2010年07月25日
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ヤマト復活編にACE COMBAT的なリアリティはあるか?

Written By: トーノZERO連絡先

「というわけで、復活編BDを見て思ったのだが、これは映像がかなり来てる」

「うん。それはいいとして、ACE COMBAT的なリアリティって何?」

「いい質問だ」

「どういうことか説明してくれよ」

「ACE COMBATは3軸360度全方位フリーなんだ。しかし、昔のアニメはフリーじゃなかった」

「というと?」

「だからさ。基本的にヤマトは上下が確定して水平面で動くだけだった。せいぜい都市帝国の下部に待避せよ、というのが関の山だ。あるいは他のアニメの飛行機の描写も大差ない。水平面の移動と上昇降下、それから一部の特殊飛行があるぐらいだ」

「なるほど」

「しかし、ACE COMBATはヘディング、ピッチ、バンクの3軸がフリーだ。いや、厳密に言うと、そうじゃない。操縦方法にノービスを選んだり、操縦者がありきたりの機動に押さえ込んで操縦するとフリーにならない」

「なんで押さえ込むの?」

「機位を失って墜落するからだ」

「そんなのレーダーを見れば一発だろう?」

「それでは水平位置しか分からない。高度がいくらぐらいで自機の向きが上か下かも分からないと意味がない。下向きなのに加速しては地面にまっしぐらだ」

「そうか。それは墜落しやすいね」

「うん。だから、直感的に、視界の中に地面の割合が多いからブレーキングして引き起こすとかね。それができるようになると、3軸フリーになる」

「それで?」

「実は、復活編も3軸フリーなんだ」

「おっと!」

「コスモパルサーの空戦もそうだけど、宇宙艦もけっこう立体的な機動をしてくれる。ヤマトも上昇回避してくれるし、そもそも最初に被弾したブルーノアで逆襲する時もバンク角を180度回転させて背面飛行ですれ違っているし」

「そうか。昔のヤマトだと180度反転して腹を上に向けると、第3艦橋で指揮したり、いろいろ面倒な手順があったけど……」

「うん。もう宇宙艦操縦の基本的な機動のうちなんだ。だから、昔はコスモタイガー隊が上に待避しても、ヤマトは都市帝国の下に待避した。しかし、復活編では艦首を斜め上に向けてヤマトも上方待避できるわけだ」

なぜ変化するのか §

「なぜこういう変化が生じるのかといえば、おそらく人間側の意識の変化というものがあるのだろうと思う。レインボー戦隊ロビンぐらいの時代から続く変化の系譜だ」

  • レインボー戦隊ロビンの時代 地上から高空の空戦を見上げる感じ
  • 旧ヤマトの時代 本物の空戦を見たことはなく、映像資料のカメラの視点
  • 復活編の時代 本物の空戦を見たことはないが、ゲームなら見たことがある。ゲームで戦闘機を操縦する視点 (パイロット視点に限定されない)

「つまり、リアリティの根拠がアイボール→カメラ→ゲームと変化しているわけだね」

「そういう意味では、押井守監督のアサルトガールズにも、コクピット視点でミサイル発射シーンがある等、類似性があるのかもね」

「でもさ。ヤマト復活編のリアリティはどうもゲームとも言い切れないようだ」

「というと?」

「BDの映像特典の座談会で、西崎さんは戦中派的な発言もあったりするわけで、実はゲームというよりもアイボールかもしれない」

「なるほど」

「だからさ。何でもありありのゲームのリアリティは、アイボールのリアリティによって制限されている」

「そうか。監督はできあがった絵に注文を付ける立場だから制限者として振る舞うわけだね」

「うん。だから現場で絵を作る立場の人ができない発想はフィルムに出てこないが、アイボールのリアリティを超えることだけは抑止されているのかもしれない」

というわけで §

「で、何が言いたい?」

「だからさ。ACE COMBATをひたすら飛び続けている立場からすると、リアリティの根拠は文句なくゲームにあるわけだ」

「なるほど。でもそれでいいの?」

「いいわけがない。戦争とは現実であって、ゲームなど空虚な虚構に過ぎない」

「では、何がいいわけ?」

「やはりアイボール最強だろう。実際に行われる戦闘を生で見ていた視点が最強だ。だから、従軍経験者がごろごろそこらじゅうにいる時代のアニメは、もう作れないだろう。どうしてもリアリティの水準が落ちてしまう」

「なるほど」

「しかし、記録映像のカメラの視点をなぞっても、それだけではゲームで飛び続ける側のリアリティには届かない」

「どう届かないんだい?」

「だからさ。たいていの場合敵機ははっきり見えないんだよ。背後にいたり、前にいても米粒みたいな点でさ。HUDにコンテナが見えるから識別できるだけ」

「そうか。格好良く敵が出てきてまるで見つめ合うような至近距離で壮絶な戦闘、なんていうのは……」

「ないない。接近するのは特に高度な技量が必要。初心者は瞬間的に偶然すれ違うのが関の山。だいたいは、ロックオンしたら米粒みたいな小さな敵にミサイルを撃つだけ」

「それでいいの?」

「うん。いい。それぐらい交戦距離が遠いのだから、ろくに見えないのが当たり前」

「そうか」

「でも銃撃するならかなり接近しないと当たらないから敵機が見える。見えるけど敵機も必死に避けるために機動して、それに当てるために自機も動くから複雑な動きを見せる」

「そうか。そういう要素が復活編にあるわけだね」

「昔のアニメはおとなしく撃たれていたけどね。実際は回避するんだよ。直線飛行してくれるのは、追い続けてよれよれになったあとだ」

「なるほど」

「だから、そういう意味で復活編は正常進化しているな、と思った」

「ACE COMBATみたいなコクピットビューがあるアサルトガールズもだね」

「押井監督もイノセンスのときに、Project Acesのイノセン・テイセスのテストプレイをしているインタビュー映像があるから、当然そういうリアリティを把握した上での描写なんだろう」

「逆に言えば昔ながらの映像は……」

「トップガンみたいな……とか言ってるのはもうダメなんだろう」

「マクロスも?」

「板野サーカスは実は悪くない。なぜなら、バイクを走らせるリアリティに立脚した一人称視点を含むからだ。その意味で、実は記録映像のカメラ視点とはやや異なる。ゲームのシミュレーション視点を一部先取りしている感じがある」

「でも、板野サーカス風の追従者はそこに到達してない感じだね」

「たぶん走るバイクからロケット花火を発射して研究してないからだろ」

「で、まとめは?」

「うん。復活編バンザイ。以上だ」

「でもさ。アニメが全部復活編を前提に前に進んでくれるかというと、怪しいね」

「うん。ヤマトなんてバカにするかそもそも知らない世代なんだろう」

「そもそも見てないから前提の出発点にもならないってことだね」

「見ても分からないかもしれないしね」

「というと?」

「前から何度も言ってるけど、ネットやオタクの典型的な病理は無時間性だ。無時間性というのは、基本的に新しいものを受容できない。もちろん古いものも受容できない。なにせ無時間だからね。強いて目の前に出てきても、既に分かっている何かの記号で解釈したがるが、もちろんそれは新しい要素、古い要素を盛大に見逃すことで成立し、とうていフェアとはいえない評価になる」

「『なんだ、また同じじゃないか』」

「新しい要素を全て見逃して、自分で分かる要素だけ抜き出すと、同じじゃないかという感想になる。あたりまえ。これは作品の問題ではなく評価者の貧困を示す」

「見てきたように言うね」

「見てきたんだよ。そういう連中をごろごろとね」

「そうか」

「おいらの基準は徹底したリアリズムだからね。頭で考えたことなぞ、値打ちはない。実際に見たことから始まるのがおいらの基本。考えるのは見たことを解釈するためでしかない」

「おっと。アイボール主義! 君は遅れてきた戦中派かい?」

「戦中派だ。ソナーをあげよ!」

「それは潜宙艦」

「だけど、実は空戦という枠を外せば、アイボール主義はそれほど奇異でもない。戦争を目撃するチャンスは滅多にないが、目で見たことしか信じないという主義はあり得る」

「君もそうかい?」

「いや、おいらは目で見たことすら信じない。まして頭で考えたことなぞ信じられるか」

「おっと」

「これが小学校の学芸会の劇で、ペテン師Bに抜擢された子どもの末路さ。ちなみに、愛読書は新クロサギ」

「詐欺のトリックを見破るのが好きってことだね」

「しばしば、意図せざるトリックまで見えてしまうけどね」

「相手が信じてる理念の中のトリック性が見えてしまうと言うことだね」

「IT業界は半分詐欺みたいな話が山ほどまかり通っているし、大手マスコミまで盛大に煽っているケースもあるのだが、それをやっている連中に騙しているという自覚はあまり無いみたいだ」

「なぜ半分詐欺みたいって言い切れるの?」

「やってみれば分かる。彼らの言う素晴らしい未来は実現できないから」

「なぜそう言えるの?」

「誰かが過去に既にやって失敗した実例がごろごろあるからさ」

「過去の事例を知らないの?」

「それが無時間性という病理だ。無時間的な人間に過去は存在しない」

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