2005年01月04日
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アジャイルソフトウェア開発の奥義 ロバート・C・マーチン ソフトバンクパブリッシング (感想その3 悪書暫定認定)

Written By: 川俣 晶連絡先

 まだ129ページのあたりまでしか読んでいませんが、これは本棚に放り込むことにしました。

 続きを読むために机の脇に置いていても、どうせ読まないし。

 全てのページを読んでいないという暫定的な状態ではありますが、暫定評価として「本書は悪書であり、読んでもろくなことにならない」という結論を下して終わりにしようと思います。

 また、本書を筆頭の参考文献に掲げて推薦するような雑誌記事も見かけますが、それらは信用に値しない、という暫定的な指針も立てておきましょう。

隠蔽される矛盾 §

 本書の構造は、本来前提を共有しない複数の技術を集め、1つの体系であるかのように見せかけるようになっています。

 しかし、それらは前提が異なるため、あちこちに矛盾が発生しているように見えます。

 問題は、矛盾していることが読者には非常に分かりにくい、あるいは、著者すら矛盾を意識していない可能性があることです。

 おそらくは、インターネット知の欠陥と同じ構造により、情報量を増加させることによってコンテキスト性が希薄化したことが矛盾を隠蔽してしまうのでしょう。矛盾とは、情報と情報の齟齬であり、情報と情報の関係をつなぐコンテキストが消失すると見失われる可能性があります。

エクストリームプログラミングは正しい (たぶん) §

 本書は、エクストリームプログラミングと他のものを統合しようとしています。

 しかし、そのような行為には疑問を感じます。なぜなら、エクストリームプログラミングに含まれていない技術の中には、明らかに意図的にエクストリームプログラミングから取り除かれたものがあるはずだからです。つまり、エクストリームプログラミングとは、それに含まれなかったものが含まれないことも含めて1つの最善の形を体現したものであって、他のものとの統合はエクストリームプログラミングの価値が上がるどころか、むしろ下がるのではないかと感じました。根拠のない感想ですが。

 ですから、たぶん、エクストリームプログラミングはそれ単体で既に正しく、それに他の流行りものを付け足す行為は、非常に高い確率で破綻するような気がします。そして、その破綻の実例が本書ではないかという気がします。

もっと単純明快に言えば §

 本書が駄目な理由をもっと単純明快に言えば、分厚いことです。

 厚い本は、どうせ誰も読み通せません。読み通せても、全てを活用することなど、誰もできません。

 ケント・ベックの「テスト駆動開発入門」の薄さと比較すると、その差は歴然です。

本書を買って良かった、という感想 §

 駄目な「オブジェクト指向」の実例を即座に示せる便利な本を手に入れたという意味で、本書を買って良かったと思います。6,090円もして、多くの人が絶賛するこの本だからこそ、実例として利用するに値します。

本書の他の感想編はこちら:

感想その1 YAGNI?

感想その2 再びYAGNI

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