「このへんは、とても上手い表現だ」
「どこが?」
「圧倒的に強い恐怖の対象は、明瞭に描かないことで恐怖を表現する」
「明瞭に強さを描かないと強さが分からないよ」
「いや、強さじゃないから。ここで描くべきは恐怖だから。一週間で出ると見得を切ったにも関わらず本当に8年掛かるかもしれない恐怖」
「自分の実力で外に出られないかも知れない恐怖だね」
「雪姫の眷属である主人公は最強の部類の不死であるにも関わらず、その最強さがアダになってピンチになるのも面白い展開だよね。ってかそこがポイントだろう」
「どうポイントなの?」
「人が望む夢の超絶能力が実際には問題を解決できないどころか重しにすらなる」
「問題の解決に失敗するとどうなるの?」
「ポーの一族でメリーベルを失って禁断の少年愛の世界に逃避しちゃったりするようなヤバイ世界が待ってるよ」
「いや、それは違うから。UQ HOLDERじゃないから」
「しかし、自分のちっぽけさを味わうという意味で、非常に良い演出で、表現力も高い。読んでいて気持ちがいいな」
「自分のちっぽけさを味わって、それでいいわけ?」
「いいぞ。どうせ子供はそれを味わって大人になるんだ。味わうことが健全な成長だ。まあ世の中にはそれを味わうことを拒否して成長しない奴も多いけどな」
「ぎゃふん」