「仮に海派、陸派という分類をしたとき、松本零士先生と豊田有恒先生は陸派ではないかと考えた」
「これまでの経緯だとそうだね」
「しかし、豊田有恒先生には異聞・ミッドウェー海戦のような作品があり、松本零士先生の意向が強く反映されているとされるヤマト2の、第20話 ヤマト・奇襲に賭けろ!もミッドウェー海戦があからさまなモデルだ」
「そうだね」
「しかも、どちらも基本的に史実の逆転なんだ」
「というと?」
「異聞・ミッドウェー海戦は、基本的にタイムスリップもので史実の結末が逆転したと記憶するし、ヤマト2もむしろヤマト側が史実のアメリカ側に対応してしまうのだ」
「それで?」
「うん。だからさ。これは海派の敗北を描くから陸派の好物になっているのではないか、と思うのだ」
「ええっ?」
「だからさ。逆転とワンセットなんだ。日本側の敗北は嫌だが、海派の敗北は見たいわけだ。だから、立場が逆転して描かれてしまうのだ」
「なんかえらく屈折した話だね」
「単なる思いつきだから、信じるなよ」
余談 §
「そういう風に考えると納得のできる部分がある」
「というと?」
「実はACE COMBAT 5というゲームがある」
「ジェット機の空戦ゲームだね」
「実は、主人公達が最初から2/3ぐらいまでいる基地がサンド島つまり、ミッドウェーのサンド島がモデルなんだ」
「なんと」
「しかも、立場が逆転している。サンド島を爆撃機から守ったり、サンド島を敵の上陸部隊から守るミッションまである」
「うーん、なるほど。これも、ミッドウェーでかつ逆転なのか」
「サンド島を上陸部隊から守るミッションは、潜水空母シンファクシを航空攻撃で沈める話でもあるしな」
「ははは」
「実際、このゲームで最大の山場となるのは砂漠だからな。航空戦と対地戦のミッションを選択できるが、どちらを選んでも決戦場は砂漠であり、地上部隊の進軍を支援することになる」
「海には縁がないね」
「ところがフネには縁があるのだ」
「どうして?」
「対地戦のミッションを選んでプレイすると最後に戦艦ウポールが出てくるのだ」
「ええ? 砂漠戦艦?」
「いやいや。そんなゼノギアスみたいな話ではない」
「じゃあ、干上がった海底に戦艦が横たわっているとか?」
「そんなヤマトみたいな話ではない」
「じゃあ何?」
「大きな河川があって、そこに戦艦が出てくるのだ」
「うは! 馬鹿にしやがって!」
「ゲーム中でAWACSも言ってる」
『河川上流部に敵の増援を確認した。地対地ロケット砲部隊と…馬鹿にしやがって、戦艦だ』
「ゲームデザイン的に、最後に大物が出てきてミッションを締めくくりたいというのは分かるし、一般論として河川海軍があり得ることも分かるが、やはり戦艦が出てきたらストーリー的に馬鹿にしやがってという台詞が出ちゃうわけだな」
「なるほど」
「これはまあ、ストーリーを作った片渕須直さんが山派なのかな、ということで。あるいは、そもそもシリーズのスタッフそのものが山派なのかもしれない」
「えっ。そうなの?」
「実は今年の7月に発売予定のACE COMBAT X2にもサンド島がまた出てくるらしいのでね」
「それでいいの?」
「いいさ。飛行機で飛んでいれば、戦車だろうと戦艦だろうとカモだ。戦艦は確かに強いが、ろくな航空支援もない戦艦などに恐れる必要は何もない。長距離対艦ミサイルを撃ち込めばすぐ沈められる。対空兵器網の間合いに入ってあげる必要すらない。まあ、間合いに入れば機銃ですら戦艦を沈められるというバランスはどうかという話はあるけどね」