「やべえぜ。自分で書いた気づかなかった」
「なに?」
「ここだよ」
「更に言えば、コアな年齢層も違うしね」
「というと?」
「オタクのボリュームゾーンはおそらく30~40代。映画は50代だ」
「映画の方が年上なんだ」
「そうだ。平均的な趣味は映画の世界の方が渋いぞ」
「これが何か?」
「西崎さんは復活編のパンフで30~40代は手本にならないと言った。手本にするならもっと上ということだ」
「なるほど。そのまんま年齢層がかぶるね」
「たぶんそういうことなんだよ」
「どういう意味?」
「今や、ヤマトでは2520で手を付けたOVAという方向性が全く出てこない。出るのは映画とテレビシリーズだけだ」
「うん。死ぬ前の西崎さんはそんな感じだね」
「まあ、OVAそのものが死んでいるジャンルというのは横に置いて」
「置いちゃうのか」
「話が煩雑になりすぎる」
「そうか」
「ただ、1つだけ言えるのは実際の復活編もSPACE BATTLESHIP ヤマトもボリュームゾーンが50代とも言われる映画館でやったということだ」
「30~40代はもう頼れないってことかな?」
「実際に頼れなかったんだろうな。過去の経験として」
「差別じゃ無くて実績ということだね」
「2520はけしてつまらないアニメでは無い。結局、あれがこけた理由の多くは受け手の側にある、としか言えない」
「つまり30~40代ということだね」
それは本当に意味があるか? §
「しかし、それだと30~40代に対する非難はあくまで個人的経験に基づくものとしか言えないね」
「いやそうでもない」
「えっ? どうして?」
「結局、問題の本質はある種の詐欺性にあるからだ」
「何だよ、その詐欺性って」
「アニメが好きですっていう30~40代が、本当にアニメが好きであるわけでは無いということだ」
「ええっ? 意味分からないよ」
「いいかい。本当にアニメが好きなら、アニメであれば区別無く見るはずだ宇宙戦闘だろうと名作ものだろうとな」
「うん」
「あるいは子供向けだろうが大人向けだろうがな」
「そうだね。アニメであることに魅力を感じているのなら、そんな区別に意味は無い」
「でもさ。大多数の自称『アニメが好きなオタク』は子供向けなどのアニメをまたいで通るぞ」
「ええっ? マジで?」
「そうだ。おいらの『ワタルって面白いぜ』というメッセージが他の誰かに届いたのは、なんと後番組の『グランゾート』になってからだという体験もあるしな」
「1年遅れじゃん」
「低等身の子供向けってだけでみんな意識から排除してるんだよ。低等身だろうと子供向けだろうと面白さとは関係無いのにね」
「そうだね」
「でも、僕らはアニメが好きです、アニメの理解者です、アニメを応援してますという立場を崩さない」
「だって、今の話通りならワタルを応援してなかったじゃん」
「そうさ。そこに発言と行動が乖離した詐欺性があるって言うんだよ」
「なんてこった」
慣れっこ §
「こんな経験は慣れっこだ」
「そうなの?」
「最近は面白いアニメが無いという相手に、こんな面白いアニメがあるぞと教えてもまず見ない」
「ええっ?」
「わざわざ身銭を切って目の前に用意して『見ろ』というと見るけど、それっきり。次回は自力で見るという努力もまず払われない」
「なんでそうなるの?」
「ソラン、じゃなくて、知らん。誰かに誰かにきいとくれ」
「そりゃ殺生だよ」
「この結論は当たり前だろ? 他人が本当は何を思っているのかなんて知らない。分からないよ」
「じゃあ、分かってることはなんだい?」
「最近は面白いアニメが無いと嘆く相手に面白アニメを紹介する行為はおおむね無駄であるということ」
「結局そういうことか」
「この構造は、実は漫画界とかぶるみたいだ」
「えっ?」
「書名忘れちゃったけど、ある本の前書きに『ワンピースが売れたと書いたと同時に最近はヒット作が無いと書かれてしまう』という話が載っている」
「なんだそりゃ」
「ワンピースは漫画で無いという思い込みが比較的高年齢層にあるみたいだ」
「ひでー差別だな」
「しかし、構造としては同じだ。目の前にあっても見落とされてしまうのだ」
「そうか。なんとなーくわかったよ」
「だから今の世の中は病んでいるのだと思うよ」
映画館ってのは §
「そういう意味で映画館というのはそういう病理とは割と距離を置いているという印象がある」
「どうして?」
「宇宙ものの映画の隣で時代ものの映画を上映していることもあって、客はどちらを見ようかなと悩む」
「区別が少ないわけだね」
「更に言えば、子供向けの区別も少ない。確かに、子供向け映画は子供が見やすい長期休暇に集中的に上映されるし、テレビの子供番組でも積極的に集客されるが、いざ劇場に来てしまうとややムードが変わる」
「というと?」
「大人向け映画と子供向け映画の扱いにあまり差が無いんだよ。大人でもぶらっときて子供向け映画のスクリーンに入る抵抗感が少ない。無いとは言わないが少ない」
「そうか」
「で、抵抗感がある大人は大人向けのドラえもん映画上映会で大人だけで見るわけだ」
「リルル~!」
「鉄人兵団でいかに百式モドキのザンダクロスが出ても、ドラえもんを1回卒業したオタクはもう見ない。百式が出てくるZガンダムを見ても、もう鉄人兵団は見ない」
「なぜか分からないけど、そういうものなんだね」
「そういうものなんだよ。なぜかね」
まとめ §
「で、結論はなんだい?」
「生暖かい目で見守ろうじゃないか」
「それ、ネタとして難しいぞ」
「そうかな」
「だって、それはドラえもん映画の話題に引っかけて、新世代ドラえもん映画の定番である『生暖かい目』に引っかけてるけど、見てない人にはさっぱり分からんぞ」
「そうか」
「鉄人兵団なら子供の頃に見たというオタクが、その後でドラえもんを卒業してそれっきりだと理解できないかもしれない」
「まあな」
「で、君はどうなんだい? どのドラえもん世代なんだい? 恐竜? 魔界大冒険? 西遊記? 日本誕生?」
「おいらか? おいらはズバリ学習雑誌連載世代だ」
「ええっ?」
「アニメじゃない。ホントのことさ」
「X年生とか、そういう学習雑誌に連載されていたのを読んでいたってこと?」
「いえーす。アニメを引き合いに出してドラえもんを語るなどオプションであって、基本じゃない」
「じゃあ、どうしてドラえもん映画語れるの?」
「第1作であるのび太の恐竜をテレビで見て、あごが外れるほど驚いたからだ」
「どうして?」
「子供向けなのに中身がよく考えられていてハードだったからだ」
「たとえば?」
「タイムパトロールが出てくるところはまさに泣ける」
「どうして?」
「だって、ただの子供向けなら適当にタイムマシンがあって、適当に過去で遊んでああよかったねで終わる。過去を改変しちゃいかん、という話は考えると面倒になるので放置される。でも放置しなかったんだよ。藤子F先生はね」
「なるほど」
「結局ヤマトも同じで、みんなで力を合わせないとフネは動かないという側面を騙さなかったんだ」
「そうか。ヒーローのガキが1人いれば大戦艦も動くという安直な話にしなかったわけだね」
「沖田、古代、島、森、アナライザー、佐渡ぐらいしか集まっていない第2話の段階ですら、作業員が多くいて、いろいろ作業をしてくれている描写がある」
「古代戦闘部門を助けろ、島、パイロットの席に着け、このフネにはまだ作業員しかいないのだ」
「それで敵空母を沈められたのだから、立派なものだ」