0時代に触ったことがあるとしても、それほど本格的には使っていないでしょう。

 その点で、IBMが自らの手柄として誇ることの多いDOS/Vブームも、実際にはマイクロソフトの力を借りていることになり、ここにも皮肉な構造を見ることができます。

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