「いきなりかっとばすぞ」
「置いて行かれないように頑張るよ」
「やっと分かってきた。おいらは雷撃戦が好き。砲戦よりも空戦よりも雷撃戦が好き」
「たとえば?」
「敵の大艦隊に、夜間、吹けば飛ぶような小さな水雷戦隊が迫るんだ。そして、水雷戦隊旗艦が撃たれるのを覚悟の上で探照灯を敵艦隊に照射。当然夜間に探照灯を灯せば位置がばれて反撃されて旗艦は沈没。でも配下の駆逐艦は魚雷の発射に成功。敵の大型艦を沈めて大戦果」
「へぇ。そういうのが好きなんだ」
「昔さ。もしも太平洋戦争に間に合うぐらい生まれれるのが早かったら自分は何だろうと思った。子供の夢想さ」
「連合艦隊司令長官? 戦艦大和の艦長?」
「いやいや。名もない駆逐艦の青年艦長であっさりやられて戦死さ」
「おいおい」
「というわけで、それぐらい水雷戦隊は好きだったのかもしれない。ちなみに、5500t軽巡というのは、水雷戦隊の旗艦用なんだ。で、おいらは4本煙突の5500t級軽巡が好きだな。そして、後継艦が阿賀野級。ハセガワが1/350で阿賀野を出したのはいいことだと思う。実際は、日本に昂ぶって大和特攻時の護衛である矢作のついでにパーツ差し替えて出したに過ぎないとしてもね。条約型巡洋艦なんぞやるよりずっといい」
「で、その話とヤマトがどう関係するの?」
「まあ待て。慌てる乞食はオモライ君だ」
「へいへい。もうちょっと話を聞きますよ」
「あらためて考えてみると、水雷戦隊というのはチーム戦なんだ。チーム戦というのは、オレオレという気持ちを殺して役割に徹することで成立するものなんだ」
「うん」
「で、思ったことは、実はおいらはチーム戦が好きだ」
「え?」
「個人のヒーローが活躍するのは嘘くさい。役割の分類が明確ではない戦隊もあまり好きではない」
「うん」
「しかし、役割が分担されたチーム戦は好きだ。サムライを気取って単機で空戦する日本の戦闘機よりも、サッチ戦法という2機単位のチーム戦を行うワイルドキャットが好きなのだよ。分かるかい?」
「さあ」
「軍艦でもさ。戦艦なら単艦でも凄い戦闘力だ。同格の同型間と一緒に砲撃することはあるけどさ。でも、護衛艦と役割を分けているチーム戦とは言いにくい」
「なぜ?」
「護衛艦は単に戦艦を攻撃しに来る敵の水雷戦隊を阻止すればいいのだが、それが戦艦の戦闘と連動している必要は無いんだ」
「なるほど」
「しかし、機動部隊になると明確に役割を分けたチーム戦になる。輪形陣の一部に組み込まれると戦艦すら艦隊の一部として防空を担うことになる」
「ねえ。そろそろ話をヤマトに進めないか?」
「だからここでヤマトだ」
「え?」
「つまりさ。機動部隊はチーム戦だし、水雷戦隊もチーム戦だが、基本的に単艦で行動するヤマトはチーム戦とはいえないのだ」
「うん」
「なのにヤマトが好きって矛盾してると思わないかい?」
「確かに矛盾だ」
「しかし、そうじゃないんだ」
「え? 違うの?」
「ヤマトは群像劇なんだ。だから、ヤマトを動かすという目的の人間レベルのチーム戦の話なんだ」
「そうか。機動部隊は艦隊レベルのチーム戦で人の顔が見えにくいけど、群像劇だと見える訳か」
「だから、自分を殺して役割に徹して、旗艦は沈められようとも勝利のために働く水雷戦隊は、構造的には『守るべきはヤマトではない、地球だ』という話と同じなんだ」
「おお、なんてこったい」
「視点の持ち方がずれるので、なかなか比較しにくい。しかし、構造的にはよく似ているのだ」
「なるほどね」
「だから、なぜ加藤や坂巻キャップがかっこいいのかといえば、彼らは自分の役割に徹しているからだ。彼らはけして波動砲の引き金は引けないけれど、ヤマトは絶対に必要な人材だ。そして、古代を蹴落として主役になるよりも、交換不可能な貢献を行うプロとなる道を選んでいる」
「そこがポイントか」
「うん。そうだ。おいらだって、艦長席に座るよりも、太田の席に座ってミサイル接近大型です!と叫んでみたいよ。あるいは相原の席で通信機を調整するとかさ」
「さすがBCL世代」
オマケ §
「ちなみに、ボルテスはどうでもいいけどコンV大好きというのもこれで解釈出来る」
「というと?」
「どちらもよく似た5機合体だけど、実はコンVは役割が明確なのに対して、ボルテスは役割が不明瞭だ。全機が空を飛んで戦闘してしまう」
「コンVだと、戦闘向きではない機体もあるね」
「バトルタンクは空を飛べなくてバトルマリンに運んでもらうしね」
「つまり役割が明確なチームと、明確ではないチームの差ってことだね」
「ライジンオーなんかも、役割が明確なチームだね」
「ロボに乗っていないクラスメートにもみんな担当があるわけだしね」
「ゴレンジャーもそうだ。メカ操縦はブルーの仕事とか、割と明確に役割が分かれている」
「全員がメカを操縦して合体してしまう、バトルフィーバー以後の戦隊とは一線を画するわけだね」
「ガイキングもそうだ。実はガイキングの操縦者の他に大空魔竜の操縦者がいて、それも格好良かったりする」
「旧作の方だね」
「結局ガイキングもゴレンジャーもライジンオーも好きだったのだから、この分類は大いに意味があるのかもしれない」
「あくまで君の趣味を解釈する方法論としてだけどね」
「あるいは、ヤマトの特徴をあぶり出す試験紙としてだ」