艦載機問題の続きです。
実は、ヤマト復活編のパンフにはとんでもない爆弾があります。
コスモゼロを21型と表記しているのです。
初代ヤマトのロマンアルバムに掲載された設定資料には52型と明記されています。
しかし、ここでは21型です。
零戦の名称問題はそもそも §
初代ヤマトのロマンアルバム(実は発売されたときに買って持っているのだ)では、零式艦上戦闘機と書いてあって、必ずしも宇宙零戦ではない点はさておき。
問題は、52型です。
単純に番号順なら52番目。旧海軍式なら機体が5番目、エンジンが2番目になります。つまり、2200年に制式採用される予定の機体を前倒しして少数搭載し、古代にのみ与えた……という解釈は成り立ちにくいのです。まだ制式採用されていない以上、11型となる予定である、という解釈が妥当で、到底52にはなり得ません。
ならば、単純に零戦の最も有名な型が52型であるという過去の経緯を継承しただけで、これは改良型でも何でもない、と解釈した方が良いことになります。
しかし、21型も存在するとなると、話がややこしくなります。
52型を番号ではなく名称と見なせなくなります。
そもそも「型」って何だ? §
零戦の場合、52型が最も有名でしょうが、太平洋戦争初期に活躍した21型も有名です。21型は勝利の機体だとすれば、52型は後継機の開発遅れで劣勢を強いられた悲劇の機体という感じでしょうか。
もっとも、F4Fが好きな立場からすればその差はどうでもいい話で、いずれにしてもF4Fのカモです。サッチ・ウィーブで文明人らしく「猛獣狩り」をすれば、落とせるのが零戦です。
その理由は、どちらかといえば機体ではなく搭乗員にあるようです。一時期の誤った戦闘機無用論の結果として、戦闘機の搭乗員は不足傾向だったらしいことが坂井三郎さんの本には書いてあります。あとで速成乱造しても間に合いません。
ちなみに、22型こそ本当は美しい等の諸説もありますが、まあそれはそれとして。
そして影のもう1人の主役に気づく §
そのように考えてみると、実は「戦記ブーム」の立役者が「大和」と「零戦」であることに気づきます。一応は、最強の戦艦と無敵の戦闘機です (実際はともかく、日本人の多くの心の中では)。この時期を経験している人なら誰でも名前ぐらいは知っているでしょう。
とすれば、「宇宙戦艦ヤマト」はこのブームの遅れてきた後継者であることも、また事実でしょう。とすれば、大和とワンセットで「零戦」も復活すべきなのです。ですから、「宇宙零戦」というわけです。
そのように考えると、一品ものの大和が復活するイメージは1つになるとして、「零戦」の復活は多様であることが分かります。
1つは、映画1000年女王のように、歴史博物館から昔の零戦を飛び立たせる方法ですが、これは「宇宙戦艦」に搭載するには無理がありすぎます。改造しても無理でしょう。ジェット時代に入っている当時、零戦でジェット機に勝つという発想すら無理があります。まして、相手はガミラスです。必然的に、新規デザインの宇宙戦闘機になりますが、それが零戦であるという「継承性」が求められます。
従って、それはデザインではなく名称に求めねばなりません。
ですから、「零」であり、「52」である必要があったのでしょう。
しかし、零までは良いとして、「21」の方が良いという異論はあり得ます。
その異論が出てきたのが、この復活編の映画のパンフかもしれません。
従って、ブラックタイガーに番号はありません。コスモタイガーになって、コスモパルサーになっても、「零」に相当する番号はありません。
つまり、「ヤマト」と「宇宙零戦」こそが別格の主役である必要があった根拠は「大和」と「零戦」にあるわけです。
宇宙零戦はパワー型か軽快型か §
他機種との比較して、宇宙零戦がパワー型であれば21より52の方が相応しいと言えます。エンジンをパワーアップして翼端を切り詰めてよりスピードが出るからです。
しかし、軽快型とすれば21の方が相応しいと言えます。
そこで問題となるのが「ひおあきら」版です。ここで、ブラックタイガーを重戦隊としています。これは、冥王星でブラックタイガーが次々と「沖田艦も沈められなかったガミラス艦」を易々と沈めている描写の整合性からいえば、妥当なところでしょう。
つまり、以下のように分類されます。
- 宇宙零戦 制空戦闘機。軽快型。敵機を駆逐することが主な目的
- ブラックタイガー 重戦闘機。パワー型。しかし、実体は攻撃機に近い。敵艦も沈められる高い攻撃力があるが、空戦は不得手
つまり、ここで宇宙零戦の設定を52とすると矛盾します。
そのため、両者の差は実質的にほとんど無くなってしまいます。あるいは、無くさなければ矛盾は解消できないとも言えます。
(そして、機種の差は機能より属人的なものになり、古代がコスモゼロという設定に収斂していくのだ)
つまり、宇宙零戦でガミラス艦は簡単に仕留められ、ブラックタイガーで空戦技術を見せつけられるわけです。
しかし、21とするとこの矛盾は起きにくくなります。
とはいえ、既に描かれてしまった過去の映像とは矛盾します。
というわけで §
昔から一定しないヤマトに対する解釈ですが、それでも何とか1つにしようという試みがあることは分かります。しかし、ヤマトはそうであっても、「宇宙零戦」はまだまだ新しいポリシーが出てきて混乱が増えているのかも知れません。主役ではないため見落とされがちですが、影の主役としてひとこと言いたい人は多いのでしょう。
つまり、「ヤマトはまだまだ生きている」と言って良いと思います。