「というわけで、TOHOシネマズ府中初日1回目の上映を見てきた。8:45からだ」
「どうだった?」
「急かすな。これからそれを説明するところだ」
「じゃ、慌てず急いで正確にな」
前段階 §
「まず、前段階として、舞台挨拶は抽選が外れたのでフリーになった。なので、どの劇場で見ようと、何回目の上映を見ようと、床に唾を吐こうと、猫を盗賊呼ばわりしようと自由になった」
「後半の言い回しは意味分からないよ」
「そこはスルーしてくれ」
「うん」
「で、ヤマト復活編は公開初日の2回目の上映をバルト9で見ていたようだが、初回ではなかった。万一寝過ごすと痛いことになるからね」
「寝過ごしても金だけ取られちゃうのは面白くないね」
「そういう意味でリスキーだから、当初は初回をあえて見るか迷った」
「府中で8:45ってことは、移動時間も見込むから早起きが必須だね」
「時間にゆとりがないってことは、おトイレに行きたくなるリスクもあるわけだしね」
「そうだね」
「でもさ。予約を入れることができるようになった日の朝。席の予約状況を見ると8:45の回なのに、そこそこ席が埋まってるのよ。まだ半分に達してなかったけど」
「ええ?」
「で、おいらも燃えたね。おいらも負けてなるものか。初回の席を予約だ」
「それであとはそのスケジュールから逆算して早起きして見に行ったわけだね」
「でも緊張しすぎて、ちょっと早めのスケジュールで動けてしまった」
「どれぐらいで府中到着?」
「上映開始30分前ぐらいかな」
「そんなに早いと劇場が開いてないのと違う?」
「うむ。まだ空いてなかった。ショッピングモールのエスカレーターは動いていたが、劇場に上がるエスカレーターが動いてなかったし」
「それで待ったの?」
「いや、その前に凍り付いた」
「何があったの?」
「行列だよ。エスカレーターの前から廊下に掛けて行列が待っていた」
「なに!?」
「おそらく目当てはヤマト。同じだろう。こんな中途半端な平日で人が殺到する映画は他にあり得ない」
「ショックでかいね」
「府中だぜ。新宿や渋谷じゃないぞ。舞台挨拶も無いし、ごく普通の上映だ。1000円で見られるファーストディという特徴を除けばただの平日だ」
「で、結局オチはなんだい?」
「オチは無い。実際にスクリーンがほぼ満席に近い状態に埋まったのだ。ガラガラだったのは最前列ぐらいだろう」
「そこまでよく観察してるね」
「最前列に座ったからな。このペースだと落ち着いて見るには最前列が必須と思った読みは大当たりだ」
「で、どんな人たちだった?」
「男も女も若いのも歳行ってるのもいた気がする。あまりよく見てないけど」
「つまり、特徴はないってことなんだね」
「だから、西崎さんが死んでヤマトは日本人の財産になった気がするな。ガ○ダムがオタクの財産なら、ヤマトは日本人の財産」
「日本人なら誰が見てもおかしくない映画ってことだね」
上映前 §
「しかし、ヤマトだから特別ということはなく、紙兎ロペを上映して、鷹の爪団の英会話を上映して、トロンとかあしたのジョーとかの予告も上映して、著作権の警告をするカメラおじさんのダンスを上映して、ヤマト開始」
「つまり、ヤマトもごく普通の映画の1本だってことだね」
「勝負の出発点に立っているということだ」
内容 §
「さて、内容はどうだった?」
「言えることは主に2つある」
「最初は何?」
「ノベライズを2種類も読んで激しくネタバレして見に行ったのはある意味で痛恨のミスかも知れない」
「というと?」
「おそらく、予備知識無しで見た客は驚きっぱなしだったと思う。都市帝国が出てくるところまでを事前情報と知っていた客が劇場に行って超大型戦艦を見るような衝撃があったと思う」
「うん」
「でも、激しくネタバレ状態だったおいらは、超大型戦艦を既に知っている状態だったのだよ」
「なるほど。じゃあ泣けなかったの?」
「とんでもない。それは2つめ。実は最初から最後までほとんど泣きっぱなしで見ていた」
「ええっ!? 激しくネタバレ状態だったんでしょう?」
「でも、映像としてヤマトが出てくるのはやはり泣ける。泣けるシーンも多いから尚更だ。知っていることと泣けることは直結しない」
評価 §
「それで君の評価はどうなんだい?」
「うん。VFXの比重は比較的低いと思った。木村拓哉の顔を見るための映画だなと思った。これはかつて、アリス・イン・ワンダーランドをハッター(帽子屋/ジョニー・デップ)の顔を見るために行ったのと同じことで、木村拓哉こそが作品の顔だったと思う」
「それはどういう意味?」
「木村拓哉の演技は見応えがあった。だから、しっかりといい映画を見てきたという感触が残る」
「それはVFXがイマイチと言っているように聞こえるけど」
「VFXはまだ踏み込める余地があると思った。まあ、こういう映画を作るのはみんな初めてだからある意味で仕方がない。しかし、序盤より終盤の方がよりVFXも上手くなって見応えがある、という印象もある。作業しながら経験値を貯めてレベルアップしているのかもしれない。そういう意味で、VFX映像としてのヤマトはもう一歩先があると思うが、実はこの映画にとってそれは重要ではない」
「ヤマト艦内の人間ドラマの方が重要ってことだね」
「だからさ。宇宙空間で戦闘している映像よりも、斎藤が母ちゃんと通信しているシーンの方がはるかに重要ってことだ」
「おっと。それはアニメ版ではあり得ないシーンだね。通信エピソードのときに斎藤は乗艦してないぞ!」
トリビアっぽいもの? §
「ネタバレっぽいの行くぞ」
- 太田はどうなるの? と思ったらちゃんと第1艦橋にいたぞ。でも女の子らしい
- 女性化した相原の制服どうなるの? と思ったら航海班と同じだった
- 女性乗組員? と思ったら艦内に無数にいた
- 最後に古代の無茶な命令に抗議するのは島。やっぱりアニメ通り
- 失神した雪の手を握る古代。まるで死んだ雪の手を握っているようじゃないか
- コスモゼロのホバリング形態でアナライザーの頭部が隙間から見える
- どっかで聞いた声で喋るスターシャ
- どっかで聞いた声で喋るアナライザー
- どっかで聞いた声で喋るナレーター
- どっかで聞いた声で喋るデスラー。設定違うんだから、デスラーは伊武雅刀じゃないとヤダとか無理な話と思ったら無理じゃなかった。ともかくここは最大にやられた部分。分かったかねヤマトの諸君
- 最後に出てくるデスラーは青い人型
- ワープと言われて分からない佐渡先生はやっぱり猫と酒瓶抱いて佐渡先生だ
- ワープで雪の服は脱げないかと思って見ていたら脱げなかったので、まあ無理な話だよなと思ったら思いがけない場所で服が一瞬で脱げた。どこまでヤマトファンのツボを心得ている映画だ
- 佐渡先生が沖田が死んだ後第1艦橋に来るが、結局何も言わない。アニメ版通り
パンフの話 §
「珍しくパンフを買ったが中身はかなり熱い。だが、このとんでもない映画の根源が何となく見えてきた」
「どういうこと?」
「まずは以下の引用を見てくれ」
脚本:佐藤嗣麻子
(中略)
その作業に伴い、設定をいくつか変えなければならなくなった。大きな変更点を一つあげるとすれば、ヒロインの森雪の役職だ。初稿は原作通り生活班班長兼レーダー手兼看護師で書いたのだが、戦闘中心の話の中で主人公との関係や心の吾藤を描いていくためには、古代進が、毎回雪の読み上げるレーダーにケチをつけるわけにも、コーヒーがマズイと文句を言い続けるわけにも、怪我をして手当を受けているばかりもいられず、結果、雪を戦闘班に配属することになった。TV版のファンにはこの場を借りて謝りたい。
「これがどうしたの?」
「1964年生まれということは、おいらと同い年のオリンピックベイビーだが、そこは今回どうでもいい」
「じゅあどこが問題なの?」
「コーヒーだ」
「えっ?」
「森雪が入れるコーヒーが不味いという話は、アニメ版では1回しか出てこないし、しかも重要なエピソードですらない。しかも、第1艦橋ではなく、確か第2艦橋で、島、太田、林は出てくるが古代は出てこない。沖田も出てこない」
「つまりどういうこと?」
「つまりさ。こういう経歴があるわけだ」
TV版を小学生、「さらば」前夜祭のラジオを中学生、ポスターを高校卒業まで貼っていた。
「どういうこと?」
「この人、ヤマトファンなんてものじゃない。おそらく台詞まで暗記したヤマトキチ○イ=ヤマキチだ」
「ええっ!?」
「そうじゃなきゃ、こんな脚本を書けるものか。違う話をやっている筈なのに、油断するとすぐアニメ版のヤマトネタに回帰する。執拗なまでに数え切れないヤマトネタに回帰する。いくら関係者にファンが多いと言っても、骨格レベルでこれだけのヤマトネタはまず普通突っ込めない。というか普通のヤマトファンのレベルでは気付かないようなネタにまで回帰してくるから油断がならない。おいらだって、まだ気付いてないネタありそうだし」
「そ、そうかもね」
「それだけじゃない。ストーリー的な矛盾点をよく解消するための新設定や新展開も意欲的に取り込んでいる。たとえば、艦艇部に取り付かれて自爆されてもなぜか無事という不思議な展開はもう存在しない。最後の地球艦隊が勝てないと分かっていてわざわざ冥王星まで行く謎も解消されている。あと放射能除去装置の設定に関してはおそらく石津嵐版まで視野に入れて書いている」
余談 §
「SPACE BATTLESHIPヤマトをゲーム化という話はおそらくあるのだろう」
「そうだね。人気があれば何でもありだ」
「でもさ。地下閉鎖空間での大空戦という展開を見て思った」
「なにを?」
「こんなACE COMBAT的なシチュエーションが他にあるか? Project Acesがぜひとも作るべきだ。というか、自分で飛びたいな」
「昔、マクロスのゲームってあったよね」
「エアロダンシングのスタッフが作ったというタイトルはやったことあるけどさ。結局、3段変形するから煮え切らない内容になった気がする。バトロイドでガンポッド撃ちまくってると自動照準で勝手に当たってくれるとかね。ロボに変形しないコスモゼロなら大丈夫」
「変形ねえ」
「コスモゼロと変形問題はまた別途書くかも知れない」