「ジョブス関連で面白い現象に遭遇した」
「ちょっと待て。これは報道の話題なんだろ?」
「だから報道の話題だよ」
「嘘付け。ジョブスって言ったじゃん」
「だからジョブスの報道だよ」
「ぎゃふん」
「さて本題だが、ジョブスのどこが独創的なのか説明して欲しいと書いたすぐ後に、日経には『先行製品はいくらでもあるが、ジョブスは発売タイミングが上手いのだ』という記事が載った」
「君の意見を読んで対応したってこと?」
「まあ違うだろう。同じような突っ込みは各方面から来たってことだろう」
「よくある突っ込みってことだね」
「なんら独創的な突っ込みではない」
「わははは」
「しかし、ごく最近になって、NHKでジョブス賛美に満ちた番組をちらっと見た。さすがにそれはやり過ぎだろ、というぐらいジョブスの独創性を褒め称える番組」
「それってどういうこと? NHKはジョブス信者で一杯ってこと?」
「いや、むしろメディアの構造上の違いと見た方が良いのかも知れない」
「どういう意味?」
「新聞は、基本的に記者が取材して記事を書いたらそれが紙面に載る。下手をすれば朝の出来事が夕刊に載るぐらい、フットワークが軽い」
「テレビはもっと早いじゃん。生中継すれば、現場の映像がリアルタイムに届くじゃん」
「スクープ性のある事件についてはその通り。でも、地道に時間を掛けて作る報道特番的なものはそうでもない。動く人数も多いし、時間も掛かる。まず、予算を確保しなければ取りかかれない」
「記者1人が文章を書けば載る新聞とは違ってフットワークが重いってことだね」
「そうだ。だから、日経は即座に対応して『ジョブスの独創性を否定する記事』を掲載できる。しかし、NHKは即座に対応できず、かなり後になってから『ジョブスの独創性を賞賛する番組』を流してしまう」
フットワークが重すぎるテレビという問題 §
「これはさ、別にジョブスを揶揄しているわけではなく、他にも例が求められる」
「というと?」
「ブラタモリで街を歩いているタモリさんのファッションが明らかに季節外れ、とかね」
「収録してから放送されるまでのタイムラグが大きいということだね」
「手間暇掛けて再現CGとか作って編集しているとすぐそれだけ経過してしまうのだろう」
「放送枠の確保という問題もありそうだね」
「細かいことは知らないがな。でも、関わる人間は多くてフットワークが重い感じはあるな」
「そんなに?」
「たとえばさ。ジョブス賛美歌は意外と反発も大きいからマスコミとしては控えざるを得ない。でも、NHKはブレーキを掛けられない。一方で、ブラタモリは超人気番組だ。普段はテレビを見ない人も見ているぐらいだ。でも、類似番組をほいほいとは作れない。これもフットワークが重い。ドラマや報道特番を作る方法論はあっても、ブラタモリ的な番組を作るノウハウはあまり持ってない人ばかりなのだろう」
「新聞の方がマシってことだね」
「それはワカラン。新聞の方がフットワークが軽いことまでは指摘できるが、中身は保証せんよ。そもそも、新聞を発行しているわけでもないおいらが保証するようなものじゃないだろ」
「ぎゃふん」
オマケ §
「ちなみに、今日読んだネットの某メルマガには、ジョブスの製品について『なぜ売れるのか分からないようなものばかりだが、買いたくなる魅力がある』と書いていて、独創性はなんら強調されていない」
「上手く逃げてるね。魅力なら感性のものだから、理屈で間違いは指摘しにくい」
「これもまた、フットワークが軽いってことなんだろう。行きすぎたジョブス賛美歌は反発も大きく、マスコミとしては好ましくないと分かったのだろう」
「ネットのメルマガも新聞並にフットワークが軽いわけだね」
オマケその2 §
「このことは、ネットという同じ土俵に載って新聞とテレビとネットのマスコミの3つが衝突したとき、テレビがいちばん不利かも知れないことを示す」
「ネットの時事ネタに対応するのが難しいってことだね」
「実は同じようにフットワークが重いのがゲーム業界だな。ゲームの開発に時間が掛かりすぎ、金も人員も掛かり過ぎ。どうしても、大胆な企画をやりにくいし、やる側も保守的になって大胆なタイトルには手が出にくくなる」
「みんなが、ドラクエのリメイクとかFFのリメイクに喜んで手を出すわけだね」
「ファンと業界が一緒に地獄に墜ちていく負のスパイラルだ」