「ともかく腰をやられてな。医者の診断ではヘルニアだ。歩いているとふらついて気持ちが悪くなる。神経の問題だ。ともかくすぐMRIができないというので、当面はクスリを飲んで症状の改善を待つ状態だ」
「それで?」
「結局、身体を動かさないのが最も良くないと分かっているが歩けない。しかし、座っていれば平気だ。ならば、自転車なら遠出も可能ではないか。試したらその通りだったので、ここ数日は自転車で走っている」
「ふーん、それで?」
「当初は国分寺崖線が恐くてね。滝坂の手前だけだと思っていたが、昨日はうっかりつつじヶ丘に出てしまった」
「滝坂の向こうじゃないか。しっかり、国分寺崖線の急坂の向こうだぞ」
「しかし、問題無く上がれたので、今回は多摩川を見ようと思った。ついで、成城で所さんの世田谷ベースを確認に寄ってな」
「ってことは?」
「行きは荒玉水道経由で小田急に出て、そこからは小田急に沿って多摩川まで。帰りは松原通りで仙川に出て甲州街道で戻って来た」
「行きと帰りが違うのが最近の君のトレンドだね」
「しかし、いざ和泉多摩川の土手に立って多摩川を見るとだね。横の道が気になったのだよ」
「横の道がどうした」
「橋で向こうに渡れる」
「渡るとどうなんだよ」
「神奈川だ」
「それで?」
「神奈川の土を踏んで戻って来ようと思った」
「踏んだのか?」
「踏んだぞ。橋の向こうの登戸だ」