「トモネコさんがUボートとかいうから、Uボートで検索した」
「それで?」
「なぜかこんなものが引っかかった」
- Uボート・レディ―ワイド版 (高橋葉介ベストセレクション) [コミック]
「なんだこれ、日本のコミックか」
「問題は高橋葉介という名前だな」
「なぜ問題なの?」
「昔ちょっと読んだからだ」
「どれぐらい昔?」
「たぶん中学生ぐらい」
「それは古い」
「おぼろげな記憶によると、これがいいんだと言って高橋葉介のコミックを持ってきたのは当時友達のA君」
「おっと、伏せ字とはプライバシー重視だね」
「そこでふと気づいた。つい最近A君のことを思いだした」
「なぜ?」
「メカコレだ」
「は?」
「中学生の頃、A君はメカコレ集めていた」
「それがどうした」
「A君が集めているならまあいいや、と思って自分は集めなかった。メカコレ集めていない理由は基本的にこれだな」
「えー」
「ということは、高橋葉介のデビューって、ヤマトブーム真っ盛りの時代ということになる。猫も杓子もヤマトで辟易する頃に、全く異質な自分の世界をやってくれたのはある意味で良かったわけだな」
「ヤマトがブームなのにフォロワーが実はほぼ皆無で、みんなロボットかヒーローになっちゃうおかしな時代に蹴りを入れたい時代ってことだね」
「そうそう。しかし、ライヤー教授の午後(1980年)とか、真琴・グッドバイ(1982年)とか、タイトルを覚えている。ということは、もっと読み続けていればUボート・レディ(1985年)も読んでいた可能性があるな」
オマケ §
「Uボートでいいのかよ」
「いいぞ」
「どうして?」
「中学生の頃、Uボートの本を読んで『Uボート頑張れ、ビスマルクどうでもいい』という価値観を刷り込まれたからな」
「ぎゃふん」
「ほとんど何もしないまま壊されたティルピッツよりUボートだよ」
「あれは、存在そのものが連合軍へのプレッシャーだったから、それでも意味はあったんだよ」
「それは大人になったから言えること」
「ぎゃふん」
オマケ2 §
「それでだ。そのまま大学生になって某所のオモチャ屋で凄いものを見てしまった」
「なんだよ」
「レッドサンブラッククロスのエスコートフリート。開いた口が塞がらないことに、第3次世界大戦の日独戦。Uボートのウルフパックと日本海軍が戦うらしい」
「らしい?」
「買ってないから」
「なぜ?」
「レッドサンブラッククロス本体が無いと遊べないから、そっちを買えないかと思っているうちに時が流れてしまった」
「ぎゃふん」
「そしてヤマトIIIにはガルマンウルフ出てくるし。もうてんやわんや」
オマケIII §
「というわけで、Uボートレディの現物が届いた。2008年の再刊版だ」
「それで感想は?」
「目から鱗が落ちまくり。こんな面白い和製Uボート漫画は見たことが無い」
「そんなに凄いの?」
「これが1985年の段階で既に出ていたとはね」
「どこがいいんだ?」
「そうだな」
- ヒロインが無駄に「萌えて」いない。生きている感じがする
- 主人公が密輸業者で、Uボートを引き上げて整備した日本人
- 主人公自身がムダにUボートマニア。デーニッツを引き合いに出して語っちゃう
- 作者は戦争が分かっている。トテチテターと突っ込む部下など
- 最後は船に乗り上げて乗員どうしの白兵戦! (高価な魚雷をバカスカ使わないのがUボートってものだ)
「ポイントはどこにあるんだい?」
「まず、人並み以上に戦争を分かっている。この年齢だと戦争を知らない子供達のはずなのに、古いことをよく知っている」
「そうか」
「しかし、それだけなら他にもいる。ゆうきまさみだって、永野のりこだって、ムダに古いことはよく知っていて、究極超人あ~るでは杉野はいずこと叫んだり、Give Meたまちゃんも古いネタのオンパレードだ。しかし、この作品はそれとは違う」
「どこが?」
「Uボートマニアなんだよ。ドイツびいきでもない。Uボートびいきなんだよ。だから、デーニッツは尊重するがゲーリングもヒトラーもけちょんけちょん。レーダーなんて名前も出てこない」
「レーダーって電探?」
「ちがーう。ドイツ海軍総司令官」
「じゃあ、デーニッツびいきの本ということで、それでいいの?」
「そこがいい!」
「えー」
「というわけで本棚の奧を漁ったら出てきたぞ。第2次大戦ブックス20 Uボート。サンケイ新聞社出版局。ついでに、インタビューで高橋葉介が影響を受けたというサブマリン707も一冊出てきた。なんて間がいい」
「ひー」
「おそらく、Uボートびいき、デーニッツびいきということは、同じ本を高橋葉介も事前に読んでいる可能性があるな。1971年の出版だ」
「なんだよこれって。予定調和過ぎるじゃないか」
「それは知らんが、俺はそういう人間だったのだ。分かったかっ!」
「じゃあ、最終的にガルマンウルフが事実上唯一のヤマトに完勝した相手として出てくるのは良いわけ?」
「あたぼうよ」
オマケ大戦ブックス §
「どうでもいい余談を続けると」
「なんだよ」
「見つからなかったのだが、記憶が確かなら第2次大戦ブックスの珊瑚海海戦も持ってた」
「それにどんな意味があるの?」
「Uボートレディからレディつながりで」
「は?」
「第2次大戦ブックスって翻訳ものだから、向こうの立場で書いてあるわけ」
「それにどんな意味があるの?」
「レキシントンの愛称はレディ・レックスだった、なんてことも書いてあった。日本側の立場で書かれた本にはそんな話は出てこなかった。搭載機が何機だったとか、何発命中させたとか、そんな話ばっかし。そこが興味深かった。ちなみに、サラトガは愛しのサラだと書いてあった」
「なんちゅうレディつながり」
「そして今は、バスターズ・レディゴー」
「それはレディの意味が違う」
オマケのオマケ §
「どうでもいいが、この本に載ってるWomen's Islandという別の漫画。これに描いてある巡洋艦って、インディアナポリスじゃないか? 形状もそれに近いし、大戦末期に日本の潜水艦に沈められたという話がそれに近い」
「えー」
「日本の潜水艦はセイルに6という数字が読み取れて伊-58ではないっぽいけどな。まあ爺さんの与太話だからいいのだろう」
「えー」
「でも、最後にミズーリに助けられるというのも、分かって書いてるよな」
「えー」
「でもさ。アイオワ級を描く漫画家ならいくらでもいるけど、アメリカの巡洋艦を真剣に描いてる漫画家も希有だと思うぞ」