「宇宙戦艦ヤマト全記録集 TVシナリオ版」には「艦上機」という表現があります。
実はこれ、かなり意味深です。
まず、空母搭載機を示す言葉には、「艦載機」と「艦上機」があります。
どう違うかは後で述べますが、シナリオではこの種の用語はほとんど出てきません。というのは、実際の表記は「ブラック・タイガー」「ホワイト・ドッグ」「宇宙零戦」「重爆撃機」「雷撃機」などが多いからです。もっと幅広い概念である「空母搭載機を示す言葉」はほとんど出てきません。
しかし、希にちょろっと出てくるわけです。
それが「艦載機」ではない「艦上機」です。
「艦載機」と「艦上機」はどう違うか §
本来の意味としては、以下のような相違があるようです。
- 艦上機 空母で運用する航空機 (例:零戦など)
- 艦載機 空母以外で運用する航空機 (例:零式水上観測機など)
この用語の使い方は旧日本海軍のもののようです。
ちなみに、ヤマトの搭載機がこの分類で「艦上機」にあたるか「艦載機」にあたるかは微妙で悩ましいと言えます。戦艦搭載の機体は「艦載機だろう」と思うなら艦載機ですが、「下駄履きでカタパルトから発進するのが艦載機」と思うのなら、それに該当しないブラック・タイガーは「艦載機」にあたらないような気もします。更に、下駄履きではないがカタパルトから発進するコスモゼロや百式探索艇はどうなのか、等々の問題も出てきてどんどん話がややこしくなります。
まあそれはさておき。
しかし、実際にはこの用語の使い分けはあまり意味を持っていません。というのは、「空母艦載機」のような表現がよく使われるからです。「太平洋戦争中に、日本近海に進出した米機動部隊の艦載機から面白半分に撃たれた」といった話は珍しくもありませんが、もちろん空母に搭載された戦闘機の話です。かなり以前から、この手の用語の倒錯はあったようです。
おそらく、「艦上機」という用語を使用しているのは、コアな海軍関係者だけであり、大半は日本人であっても「艦載機」という表記でしょう。(ちなみに、ACE COMBAT 5でも空母搭載機を艦載機と呼んでいる)
ここでは §
余談ですが、最近のヤマト感想では「艦載機」の表現に統一しています。これは、用語の使い分けにほとんど意味がないために、あえて厳密な意味での誤用を行っています。念のため。
ちなみに余談を言えば、子供の頃、死んだ父が1/72の旧日本軍用機の模型ばかり作っていて、途中から1/700の日本艦の模型にまで手を出したのをずっと見ていました。そういうわけで、別にミリオタというわけではなのですが、いきなり二式複戦『屠龍』とか百式重爆『呑龍』と言われても意味は分かります。そういう知識が、ヤマト解釈の役に立っているのが極めて意外です。
問題は「艦上機」の感情 §
というわけで、話を戻すと。
シナリオに「艦上機」という表現があることから考えて、おそらく以下ような状況があったものと思います。
- シナリオ側に、旧海軍関係者との深く接する機会が多かった
- シナリオ側は、海の話として認識してヤマトのシナリオを作成してた
逆に言えば、「艦上機」という用語にはそれを思い起こさせるだけのインパクトがあった、ということです。