この本は、出版されて間もない時期に買いました。まあそれでも第三版というわけですが、おそらく奥付から見て、買ったのは1997年7月頃でしょう。
それが、長い長いあいだ放置されたのは、やはり妖怪と違って怪談にあまり心惹かれなかったからでしょう。
今になって、やっと読むに気になったのは、さほど大きな理由があるわけではありません。最近、積んだまま放置されていた"陰摩羅鬼の瑕(おんもらきのきず)"と"百器徒然袋 風"を読み切ったことから、気になっていた本を読み切ってしまおうという気持ちから、これを手にしただけ……と言えるかもしれません。
最初の誤解 §
読み始めてすぐに、自分がとんでもない勘違いをしていたことに気付きました。
買ってすぐに目を通した最初の数ページの先まで読み進むと、これが面白いのです。挫折するのに、気が早すぎたようです。
しかも、又市が出てくるではありませんか。
巷説百物語は好きですから、又市が出ていると知っていたら、もっと早く読み始めていたかも……。
もう1つの誤解 §
しかし、又市が登場するからといって、巷説百物語のような話ではありませんでした。
やはり、これは怪談と呼ぶに相応しい「怖さ」を持った作品ですね。それは間違いないと思います。
何しろ、又市は何も仕掛けていません。
しかし、あまりに恐ろしい怪談が浮かび上がります。
実は、四谷怪談と言われても詳しいことは何も知りませんが、これだけ読んでも十分に鮮烈で興味深い怪談になっています。
地理把握の問題 §
実は、登場する地名が、だいたい了解できました。江戸時代の地理に照らして、どのあたりか分かるということです。たとえば四谷というのが、江戸城、堀、門、甲州街道などとの位置関係で分かるということです。それによって、スムーズに読めた面が確かにあります。しかし、このスキルは、特に入院した2002年後に、歴史資料館巡りなどにより獲得したもので、1997年当時の私には無かったものです。ですから、実は読む時期が今にまで遅延されたのは、良いことだったと言えるのかも知れません。
悪の魅力・喜兵衛 §
最も印象深いのは、やはり喜兵衛でしょうか。
こいつの悪としての大きさと、理解されない孤独さがあればこそ、この作品は引き立つと言えますね。むしろ、本来の主人公である伊右衛門よりも、彼の方に感情移入できるといって良いと思います。
次は覘き小平次 §
やっと、次は覘き小平次に手を付けられます。
他にも、読む価値のある本が山のように積まれています。実は、とても嬉しい状況だと最近になって気付いたところです。