「昨日何気なくテレビを付けたらファフナーをやっていた」
「ファスナー?」
「違う。蒼穹のファフナー。アニメブームの終了を勝手に自分で自分に宣言した記念碑的な作品だ。ヤマトからアニメブームが始まったのは怪しいが、とりあえずヤマトからとすると、ヤマトから始まったブームは、ブームと呼ぶには長すぎる時間を経てファフナーで終わった、というのがおいらの解釈。その後にも、良いアニメが無いわけではないが、もうブームと呼べる厚みはない」
「まだ数は多いのじゃないの?」
「束になって、絶頂期のアニメ1本にも値しない緊張感の欠片もない粗製濫造アニメなど、あっても無くても同じだ。数の内に入らん」
「そうか」
「というわけで、テレビを付けたらいきなり東京MXでやってた。第2話だった」
「それで?」
「戦闘はやはり薄っぺらい面があって、今見ると辛いところがある。しかし、戦闘じゃなくて日常パートに行くとやはり秀逸だ。異常状態の社会が上手く描かれている」
「そうか」
「次回予告とか、かなりゾクッと来たしね」
「話はそれだけ?」
「いやいや。実はさ。今ここでファフナーを再放送する理由は、実は12月25日に劇場版をやるってことなんだ」
「ええっ!?」
「ブームの『始祖と終末』の劇場版が同じタイミングで上映されるのは奇妙な因縁だ」
「なるほど」
「しかし、上映劇場数は極めて少ない。もう、アニメ業界には多数の劇場で上映するだけのパワーがないみたいだ」
「萌えアニメと同じってことだね」
「『あたしンち』にすら、もう勝てないわけだよ」
「そうか」
「いや、もう『レッドライン』にすら勝ててない」
「うーむ」
「まるでアニメの『終末』を目撃しているようじゃないか」
「ははは」
「というわけで、やっと本題だ」
「ええっ? 今までのは本題じゃないの?」
「実は奇妙な符合だが、ヤマトもファフナーも一種の終末ものなんだ」
「ええっ?」
「ファフナーは、日本が既に壊滅している中、南海の小さな島に人類が住んで生き延びているという話だ」
「へぇ。そうなんだ」
「奇妙な一致だとは思わないかね?」
「でも、成り行きは違うみたいだね」
「始まりの終末であるヤマトと、終わりの終末であるファフナーは、共通点もあるが相違点も多い」
「そうか、新しい世界を切り開くヤマトには常に大きな未来があるが、終わりの終末は常に縮小再生産の荒波に飲まれそうになるということか」
「本当に常に大きな未来があるかはしらないけどね。かなりリスキーだ」
「た、たしかに……」
「でも、ファフナーが荒波に飲まれそうな感じなのは確かだろう。というか、アニメ界そのものがもう飲まれそうな状況だろう」
「そうなの?」
「こういう時代には異能のアニメが生まれて、それがブレイヴなんだけどさ。それは本当に例外なんだ。数は多くない」
「そうなの?」
「だからさ。家でオーズと宇宙犬作戦を見て映画館でSPACE BATTLESHIP ヤマト見て、それでもういいわけだよ。アニメの立場は、もう特殊な補完的な位置づけに後退してしまった。自分自身、もうアニメなんて見なくてもいいかも、とすら思う。とりあえず、アナログ停波よりも先に、今のような録画を行う意志はない。それ以前に止める可能性はあるけどね」
「で、ファフナーの映画見るの?」
「うーん、今のところは未定だ。成り行き次第だな」
「ずいぶん微妙だね」
「だって、東京じゃ池袋でしかやらないんだぜ。遠いし、電車賃も時間も掛かる。井の頭線で行ける渋谷とは訳が違う。そもそも慣れた府中では見られないわけだし」
「そうか、それは微妙だね」
「しかも、他に見ておきたい映画は多いしね」
「トロンとか?」
「うん、そうだ。せっかくだから、ヤマトのライバルとしてトロンも見たいよな。3Dだし」
「他には?」
「イナズマイレブンも見てみたいよな。3Dだし」
「3Dばっかり……」
「3Dじゃなかったらライダーかな」
「ライダーって」
「なんか、これまで続けて5本見てきたしな」
「そうか」
「あとSPACE BATTLESHIP ヤマトももう1回見たいしな」
「ええっ」
「これまで一番多く見たのはたぶん耳をすませばの7回(たぶん)なのだが、その時の経験から言うと、同じ映画を見続けるとだんだん面白くなくなっていくが、ある点を超えると急に深みが増して面白くなってくる。4~5回目ぐらいがいちばん面白くない。次にヤマト見ると3回目なのだが実はノベライズを読んだ分も含めると4~5回目ぐらいに相当する気がする」
「そこは悩ましいね」
「毎週ヤマトということも考えたがさすがにそれも無理があると気付いた。他の映画も見ないと比較にならないしね」
「そうか」
「でも、見たい映画を全て見る贅沢は無理。そんなことはとっくに分かっている」