「京極夏彦もヤマトを語れる」
「えっ? 妖怪小説の人でしょ?」
「そうだが、実は1963年生まれで、年齢が近いのだ。当然ヤマト世代である」
「どんな感じ?」
「こんな感じだ」
『豆腐小僧双六道中おやすみ 本朝妖怪盛衰録』のp381より
どうであれ、この起用はもの凄いスピンオフと言わねばなますまい。
怪人二十面相を捕まえるために金田耕助に出馬を要請するようなもの、ゴジラ退治にウルトラマンを呼ぶようなもの、エンタープライズ号にイスカンダルへ行けというようなものでどざいます。
いやはや例えがマニアな感じで申し訳ない。
「なんでイスカンダルやねん」
「京極夏彦の豆腐小僧というのは実は妖怪の話では無く能書きの話なんだ。そこを勘違いしていると変なことになるけどね」
「まさか。能書きが主役になれるのかよ!」
「なれる。この小説の主役である妖怪は『概念である』という解釈だからだ」
「は?」
「だからさ。妖怪なんていないわけだ。いると思った人間がいるだけなのだ」
「ぎゃふん」
「だから水木妖怪の感覚で扱ってはいけない世界なのだ。鬼太郎感覚で語ると火傷するぜ、ベイベー」
「しかし、妖怪小説で説明にイスカンダルなんて言葉が出てくるとは」
「明らかに同世代ってことだ」
「確かに」
「というわけで、豆腐小僧の続きを読むか~」
ヤマト妖怪説 §
「しかし、ヤマトも妖怪みたいなものだ」
「第3艦橋が生えてくるから?」
「まあそれは冗談としても、サイズがどうしても合わないとか、三面図が矛盾しているとか、いろいろある。でも妖怪なら筋が通る」
「実在しない概念なら、形やサイズはいくら矛盾しても『誰かにはそう見えた』でいいわけだね」
「だからヤマトは色も形も矛盾する形が山ほどある」
「そうだね」
「だからリアルな立体化に意味は無い」
「唯一の世界が無いからだね」
オマケ §
「唯一の世界が無いからだね」
「というわけで、君はどちらを見るか!」
「は?」
「真実の軍艦色か、理想の艦艇色か!」
「2つしか無いのかい」
「ヤマトは上下2色塗り分けが基本だからだ」
「で、ヤマトで真実って重要なの?」
「そうだ。放射能除去装置の真実だ」
「じゃ、ヤマトで理想は?」
「古代がいつも理想論を語るじゃないか」
「ぎゃふん」
オマケ2 §
「まあ、水木しげるにしても、初期にはかなり戦記ものの漫画を描いているので、ヤマトとの相性が悪いわけでも無い。第2次大戦中の日本の軍艦とか飛行機もかなり描いている」
「へえ。かなり意外だね」
「妖怪を描く素朴な人……でもないのだな」
オマケIII §
「まだまだあるぞ」
「なんだい?」
「おいらがSPACE BATTLESHIP ヤマトを見ていたのは府中」
「うん」
「往復の途中にある調布は水木しげるの街。妖怪の像とかいっぱいあるし、調布市の出版物の表紙が水木しげるだったりするぞ」
「そりゃおまえだけの関連だろう」