「ヒートガイジェイ1話2話を見たよ。中古DVDがAmazonで1円だったから」
「それでどんな感想を持った?」
「実は割とキャラが多い。見てやっと思い出したキャラも多い」
「キャラが多いのはヤマト2199と同じだね」
「ところが、多いキャラの捌き方が違う。ヒートガイジェイの場合、ほとんどのキャラが主人公ダイスケとの絡みで登場して、ダイスケとの関係性に型があって整理されている」
「ダイスケという軸があるわけだね」
「そう。ヤマト2199の場合、それだけの軸と言えるキャラがいない」
「割と沖田が主役っぽいけど、軸とまでは言えないね」
「途中で倒れちゃうし。反乱などでも【ばっかもーん】で降りてくるまで出番が無いし」
「古代も軸になっていないね。でも古代の出番が多い方舟は?」
「結局、主役が古代なのかバーガーなのか桐生なのか沢村なのか良く分からない作りになっていて、やはり分かりにくい」
「共感していれば自明だが、共感できないとひたすら分かりにくいだけってことだね」
「さて、 ヒートガイジェイの話に戻ろう」
「まだあるのかい?」
「そうだ。実は、この話は一つの街でロボットを連れた捜査官がいろいろ調べる話なのだがね。これぐらいのスケール感で十分に中身が充実していて面白い」
「その心は?」
「宇宙戦艦ヤマトという作品は、個人的にはヤマト艦内だけで完結するエピソードの方が面白いと思うが、たぶんそれと同じことだろう」
「スケールは大きければ良いというわけではないのだね」
「ヤマト2199はガミラス描写を充実させすぎた結果として、どこが見どころなのかが見えにくくなった。本来はヤマトが地球を救う話だったはずなのに、帝国の崩壊物語になってしまった側面がある」
「焦点がぶれて分かりやすくなかったわけだね」
「ガミラスを滅ぼせなくなったわけだしね」
「確かに」
「それに、甘い声で誘いながら打算が透けて見える水商売の女や、必死に懇願しながら客を引いても断られて行ってしまうと地が出る写真屋の少女とか、ああいう人間くさい女はもっと猥雑な空間でしか描きようがないものだろう」
「汚い世界を良く知らないお嬢さんという感じの上司もだね?」
「そうだな。汚い世界を知らないお嬢様の森雪を、泥臭い現実を知って苦労したみなしご古代が救う話だったらもっとヤマト2199も盛り上がったと思うのだけどな」
「結局、綺麗事で終わったわけだね」
「感想をまとめよう」
「まとめてくれ」
「キャラは結城信輝さん、ジェイの声は沖田艦長の菅生隆之さん。他に高倉武史さんの名前も共通して出てくる……のだがね」
「それで?」
「ヒートガイジェイとヤマト2199。同じ結城キャラなのに、これほど印象が違って見えるのか……と驚いたよ」
「それはビジュアル上の特徴?」
「そうじゃない。確かに同じ特徴があって、結城さんらしさがどちらも出ていると思う。そうではなく、人間としてのキャラクターの作り込みの深さに差があって、演技させたときの深みがヒートガイジェイの方がより深く出ているような気がした」
「それは、実はヤマト2199の方が準備が古いという話ではないの?」
「違うな。ヒートガイジェイは2002年。ヤマト2199の企画が動き出したのは2007年頃らしい」
「うーむ」
「そういう意味では演技させたときの深みは2199より旧作の方が上、という話もあるが、それはそれとして」
「演出や作画の技術向上があるから、表面的には2199の方が綺麗だけどね」
「表面的にはその通り」
オマケ §
「どうでもいいことだが、気がついたのでメモろう」
「それはなんだい?」
「カウボーイビバップというアニメが昔あってね。1回見てさっぱり分からなかったのでそれっきり見ていない。でもあの素晴らしさが分からないのかという人もいるし、人気も高い」
「それで?」
「典型的な共感駆動作品のパターンだ」
「でもその話はヤマトに関係無い」
「ではもう1つ気づいたことをメモろう」
「それはなんだい?」
「さらば宇宙戦艦ヤマトは、泣いた人と白けた人がきっぱりと綺麗に別れる」
「それで?」
「典型的な共感駆動作品のパターンだ」
「さらば宇宙戦艦ヤマトもそうか」
「死ぬ必然性のないキャラがどんどん死ぬからな。そこで、好きなキャラが死んでショックな人と、白けた人はいる」
「じゃあ、ヒートガイジェイはどうなんだよ。けっこう毀誉褒貶があるような気がするけど」
「実は、ちょっとパターンが違う」
「というと?」
「【あんなおっさんが主役でいいのか。オレは女の子が見たい】といったリアクションが割とあってだな」
「分からなくもない」
「でも、主人公の周囲は女性キャラばかりといえばそうなんだよ」
「女の子はいっぱい出てくるわけだね」
「しかし、拒絶された。なぜか」
「あんなおっさんの存在感が圧倒的だから?」
「それもあるだろう。しかし、それ以前に作品に入れなかった……のだと思う」
「それは具体的に何なの?」
「知識量の問題だよ。平均的なオタクが持っていない別の何かを要求してしまった」
「それは間違い?」
「そうとも言い切れない。それらは大人向けのアニメを作るなら当然入れねばならないものだからだ」
「オタクは本当の意味での大人向けアニメを見るには幼すぎるわけだね」
「だから制作スタッフ本人はもっと大人であっても、子供じみた作品を作っている場合も多い」
オマケ2 §
「具体的には何だろう?」
「たとえば、オタクは娼婦と聖女しか想像できないという説があってだな。中間を想像できないという。ところが、ヒートガイジェイに登場する女性は全て中間にある」
「ひぇ~」
「逆に言えば、ヤマト2199のユリーシャなんてまさに娼婦の服をまとった聖女だよ。いかに中間に対する想像力が欠如しているか分かる」
「でも、それは結城さんの問題ではないのだね?」
「ヒートガイジェイでは問題なく中間領域を描けているからな。単純に発注側の問題であり、ひいてはファン側の問題だろう」