「アニメの製作現場の風景として、技術的な問題はアニメ業界独特のものがあると思うのだが、人間関係とメンタル面で見るとなんら特別な業界では無いと分かってきた」
「それって君が見ている別の業界と見える風景は同じってこと?」
「そうだ」
「そこから見えてくる風景とはなに?」
「ヤマトのリメイクはオリジナルよりもハードルが高いってことだ」
「それはどういうこと?」
「オリジナルはストライクゾーンが広いから、状況がいくら拡散してもまとめやすい」
「ガミラスなんて誰も見たことが無いから、どう描かれても問題になりにくいってことだね」
「そうだ。でもね、ヤマト2199になるとガミラスを見たことがあるファンが大勢いるわけ。そうなるとガミラスらしいガミラスは限定されてくるわけだ」
「なるほど。ストライクゾーンは狭くなるわけだね」
「そうだ。そこで人間の問題が出てくるわけだが、スタッフの全員がヤマトファンでもないし、ガミラスのイメージが同じとも限らない。そもそも、いくら打ち合わせをやって意志を統一して約束をさせても、その通りに行動しない問題が起きる。どうしても、チームはバラバラになって上手く機能しない」
「それがどうなんだよ」
「だからね。それにも関わらず、チームを維持して作品を形にするには、コアスタッフのそれなりの人生経験が必要とされるわけだ」
「問題の類型を知っていて、慌てず急いで正確に対処できる人材が必要なのだね」
「だからね。それこそヤマト2199がヤマト1974に追加して必要とされる技能なのだ」
「つまりなんだい?」
「若さでは押し切れない。経験を積んだある程度の年齢がどうしても必要なんだ」
「分かった。松本さんは30代でヤマト1974をやったが、出渕さんは50代でヤマト2199をやる必要があったわけだね」
とはいえ §
「とはいえ、本当はリメイクよりも自分のオリジナルで勝負できた方がいいと思うけどね」
「よりストレートに俺を出せるわけだね」
「そもそもリメイクは難しいしね」
「全く同じだと見なくてもいいと思われるが、変えると『違う』と怒られるわけだね」
「そうだ。そのさじ加減が難しい。それにどんなに上手くやっても文句を言う奴はけしてゼロにならない」
オマケ §
「死神くんのTVドラマが妙にしっくり来ると思って見ているのだが、原作えんどコイチなのか。道理で」
「で、いったいなぜその話題をここに」
「いやね。殲滅のメロディーを奏でるとき、死神はどうやって仕事をしているのだろうと思って。同時にオルタリアの全員に死期を告げているのかな」
「分かった。波動砲を作ってはいけない理由は死神の過剰労働対策なんだ」