「Oracle,AndroidのJava使用に関してGoogleを提訴というニュースがあるそうだ」
「うん」
「どう思う?」
「関係ないな」
「なぜ?」
「Oracle製品のユーザーじゃない。Android製品持ってない。Javaはもう使わなくなって何年経ったか忘れたぐらい古い話。というか、今時Javaで書くことを推奨ってどんだけ時代がずれてるの?」
「でも、今時Objective-CっていうiPhoneよりは新しいだろ?」
「それは横に置こう。話がずれる」
「分かった。言い直そう。でも君はGoogleを使ってるでしょ?」
「Googleのいくつかのサービスは使ってるけど、必需インフラにはしていない」
「必需インフラ?」
「gmailとかで仕事に必須のメールは送受信してない」
「なるほど。それで、このニュースはどう見る?」
「OracleとGoogleはどちらもオープンソースに理解があると標榜する企業とされてきた。しかし、オープンソースではないJavaを巡っては争うわけだろう」
「どうして訴訟なんか起こすんだろ?」
「うん。こういう訴訟は金のない相手に起こしても意味は無い。金は取れないからだ」
「ということは、Googleは金を持っているから訴訟された?」
「今や、GoogleはMSやAppleと並ぶブランドだからね」
「それで訴訟内容は正しいの?」
「さあ、知らん」
「どっちが勝ちそう?」
「それも知らん。どっちでもいい」
「とことん無関心なのね」
「うん」
深層の問題 §
「Google人気はかなり高いようだけど、君はもうそのGoogleも見限っているわけ?」
「厳密に言おう。単純に、Googleに対する懸念は昔からずっと持っていた」
「えっ?」
「だからさ。Web 2.0の本を書いたときも、Googleに対する懸念をはっきりと書いた。WikiPediaへの懸念も書いたから、別にGoogleだけを問題にしたわけではないけどね」
「あまりAmazonでの評価が高くなかった本だね」
「ああ、あの評価は信じるな。ネットはダメだろ?という批判をした本がネットで高評価になるわけがないだろ? 批判も批判になってないイチャモンばかりで見るのをやめた。自分たちが批判されて気にくわないから悪口言ってやろうという評価だろう。悪口だから中身がずれまくりだ。だから、そういう評価を真に受ける必要なんてまるで無いぞ」
「ネット批判本はネットでは受けが悪くて当たり前ってことだね」
「当然だ。あくまで本の評価は自分で出せ。他人の言うことなんて信じなくていい」
「それで、Googleって何が懸念されるんだろう?」
「Googleというのは、徹底的なコストダウンで成立している企業だ。PCすら自家製らしいぞ。最低限の機能に絞り込んだマシンを安価に大量に並べているらしい」
「そうか」
「ソフトもLinuxベースの自家製でタダらしいぞ」
「へぇ」
「巨大化してもシステムが自動化されているから安価なマシンを増やすだけで対処できる」
「なるほど」
「つまりさ。Googleの強さの本質は、徹底的なコストダウンと自動化にあるのだろうと思う」
「自動化もコストダウンの方法の1つだね」
「そうだ。人件費を減らせる」
「それで?」
「だからさ。Googleは検索エンジンを構築する際に、有償のOSを避けることによってコストを圧縮したんだ。同じように、AndroidでもJava VMが必要だったけど、有償のサンマイクロシステムズの製品を避けて無料の互換品を入れた。話としては同じような路線なんだよ」
「なるほど。商品は売りたいけど、できるだけ安価に商品は作りたいわけだね」
「でも、それは通らなかったわけだ。文句を付けられた」
「なぜ検索エンジンの時は通った方法論がAndroidでは通らなかったの?」
「無形の資産の問題だよ」
「無形の資産?」
「ソースコードは資産であるということは理解できるね?」
「うん」
「でも、仕様書も資産なんだ。あるコードをどのような仕様で実装するのかというノウハウもまた資産。形のない資産だ」
「えーと、どういうこと?」
「だからさ。高いWindows OSを避けて安いLinuxを入れても文句は言われない。Windowsが文句を言う筋合いではない。ソースコードどころか、仕様すら違うんだからね」
「うん。APIとか別者だね」
「でも、Java VMの互換品を入れるとAPIは同じなんだ」
「ええっ?」
「この場合、ソースコードを一切使っていないということは何ら免罪符にならない。今度は、互換品ビジネスという別の領域に入っていくからだ」
「昔のPCのBIOS問題みたいだね」
「あのときは、クリーンルームなどのかなり手の込んだ方法でやっと回避したが、Googleがそこまで厳密にやっているかは分からない」
「Java VMのソースコードなんて見たことも聞いたこともない人間に、仕様だけ教えて作らせたかどうかってことだね」
「もしも、前の会社で見たJavaのソースを無意識的にでも真似して書いていたら話はこじれるぞ。はははは」
「笑ってる場合か」
「いや最初から最後まで他人事だからさ。野次馬気分で見てるだけさ」
「とことん野次馬気分かね」
「うん。だからこれを読んでいるそこの君。この内容を信じるなよ。裏付けも無くてきとーに書いてるだけだからな。まあオーマガの他の文章も同じだが」
最後に §
「最後にこれだけは聞きたい」
「うん」
「Android携帯は買わないの?」
「今のところ、買う気はない」
「なぜ? 今更Advanced/W-ZERO3 [es]なんて持ち歩くのは古いのじゃないの?」
「うん。古いから置き換えたいと思っているけど、なかなかね。これはという候補に出会わないんだ」
「iPhoneやAndroid携帯は候補にならないというわけ?」
「うん」
「そのへんが良く分からないな」
「じゃあ、良く分かるようにしてあげよう」
「たのむよ」
「実は携帯を持ち歩く趣味はない」
「ええっ?」
「持ち歩く必要があるのはPDAだ。出先でスケジュールを確認したり、メモを取ったりする必要があるからね」
「じゃあ、携帯いらないじゃん」
「でも通信機能は欲しいんだ。地図とか路線検索とか、通信機能経由で出先で使うかもしれない機能もあるから」
「そうか。欲しいのは通信機能のあるPDAってことね」
「うん。そうだ。だから、昔はPDAと、それと接続できるPHSとか携帯を両方持っていたこともあるぞ。面倒であまり使わなかったけど」
「じゃあ、両者が合体したスマートフォンは歓迎ってことだね」
「いや、そこには直結しない」
「というと?」
「初期のPDAはどれもタッチパネルはあってもキーボードはなかった。文字入力が凄くやりにくかった」
「うん。小さい画面でソフトキーボードをペンでつつくって大変だよね」
「かといって画面は大きくできない。大きくなるとポケットに入らなくなる」
「それで?」
「だからW-ZERO3ショックだよ。ここでスライドキーボードが付いて衝撃を受けた。文字入力が格段にやりやすくなった。通信機能も内蔵だ。理想の可搬マシンの登場だ」
「それが更にコンパクト化したのが今使っているAdvanced/W-ZERO3 [es]というわけだね」
「うん。そうだ」
「じゃあ、まとめるよ。君が欲しかったのはPDA+キーボード+通信機能であって、W-ZERO3が理想に極めて近い」
「そうだ」
「あれれ。そうか。iPhoneもXperiaもキーボード付いてないね」
「だからさ。おいらはブラインドでメモが取れるキーボード付きのマシンが欲しい。けど、今時はiPhoneに右にならってみんなタッチパネルのソフトキーボードだ」
「それは機種選定が難しいね」
「でも、よくある話だ。USBスピーカを買いに行ったらiPodブームでみんなアナログ接続スピーカになっていたのと同じような話。時計の針を逆にまわしてどうすると思うが、ブームとはそういうものだ」
「でも、タッチパネルで思ったより打てるという人も多いよ」
「違うという意見もあって、どうもはっきりしない」
「じゃあ、ダメとも言い切れないんじゃない?」
「これは『十二人の怒れる男』と同じ話なんだよ」
「というと?」
「この映画は被告が犯人か否かを決めているわけではない。実は疑問の有無を決めているんだ。疑問がないからギルティー。疑問があればノット・ギルティー。ノット・ギルティーは罪がないことを意味しない。疑問があることを意味する。字幕で無罪と訳すのはちょっと分かりにくい」
「じゃあ、疑問が払拭されればいいわけね」
「その通りだ。誰も、iPhoneを絶対に買わないなどと決めているわけではない」
「じゃあ、疑問さえクリアになれば買うんだ?」
「いや、ハードルを1つクリアできるに過ぎない」
「やれやれ前途多難だね」