ヤマトこそ、飛ぶ船の伝統の継承者の末裔である。
他の継承者が空飛ぶゆうれい船である。
ワンピースもまた、船が空を飛ぶ展開が多くあるという意味で、同じ伝統のより新しい継承者でしょう。
と考えたとき、これだけが伝統の継承者ではないだろう、と思うわけです。
あるとき、はたと思いました。
そして、あるとき気付きました。
未来少年コナンのバラクーダ号は、空を飛んでいる訳ではないが山の上に上がっています。変種バリエーションと言えます。
ゴリアテやタイガーモスは飛行船であり、これも一種の飛ぶ船です。
ハウルの動く城でも、敵の兵器は「飛行船」であり、やはり類似します。
紅の豚では飛行機の大半は飛行艇であり、フネと呼ばれます。
一方で、水上の船を描くことへの意欲もけっこうあります。ホームズの英国海軍や、ハウルの動く城で沈められる軍艦などです。ここで、敵だから好きじゃないというのは適切ではないでしょう。それにしては熱意がこもりすぎです。それに破壊も映画の見せ場のうちです。
というわけで、意外とヤマト完結編以後の飛ぶ船の伝統は宮崎駿が意図せずして受け継ぎ、更にワンピースへと受け継がれていくのかも。しかし、もちろん伝統の継承は誰がどう表現しても良いので、やはりヤマトだという意味で復活してもいいわけですね。
オマケ §
書き上がってから気付きましたが。
「命から命に受け継がれる大宇宙の息吹は永遠に終わることがない」「受け継がれる意志」と、ヤマトもワンピースも「受け継がれる」ということを意欲的に語る作品であるという意味でも共通項がありますね。
その他 §
そもそも、ポニョの「船が集まって海面が盛り上がっている」描写も飛ぶ船の亜種派生形という解釈すらあり得るかも?
あるいは海底から船底を見上げる表現も、船が飛んでいるように見えるという意味では亜種派生形なのかも?
なに、伸び縮みしてサイズが決まらないヤマトと、ゴム人間のルフィも共通項があるんって?
ちなみに、ヤマト、宮崎アニメ、ワンピースの共通点として、分かりやすいので語るのは簡単で「子供っぽい」と馬鹿にされるものの、実は凄く奥深いところがある点ですね。実際、ワンピースのファンサイトでコミックの月齢を数えて経過日数を推定しているのを見たときは、本当に凄いと思いましたよ。
そこではたと思った §
よく考えてみれば、未来少年コナンでコナンとジムシーがドンゴロスをやりこめた直後、ぼこぼこに殴られた姿で洗濯していることと、偉そうに古代に注意しておきながらいざとなるとおろおろして機関長からどやされる天馬兄弟は本質的に同じ描写なのかも。そうやって、自分を過大評価する子供は大切なことを学んで大人になっていくわけですね。
オマケ §
「こういう話は当事者には不本意かも知れない」
「あからさまに商売上のライバルとワンセットにされるわけだしね」
「でも、考えてもごらんよ」
「何を?」
「宮崎駿も松本零士も飛行機が好きであることに変わりはないが、その意味はかなり違っている」
「そうだね。日本というものに対する認識もかなり違うし」
「それよりも問題は、飛ぶ船に対する認識の差だ」
「というと?」
「ヤマトのデザインは、基本的に船という原型に翼を付けて、噴射口を後ろに付けた姿であり、船+飛行機+ロケットだ」
「そうだね」
「しかし、宮崎駿がしばしば描く飛行船は、あくまで飛行船なのだ」
「船が空を飛ぶために翼も噴射口も必要ない、という思想性がくっきり出てくる」
「魔女が空を飛ぶために箒も必要ではないしね」
「デッキブラシで十分だ」
「つまりだね。仮に歴史が違って、松本零士ではなく宮崎駿がヤマトをやったとしよう」
「一瞬で喧嘩して飛び出しそうだ」
「あくまで仮定として奇跡的に飛び出さなかったとしよう」
「奇跡的ねえ」
「その場合、実は、大気圏内でも翼を出さないヤマトが見られたのではないだろうか」
「えっ?」
「だってそうだろ。飛行船はリアルな現実であり、飛行船に主翼は必要ないんだ」
「いや、ちょっと待て。松本先生もエメラルダス号は飛行船がモチーフだ」
「しかし、意味合いが少し違っている。あれは蒸気機関車が空を飛ぶようなアンティークシリーズの一環で、飛行船が繰り返しモチーフとして出てくる宮崎駿とはこだわり方が違う」
「しかし、どうもしっくり来ないなあ」
「理屈の上ではね。でもさ、ヤマト第1シリーズはヤマトのことを宇宙船なのにフネと呼んでいるし、紅の豚も飛行艇なのにフネと呼んでいるぞ。実は似たようなラインを狙っているのかも知れない」
「見た目はかなり違うけどね」
「でも、根底となる部分が似通っているのかも知れない」
「でもやはり一瞬で喧嘩別れすると思うな」
「喧嘩したら海に飛び込んじゃえばいいのさ」
「始めて泳いだ海の中は気持ちがいいのかもね。ポニョ、宗介、好き!」
「お腹のあんこは重そうだけどな」
「でも海は広いぜ。心も弾んじゃう」
「いや、それはいいから。真面目に読んでる人が何と思うか」
「でもさ。ナウシカで独ソ戦っぽいことをしているのは、むしろ例外的であって、やはり宮崎駿こそ南海冒険系だと思うな。何しろ、ハウルのソフィーだってマルクル連れて買い物に行くといきなり海辺で軍艦が沈むし」
「ポニョも明確に海洋系冒険だよね」
「そうそう。陸まで海になる」
「宗介が持っている玩具もフネだし」
「それを言ったら千尋だって、一夜明けたら周囲が海のようだし」
「水とフネとの縁が強そうだ」
「やはり奇跡的に喧嘩をしなかったら、宮崎ヤマトも現実的にあり得そうだね」
「どんな内容だろう?」
「森雪が厨房で料理していると、何か手伝うことあるかい? って古代が来るんだよ」
「で、どうなるの?」
「よく見ると既に島がジャガイモの皮むきしてる」
「それで?」
「兄さんは帰ってきたんだ。あの七色星団の向こうにイスカンダルがあるんだ!」
「ダイヤモンド大陸は今夜中に海に沈みます」
「イスカンダルの科学がもたらした予測なのですね?」
「いえ。破滅の言葉をうっかり言ってしまったので。てへっ」
「イスカンダル人は既に死んでいたというオチが待っているわけですね」
「園丁ロボットが墓を守っているだけ」
「なんか方向性は違ってないよね」
「どちらも、結局はお宝もらって帰るわけだしね」
「しかも、どちらも救いのお宝だ。タイガーモス号の復活資金にするにせよ、地球の放射能を除去するにせよ、救ってくれるお宝だ」
「予想以上にピッタリだ」
「竜の巣の中心核をねらえ。中には空中に浮かぶ都市が隠されているぞ」
「コスモバルス発進せよ、空中に浮かぶ都市帝国を攻撃せよ!」
「爆破して内部に突入だ!」