「というわけで、永遠のジュラと森雪の貞操の危機という文章を昔書いたわけだが」
「うん」
「実は永遠のジュラそのものが手元にあるのをすっかり忘れていた」
「というと?」
「もともと、永遠のジュラはE君から最初に見せてもらったのが最初だ」
「人気漫画の続編特集のムックという奴だね」
「確かサブマリン707の続編とかもあった本だと思う」
「それで?」
「コンビニ版の松本ヤマトには収録されていなかったのでうっかり誤解してしまったが、実は秋田書店の2分冊の文庫サイズ松本ヤマトには収録されていた。2巻の最後にね」
「おっと」
「実はちょっと別件の確認中に気づいた」
「それで?」
「実は森雪に延びてくる手が異星人だったので、先の文章は間違い、全部間違い。すまん。終わり」
「ええっ? お詫びで終わっちゃうの?」
「と思ったのだが、読み返して重大なことに気づいた」
幻影に出てくる者達 §
「古代の見る幻影は守。徳川の幻影は愛子。ここまではいいね?」
「うん」
「じゃあ、沖田の見る幻影は?」
「誰だろう?」
「宇宙海戦で死んだ部下だ」
「名もない戦士達なのね」
「いやいや。名前がある」
「ええ?」
「こ、これは!?」
「古代守は作中の主要キャラであり別、石里が石黒の誤植と思うなら、ヤマトの主要スタッフの名前そのものだ」
「誤植?」
「手書き文字は読みにくいと写植を打つときすぐ似た字に化けるよ」
「そうか。ところで、山本君とか、ブラックタイガー山本と名前がかぶっているけどね」
「命名のルールそのものがかぶっているから仕方あるまい」
「そうか」
「しかし、この時点でブラックタイガー山本は主要キャラの仲間入りをしていなかったことも良く分かる。古代守はやはり物語の軸となる別格だ」
「なるほど。西崎さんも忘れていたらしいキャラだし、松本先生も忘れていたか」
「問題は、石里(石黒?)、松崎、藤川は呼び捨てなのに、山本君は君付け。西崎指令だけ肩書きを付けて別格だ。これは本来ならおかしい」
「というと?」
「宇宙海戦で死んだ部下に指令がいるのはおかしくないか? 沖田が指揮官だろう?」
「指揮下の部隊が更に細分化されて、その司令官かもしれないよ」
「でも、第2話で、指令わしは行くぞという相手は、後から藤堂と名付けられるであろうキャラなんだ」
「沖田より偉そうだね」
「むしろ、これは実際のスタッフに対する呼びかけであると思う方が良いと思う」
「そうか。松本先生から見て、山本暎一のみ一段階の別格、西崎義展はそれ以上の別格で指揮官だったということだね」
「しかし、みんなが戦死者であることは、実は好感と反感の狭間に松本先生がいたのかもしれない、という状況を示すのかもしれない」
「というと?」
「だからさ。松本先生というのは、基本的に漫画家であり、アシがいても基本は1人で戦うワンマンアーミーなんだ」
「うん」
「でも、アニメーションの世界は集団戦だ。凄い才能がずらりと並んで分業して始めてアニメはできる」
「そうか。そこが好感と反感の狭間なのか」
「アニメーションを手がけられたのは西崎さんのおかげであり、松本先生はそれを承認することはためらわない。集団戦の指揮官が西崎さんであったことも承認している。しかし、システム全体を死者扱いしている」
「屈折しているね」
「うん。そうだ。実は松本先生のフラストレーションはさらばで爆発したのではなく、それ以前から既にあったと考える方が良さそうだ」