「ネットの言説の多数派や、オタクは従順すぎるという特徴がある、という話は以前やったね」
「うん」
「これは急速にネットのモラルが崩壊していくメカニズムとして説明できることに気づいた」
「というと?」
「まず、パソコン通信の時代について語ろう」
「モデムからダイヤルアップしてホストにつないでつかっていた時代だね」
「パソコン通信というのは、実際には人間関係の塊であり、対人関係が不得意な人間が振り落とされていくという現実があった」
「え? そうなの? パソコンが無いと人と付き合えないような対人関係が不得意な人間がやってたんじゃないの?」
「それはマスコミが作った虚像なのだ。実際にそうだったとはいえない」
「どうしてそう言えるの?」
「相手は人間である以上、途中に入るメディアがパソコンであってもなんら結果は変わらないからだ。相手を怒らせるようなことを言ったら相手が怒るのは同じことだ。人間関係はすぐこじれる。しかも相手の顔が見えない以上、難易度は高い」
「なるほど。相手の顔色を伺うことすらできないわけだね」
「でもさ。そういうフィールドであるということを理解して乗りこなそうとする世代とは別に、それがおかしいと感じる層もあったわけだ」
「ええっ?」
「だからさ。学校や家庭や職場で人間関係がうまく結べなかった人間がさ、マスコミの虚像に乗せられてパソコンを使えば上手く行くと思って始めるわけだ」
「でも、それは失敗するってことだよね。他で上手く行かない人間が、もっと人間関係が難しいネットで上手く行くわけがない」
「でもさ。従順すぎる人間はマスコミが言っている以上、上手く行くはずだと信じている訳だ」
「ええっ?」」
「従って、僕を受け入れないパソコン通信をやっている連中は偉そうでおかしい、と思うようになる」
「でも、そんな話はあまり聞かないぜ」
「そうだろう。あまり出てこない。希に、見かける程度だ」
「どういうこと?」
「インターネットが不満を解消したからだ」
「どうして解消できるの?」
「匿名掲示板が出てきたからだ」
「そうか。匿名なら何を言っても絶対に叩かれないね。名無しなら自分が誰だか特定できないわけだ」
「しかも、同じような仲間も集まってきて、擬似的な集団を形成してしまう」
「なるほど」
「基本的にインターネットであっても匿名ではない。実際はいつ誰がどう使っていたのか記録を辿ればばれる。しかし、掲示板の運営者がそこで情報の提供を拒否すると誰がやったのかトレース不能になるのだ」
「そうか。匿名性はネットの性質ではなく、あくまで運営者の判断次第ということか」
ヤマトを巡る問題もここにある §
「ヤマトを巡る問題もここにある」
「どういうこと?」
「だからさ。ヤマトを見るというのは秩序への反逆なんだよ」
「たかが子供のものでしかないアニメを、大人が見ることが反逆ってことだね」
「でもガ○ダムはもう反逆じゃない。既に大人が見るアニメというモデルが成立しているから、それに乗るだけだ」
「なるほど」
「ファン活動も同じだ。コミケとかそういうシステムも、ヤマトの時は黎明期であり、試行錯誤の時代だった。コミケありきという時代ではない。議論を戦わせて、いろいろな試行があり、最終的にコミケで上手く行ったからコミケが続いているに過ぎない。だから、ヤマトの世代はそういう試行錯誤期に、既存の秩序と違う自分たちの秩序を作るために戦った。敵とも仲間ともね」
「なるほど」
「しかし、ガ○ダムの時代になるともうフォーマットが固まり始めている。マニュアルに乗るだけで同人活動ができてしまう時代になってきた」
「とりあえず、キャプテン翼の同人誌を作ってサッカーボールを持ってくればいいとかね」
「で、サッカーボールは持ち込み禁止になるんだ」
「みんな右にならったからね」
「でもさ、ヤマト世代ならそういう右へならえはおそらくあまりやらないだろう」
「壊して再構築を始めようとするかもね」
「あるいは、もう同人活動の時代じゃないといって、そういう枠組みと飛び出して実社会に出てしまうとかね」
「スケールがでかいね」
「ヤマトとはそういうものだ。前人未踏の29万6千光年の旅をなめるなよ」
オマケ §
「実は、ACE COMBAT X2は敵としてウィルコラク隊というのが何回も出てくる」
「最初は味方なのに寝返るんだよね」
「その中に、キリアコフという名前の子供っぽい男がいるのだが、まさに従順すぎるという特徴を持つ」
「えっ?」
「キリアコフは隊長が対地攻撃は空を飛べない相手で金を稼げるから好きだという考えが理解できないという。しかし、戦場でヘッドハントされると、隊長がそれでいいなというと文句を言わない。他に何回か文句を言いそうになる場面はあるが、これも任務だと言われるとすぐ黙る」
「なるほど。普通の若者なら、もっと逆らって勝手な行動に出るところだね」
「いや、その発想がもう古いのかもよ。今時の若者は従順すぎるのが普通なのかも」
「そういう意味での性格的なキャラクター造形か」
オマケ2 §
「本当にWindowsが気に入らないとしよう」
「うん」
「そこで思ったのだ」
「何を?」
「自分ならどうするかだ」
「どうするの?」
「新しいOSを自分で書く。Windowsも気に入らないのに、ましてもっと古くて制約だらけのLinuxで納得できるわけがない。しかも、かつてOSは書いたことがあるし、そのOSが一時期のENIXのいくつかのゲーム開発に使われた事実もある」
「8bit時代の話だっけ?」
「そうだ」
「なぜ、それっきりもうOS書かないの?」
「OSを選択する自由は個人には存在しないからだ。コミュニケーションの道具は相手があって始めて成立するのに、個人の一存でOSを決めるなどどうかしている。ま、他人がどれだけ迷惑しているか分かってないから選べるんだろうけどな」
「だからOSは書かないの?」
「厳密に言えばいろいろな問題が絡み合っていて、もっと複雑なのだけどね」
「じゃあ、もしも世間の同意が得られてOSを書くとしたらどんなOSを書きたい?」
「ここいらの話は本筋と関係ないのでカットしてすっとばすぞ」
「目覚めろ一戸建て。すっとばしぃぃぃ」
「その台詞、宇宙犬作戦見た後で書いてるだろ、マルコ」
「ははは」
「だから結論としては、OSを巡っては、既に一国という矮小な単位では考えられないスケールで世の中は動いているということだ。もし自分で実用OSを書く日がくるなら世界を相手においらが書く。日本人なんてちっぽけな立場では書かない。地球人として書く。そもそも、日の丸OSなんて一国だけのローカル標準を決めたら世界の笑いものだ。それ以前に日本の経済に大打撃だけどね。金を掛けて不利益を呼び込むようなものだ」
「スケールでかすぎるよ」
「そうだ。まさに宇宙の愛のように大きなスケールの話だ。というわけで私はそれが分かってもらえる日まで祈り続けます」
「そうか。宇宙の愛か」
オマケIII §
「さりげなくテレサと真田の台詞が入ったな」
「さらばだ、明智君。わははは」
「おいらの名前、明智じゃないし」
「実はこの話は島大介論にも繋がる」
「ええっ?」
「実は島というのは、従順すぎる傾向がある」
「ヤマトで地球を救うと言われるとすぐその気になって頑張ってしまうね」
「あの艦長で大丈夫かと悩む古代とは違う」
「結局、艦長代理に指名されたのは古代だね」
「従順過ぎる島では、いざというときの柔軟性が足りないと思われたのかもしれない」
「従順すぎる若者は良くないってことなんだね?」
「うん。当然持つべき警戒心すら失って他人の言うことを信じすぎると、部下を連れてどんな危険なところに行ってしまうか分からない」
「実際にヤマト乗組員はガミラスに連れて行かれたね」