「SP0・3、SP0・3、相原を発見!」
「リレー衛星の時の話だね」
「C3POじゃないぞ」
「R2D2でもない」
「それはぜんぜん似ていないな」
「だけど、今になって考えてみると、この描写はおかしい」
「なぜ?」
「どうして、SP0・3という言葉を使うのだ? 相原を発見と言えば良いのではないか?」
「実際、古代は言ってるよね。相原を発見って」
「では、なぜSP0・3というコールサインを定める必要があったのだろう?」
「うーむ」
「実はさ。意図を秘匿するために意味のない符丁を定めている描写ではないか、という気がする」
「うん」
「つまり、相原を捜しているという意図を秘匿しているわけだ」
「でも、古代は相原を発見と言ってしまっているじゃないか」
「つまり、意図を秘匿する必要が無くなったから、ではないかな」
「どういう意味だい?」
「古代としては、何のためにヤマトからコスモゼロとブラックタイガーが出ているか、その意図をガミラスに対して秘匿したかったわけだ」
「なぜ?」
「おそらくガミラスとの交戦を想定したのではないかな」
「なるほど。人捜しをしているからヤマトはがら空きです、とは言いたくないものね」
「あるいは各機が分散行動していたら、各個撃破のチャンスだ」
「なるほど、ここは攻撃されたくはないタイミングだね」
「でもさ。相原とリレー衛星を発見した時点で、当初の意図は解消されてしまったわけだ」
「というと?」
「そこまでの捜索範囲でガミラスには遭遇しなかったから、あとは帰るだけという状況なら、もうガミラスがいないと分かっている宇宙を飛んで戻るだけだ。その際、もう意図を秘匿する意味はない。秘匿する相手がいないわけだから」
「そうか。もっと遠くにガミラスの戦力があっても、コスモゼロの方が先にヤマトに戻って防衛戦力になれるしね」
「しかも、そこにあったのはリレー衛星だ。戦闘兵器ではない」
「その場で戦闘という可能性もなくなったね」
「もし、リレー衛星を守るための戦力が近くにいても、すぐ相原を乗せてその場を離れれば交戦にならない」
「リレー衛星の破壊など、一瞬で終わるからね。すぐ戻れるわけだ」
「攻撃してこぬリレー衛星など、赤子の手をひねるようなもの」
「そうか。模型のヤマトよりも簡単」
「こっそり潜入して爆弾を仕掛ける必要すらない。ろくな装甲も無いから、コスモゼロで一連射するだけ」
「というか、ブラックタイガーですらガミラス艦も撃沈できる火力があるのだから、コスモゼロの威力なら装甲があっても簡単だろう」
「だから、もしも相原を発見して交戦せずに助けられそうにないとき、SP0・3とだけ連絡して仲間を呼んで相原を助けられたわけだ。もし、そこに相原がいると分かれば人質に取られる可能性もあるからね。だから、相原の存在は秘匿されねばならない」
「ふむふむ」
「うん。だから、おそらくSP0・3には意味がない。単なるその場限りの符丁として使われただけ。むしろ、そういう符丁には意味がない方がいい。意味があったら解読されるリスクが高くなってしまう」
「なるほど」
「ちなみに、コンバットB体制が先に出てきて、あとからコンバットA体制が出てきて、これは意味のある言葉と思われる」
「BがあればAがあるものね」
「でも、SP0・3は意味がないから、金輪際SP0・2やSP0・4は出てこない」
「無意味であることに意味がある訳か。これは一本取られたな」
余談 §
「総員コンバットA体制。コスモタイガー出撃!」
「え?」
「さらばだったと思うけどさ。そういってくれた時、凄く嬉しかったよ」
「どうして?」
「コンバットB体制が、その場の思いつきのいい加減な台詞じゃなくて、A体制ももちろんあって使用されるのだという証拠になったからだ」
「些細な台詞だけど、よくスタッフが拾ってうまく使ったね」
「うん。些細だからこそ、嬉しいわけだ」