山本のミーハーな話を書いていて突然気づきました。この話題は分けて書きます。
ヤマトと死と前半と後半 §
本来の企画では山ほどの死者が出るヤマトです。仮にこの企画に忠実なのは前半であり、後半は時間の都合で反乱も死もほとんど無い形に置き換えられたとすると、「さらば」とは「殺す時間がなかった恨み」が過剰な死として表出したものであり、本来のあるべき正しいヤマトの姿。一方で、「2」とは「反乱も死もない」実際のフィルムの順当な続編なのかも。つまり、「前半」の続編が「さらば」であるとすれば、「後半」の続編が「2」なのかも。
とすれば、土方を助けた後の藤堂長官との通信があって始めて勝手な出航のお墨付きをもらった「さらば」に対して、待ちかまえるアンドロメダを相手に根性を見せただけで土方から暗黙のお墨付きをもらってしまう「2」の反乱早期収拾の流れも良く分かります。
という解釈を続けると §
実はヤマトIIIの最後で土門が死んでしまう展開は無意味な死だと思っていましたが、過剰な死こそがヤマトの本来の企画の本質だとすれば、最上の死に場所を得た土門こそが最も大切された「主役」です。
ついでに完結編の沖田もね。せっかく生き返ったのに死んでしまっては何もならないと思いますが、もし死こそがヤマトの本質なら、「地球を守るために死をやり直す」ことは極上の特権待遇でしょう。
実は、やはり死者を山ほど積み重ねる復活編もやはりヤマトなのでしょう。何しろ、数億人がいきなり冒頭で死んでいるわけですから。
とすれば、新たなる旅立ちで「自分ごと撃て」と死を望むデスラーも死んでしまうスターシアも同じ。せっかく生き延びた古代守とサーシアが「永遠に」であっさり死ぬことも同じです。
ああっ。そうなのか! §
それは、「西崎がさらばで殺すことが金儲けだと味を占めてみんな殺す」というようなスケールの小さな話ではありません。石津嵐版でもみんな死ぬのは同じです。これは明らかに、テレビ第1シリーズが終わる前に書き上がっています。(後編だけTVシリーズ中に友達から借りて読んでぶっ飛んだ記憶があるのだ。前後編を通して1冊にしたソノラマ文庫版ではない)。これはヤマトがブームになる前の話です。「死」と金儲けは直結しません。
従って、高垣眸さんの「熱血小説」で、特攻隊の精神にあやかって若者達をヤマトに乗せて出撃するという話も、本来あったはずのヤマトの姿を見通して書かれたと思うべきでしょう。つまり、特攻隊とは「死」の象徴であり、それを通してヤマトを解釈することはあながち間違いではないはずです。
(特攻隊という言葉に辟易して読むのをやめるべきではなかったかも。ちなみに、実は「熱血小説」も持っているのだ)
松本零士版も §
死を本質とする作品に「死なせたくない松本零士さん」が関わって気分がいいわけがない、と思って気づきました。松本零士のコミック版のヤマトの最後の方は通信カプセルによるストーリーダイジェストです。ダイジェストになるのはページ数の関係でしょうが、通信カプセルという手法は個別の人間の生死を描かないで済ませる方法と見なすこともできます。
と思ってあらためてみると、いきなり通信カプセルを開く地球側で「食料局長官」が自殺していますよ。その前は、死体を連想させる骨とネズミの山です。
やはりヤマトは誰が描いても「死」の匂いがつきまとう作品なのかも。
そもそも §
ヤマトはもともと戦艦大和という「死んだフネ」だったとすれば、ヤマトを飛ばした時点で「死」は不可避なのかも。
もっと言えば、「死」を描く方法論の中に、関係のない「正義」や「大義」などが混ざって方向を見失って沈んでいったのがヤマトという作品なのかも。
追記 §
まず、熱血小説を持っている証拠写真です。
![熱血小説](resize/20100104113135/300/100104-134117.jpg)
さて、1つ訂正があります。特攻隊賛美の記述はヤマト乗組員ではなく、地球防衛軍の募集の箇所にありました。
日本の自衛軍ももちろんこれに参加したことはいうまでもなく、海国日本の主力は海空軍であり、これを統率するのが名提督ど呼ばれた沖田十三司令長官であった。
彼はかねてから一つの見識を持っていた。それは約二世紀半の昔、歴史に残る第二次世界大戦において、日本の敗色濃厚だった時にあたって、愛国心に燃える若い青年達が、祖国の困難に殉ずるべく、一身を捧げ特攻隊として戦場に散華した。この特攻精神こそは、純情な青少年によってのみ、顕現された祖国への愛情の精華だったのだ。
沖田長官は日本海空軍を率いて地球防衛軍に参加するにあたって、その主力を若い情熱に燃える青少年を主兵力どして選ぶことにした。そして、"宇宙戦士訓練育成学校"を創設して生徒募集をするや、多数の俊秀な青少年達の応募を見たのである。
ただし、裏から読むと「逃げない無知な若者を騙してきれい事で戦わせた」と読めなくもありません。