「死ぬほど面白かった。こんなに面白い映画は滅多に無い」
「ボケ老人が施設に入る映画だろ? なんで面白いわけ?」
「この映画はね、実は映像で描かれている内容が事実かどうか分からないのだ。何か事件があってもそれが事実か否かは分からない。そして、演出によって高められた期待感が成就するかどうかも分からない。成就したように見せかけてしていないかもしれない。最後までハラハラさせられる。何もかも事実かどうか分からないのだ。しかし、一部は確実に作中の事実なのだ」
「なるほど」
「しかも、車は変形するし、オリエント急行は走り去るし、意外と変なところで見どころはあるし、音楽もエンディングまで渋いし、
それはそれとして §
「なんで見に行ったの?」
「スペイン映画だけど、三鷹の森ジブリ美術館ライブラリーなので。わざわざジブリが扱うとは、どんな映画かと思っただけだ」
「内容は全く知らずに行ったわけ?」
「ボケ老人施設の映画ということは知っていたよ」
「ふーん」
「でもね。こんなに面白い映画とは思わなかった。よく出来ている」
「そうか」
「結局、最後の最後まで結末が読めなかった。ここでこうして終わるのか、という予測が全て裏切られたよ」
「そこがいいわけ?」
「筋が通らないで予測できない結末を付けるのは良くないが、どうやって筋を通しているのか掴ませないで、頭を使わせる映画は良い映画だよ」
「その良さとはどのレベルの良さ?」
「ジブリの映画や実写の良作と並べて遜色ないレベル」
「じゃあ、かなり高いわけだね」
「そうそう。アニメとしては良い方……的な評価ではなく、文句なく良い映画だ」
ほぼ満席 §
「下高井戸シネマで見たが、割引デーとはいえ、ほぼ満席。あまりに客が多くてビックリしたが、内容を見て納得したよ、これなら客が入る」
「そうか。みんな分かった上で来ているわけだね」
「分からずに見に行ったおいらは、負け組かもな」