2010年06月22日
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萌えアニメはすたれたんじゃない。劇場にシフトしたんだ

Written By: 川俣 晶連絡先

 誰が言い出したのか、まことしやかに流布される謎の解釈。

 今回のIT都市伝説はこれだ!

萌えアニメはすたれたんじゃない。劇場にシフトしたんだ §

 深夜アニメの放送本数が最盛期に比べて激減しています。特に、萌えアニメの放送本数は激減状態です。しかし、これは萌えアニメが廃れたことを意味しません。テレビで放送すると録画がネットで出回り、DVDが売れないことを嫌って、みんな劇場にシフトしたからです。映画館に行けば、今でもたくさんの萌えアニメが見られます。

というのは実は正しいわけではなく…… §

 実は、昨年末から系列の違う複数の劇場を含め、ほぼ週に1本程度のペースで映画館に通っていますが(府中が多いがそれだけというわけでもない)、以下のような状況です。

  • シネコン形式の劇場では見る映画以外にも上映している映画のタイトルが目に入るが、1回も萌えアニメが上映されているところに遭遇したことがない
  • 予告編も見たことがない
  • ポスターすら見たことがない
  • 売店で萌えグッズが売られているところを見たこともない

 アニメの存在感が映画館にない、というわけではなく、ヤマト、ポケモン、クレヨンしんちゃん、名探偵コナン、NARUTO、ケロロ軍曹、ガンダム、みなしごハッチなどの存在感は確かにあります。しかし、萌えアニメの存在感は全く感じられません。

 このギャップの謎がおおむね解けてきました。

実際はこうだ §

 ここではDVDやBDを一括してパッケージと呼ぶことにします。

 また、登場人物の大多数が少女であるアニメを「萌えアニメ」と呼ぶことにします。

 さて、萌えアニメ最盛期のビジネス構造は以下のようになります。

  • テレビで放送して話題を盛り上げる
  • パッケージを販売して元を取る

 しかし、この構造はネットの普及で崩壊しました。テレビで放送したアニメはネットで交換されてしまい、自分で安価にDVD等を作成されてしまいました。パッケージは売れなくなり、投資が回収できません。ちなみに、テレビで放送すればスポンサー料が入るじゃないか、という指摘はこの場合は誤りです。パッケージの宣伝がCMとして入るアニメは、結局パッケージが売れなければ赤字なのです。

 従って、資金が回収できないので、話題作りの手段としてのテレビは放棄されます。

 ここで代わりに採用されるビジネス構造は以下の通りです。

  • 映画館で上映して話題を盛り上げる
  • パッケージを販売して元を取る

 さて、ここからがトリックの本質です。

 映画館で上映して……といっても簡単ではありません。というのは、もともと萌えアニメの顧客層は少ないので、普通に公開しても映画館側の収益が見込めません。だから、上映してくれる映画館も、まず出てこないでしょう。また、映画上映だけで製作コストをペイすることも困難です。

 そこで、発想が転換されます。

 映画館での上映は話題作りに力点が置かれます。従って、コアなマニアが見に来て話題にしてくれれば十分であり、大多数の追従者はパッケージを買ってくれることが期待されます。この場合、上映する映画館は、けして多い必要がありません。あくまで、コアなリーダー的なマニアを満たすだけの少数で十分です。その代わり、全国的に展開されねばなりません。

 その結果として、萌えに理解のある少数の劇場でのみ特別に上映されるという形態が発生します。もちろん、近隣地域で「そこでしか上映していない」となれば、少数のマニアも全て1つの劇場に集中するので、劇場側の収益性も確保されます。また、「上映している劇場が少ない=混み合ってしまう=人気が高い」という錯覚も誘発しやすいといえます。

 従って、このモデルは旧来のモデルに代わって機能し始めますが、映画館での上映はいわば「マニアに向けた話題作り」であり、ぶらっと映画館に来る一般映画ファンに見て貰おうという意図を持っていません。従って、特に「萌えアニメを見よう」と思っていない人間に向けての宣伝はほとんどありません。従って、映画館にいくら通っても、目に入りません。

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