つまり私が好きなものは文学者であって文学ではない §
しばしば誤解されますが、私が過去の文学者達に興味があるのは、彼らの作品が好きであるとか読みたいというわけではなく、彼らの生き様が面白いと思うためです。つまり、彼らの作品をたくさん読んでいるとか好きであるというわけではないのです。
田端文士村記念館に行ったり、世田谷文学館に行ったり、世田谷文学館に行ったり、日本近代文学館に行ったりするのは、まさにそういう理由によるものです。
こんな素晴らしい読者がいるとは嬉しい §
というわけで、この本ですが、そのような文学者に対する興味というものが満たされた面もありますが。
それ以上に嬉しいのは本を書く者の一人として、書かれた文章に込められた意図をきちんと読み取ろうとする読者の存在が意識されたことです。この本の著者は、まさに本来込められた意図を文章から誠実に読み取ろうとしてくれています。これほど書き手として嬉しいことはありません。何せ、いかにできるだけ分かるように文章を書こうと、そこから読み取ろうとしない読者には永遠に伝わらないのですから。
それにしても文学研究とは §
とっくに研究し尽くされていると思っていた漱石作品にも、まだ新しい解釈が出現する余地があるわけですね。特に、東大内の地図を前提にした新しい解釈は、なかなか新鮮で素敵です。
余談 「アリスと3人のふたご」と「漱石と三人の読者」 §
「漱石と三人の読者」というタイトルは、かつて読んだ山田ミネコの「アリスと3人のふたご」とタイトルが良く似た構造なので、本来の意図とは全く関係なく面白いと思いました。
どちらも、一種の謎解き話であるという類似性も面白いですね。
ついでに言えば、「アリスと3人のふたご」はイギリスを舞台にした日本人の作品であり、漱石はイギリス留学経験のある日本人という、「日本からイギリスに向けられた視線」という共通項もあります。