ハウルの動く城の映画を見て、繰り返し流れるメロディーが素晴らしかったので、サントラCDを聴いてみました。
デジタルの先のヒューマンリズム §
映画のテレビスペシャルの中で、久石譲さんが、デジタル世代を経験したあとのヒューマンリズムということを言っています。
過去に戻る懐古主義ではないという、久石譲さんが言う「デジタルの先のヒューマンリズム」とはいったい何か。
サントラCDを聴いていて、すぐに「ああ、そうか!」という気持ちが起こりました。
ワルツの意外性 §
この映画のメインテーマは三拍子(ワルツ)です。
実は三拍子であることが、非常に心地よいということに気付きました。
ワルツなど昔からあって珍しくもないはずなのに、どうしてそれが心地よいと感じられるのか。
それは「デジタルの先のヒューマンリズム」と関係があるかもしれません。
デジタルのシステムは、2の倍数と親和性が高いと言えます。つまり、2拍子、4拍子の音楽は作りやすいのです。三拍子とは、そこからはみ出してしまったリズムであると言えるかもしれません。すなわち、デジタル化がもたらす2の倍数のリズムに慣らされることによって、我々は三拍子に飢えていたのかもしれません。
つまり、デジタルの先に見出すべきリズムが、2の倍数ではないリズムと言うことかもしれません。
ちなみに、三拍子で思い出すのは天空のエスカフローネの主題歌(三拍子だと思います、たぶん……)ですが、これが上手く歌えない人達がいます。その理由として、デジタル時代には三拍子に慣れ親しむ機会が少ないため、という解釈ができるかもしれません。
はかない音色を奏でる緊張感 §
それ以上に印象深いのは、音に込められたはかなさと緊張感です。
音は一瞬だけ放たれ、そして消えていき永遠に戻っていません。
一期一会の音を生み出す緊張感。それがあっけなく消えていくはかなさ。
それは、デジタル的な音楽システムの先にあるものと言えるかもしれません。なぜなら、完全にデジタル的な音楽システムは、同じ音を何度でも再現可能であるためです。そのような「再現可能」という特徴は、商業的な音楽製作ビジネスという観点からは非常に好ましい特徴となります。安定した品質の作品を作り続けることが可能だからです。しかし、何回でも再現可能であるとすれば、アーティストの緊張感は低下することになります。それは、音楽のドキドキ感を損なう恐れがあります。
これは単に生演奏をすれば良い、という話ではありません。
デジタル世代を経験することによって、何が緊張感を失わせるのか、そして何を行うことで緊張感を得られるかを確実に把握した後でのみ可能な、新世代の表現と言えるでしょう。
その音のドキドキ感にかなり震えてしまうところがあります。
余談 §
エンディング曲で、主題歌の後、メインテーマの旋律が流れる構成が実に素晴らしいですね。
聴いたシステム §
胸を張ってオーディオです、と言えるようなシステムはうちにはありません (汗。
オーディオの真似事のシステムすらありません (汗。
この程度の機器構成で聴いています、という意味で以下にシステムを示しておきます。
SONY DVP-S707D
SONY DP-IF5000 (サラウンド効果はオフ)
SONY MDR-E888 (DP-IF5000のPHONESジャックに直結)