映画「さらば宇宙戦艦ヤマト」を再び分析の対象にしてみようという時代錯誤な企画の派生として、(初代)TVシリーズ「宇宙戦艦ヤマト」の分析にもちらっと手を出してみようと思いました。間違い、勘違い、異論、反論などは上記メールアドレスかtestml4までお寄せ下さい。
冥王星海戦の謎 §
(初代)TVシリーズ第1話で、沖田率いる地球艦隊がガミラス艦隊と戦い、敗北した戦いを冥王星海戦と呼ぶことにしましょう。
この戦いにはいくつかの謎があります。
- 地球・ガミラス双方が空母を参加させていないのはなぜか?
- シュルツ艦が参加していないのはなぜか?
- 古代艦は敵艦を撃沈できるのに、沖田艦は撃沈できないのはなぜか?
- そもそも沖田艦隊は何をしに冥王星まで行ったのか?
- ヤマト完成間近のタイミングであるのに、なぜヤマト完成を待たなかったのか?
これに対して、以下のような推理を行ってみました。
- 地球の軍事技術は非常に早いペースで進化しており、超光速航行ができない以外は既に互角だった
- 技術は互角でも数で負けていた
- 双方とも戦艦と空母を比較すると空母が比較的優位
- さらば宇宙戦艦ヤマト再分析序論・藤堂長官は武力クーデターを準備していたという仮説で述べた派閥と同じものが当時も存在した。この派閥のうち利権派が、地球から逃げ出す手段のヤマトが撃破されることを恐れ、ヤマト完成前に決戦を挑ませた
- 沖田艦隊の目的は冥王星の遊星爆弾発射施設の破壊であった
- 空母部隊は、沖田艦隊を安全に冥王星まで送り届けるための囮となった
- ガミラスは、空母部隊が主力、沖田艦隊が囮と逆の判断を行った
- シュルツ艦と空母を含むガミラス主力艦隊は、空母部隊を攻撃し、壊滅させた
- 沖田艦隊へは、残余の砲戦部隊を差し向けた
- 地球艦隊は空母中心で編成され、砲戦用艦艇の建造にはあまり力を入れていなかった。ゆえに沖田艦は敵戦艦を撃ち抜けなかった
以下、個々の項目を説明します。
地球の軍事技術は非常に早いペースで進化しており、超光速航行ができない以外は既に互角だった §
イスカンダルからもたらされた波動エンジンが始動する前からヤマトはガミラス空母を撃破でき、波動エンジンを搭載しないブラックタイガーがガミラス機と互角に戦っている以上、当然考えられる前提ですね。
技術は互角でも数で負けていた §
大星間帝国と、太陽系内の資源しか使えない地球の差はここに求められます。
双方とも戦艦と空母を比較すると空母が比較的優位 §
ヤマトがわざわざ戦闘機隊を搭載していること。
ドメルが決戦に空母からなる艦隊を編成したこと。
冥王星前線基地でも空母が多用されていたこと。
等々から、戦艦よりも空母が強い、航空優位の状況が推定されます。
しかし、絶対優位では無さそうです。
利権派が、地球から逃げ出す手段のヤマトが撃破されることを恐れ、ヤマト完成前に決戦を挑ませた §
さらば宇宙戦艦ヤマト再分析序論・藤堂長官は武力クーデターを準備していたという仮説で述べた派閥と同じものが当時も存在した……というのは、確実な根拠のある話ではありません。
しかし、自分たちが地球から逃げ出す手段を確保しようとする勢力が存在したのは当然予測される状況です。彼らは、戦闘でヤマトがすり潰される状況は絶対に避けたかったことでしょう。しかし、完成したヤマトがあれば、戦闘に投入せよ……という圧力が掛かるのも間違いないことでしょう。
とすれば、地球防衛軍最後の、そして最大の決戦は、ヤマト完成前に行われるようにスケジュールを調整するのが最善です。
あえてヤマト完成前に決戦を挑む理由があるとすれば、以上のような説があり得ます。
沖田艦隊の目的は冥王星の遊星爆弾発射施設の破壊であった §
もし、目的がガミラス艦隊の撃滅なら、冥王星まで出向く必要はありません。地球に近い場所に敵艦を個別におびき出し、各個撃破を目指す方が有利のように思われます。
それにも関わらず冥王星まで行ったということは、冥王星に存在する施設が攻撃目標だったと考えて良いでしょう。
とすれば、地球の安全という観点からは、遊星爆弾の発射施設の破壊(あるいは、ガミラス前線基地そのものの破壊)という作戦目標が推測できます。
空母部隊は、沖田艦隊を安全に冥王星まで送り届けるための囮となった §
空母が戦艦に優越していることが「常識」となったにもかかわらず、空母抜きの大海戦が発生した事例が歴史上存在します。これが、1944年のレイテ沖海戦です。
ここでは、圧倒的に劣勢だった日本海軍は、本来なら主力艦と見なされる空母を囮に使って敵艦隊を引き離し、時代遅れと見なされた戦艦によってレイテ島に上陸しつつある米軍を攻撃するという作戦を取ります。
史実に則り、冥王星海戦も同様の作戦であったと考えるのは様々な意味で妥当に思えます。両者での地球と日本の立場はとても似ています。
ガミラスは、空母部隊が主力、沖田艦隊が囮と逆の判断を行った §
これもレイテ沖海戦の経緯と同じという推定です。
シュルツ艦と空母を含むガミラス主力艦隊は、空母部隊を攻撃し、壊滅させた §
ガミラス軍は主力を惜しみなく投入し、地球防衛軍の空母部隊は跡形もなく壊滅させられたのでしょう。
沖田艦隊へは、残余の砲戦部隊を差し向けた §
冥王星前線基地の空母は「高速空母」と称されており、他の艦種と比較して特に速度が速かったことが推測されます。
とすれば、速度が見劣りする砲戦部隊は一緒に行動させると足かせになるので、囮部隊(と彼らが思った)沖田艦隊の攻撃に差し向けられたのでしょう。
ちなみに、シュルツ艦が砲戦部隊に含まれていないことから、高速空母と艦隊行動を取れるぐらい高速な特別艦であった……という可能性もあり得ます。
地球艦隊は空母中心で編成され、砲戦用艦艇の建造にはあまり力を入れていなかった §
空母優位の状況なら、劣勢の地球が力を入れて建造するのは戦艦ではなく、空母でしょう。ゆえに、強力な砲戦用の艦艇を地球防衛軍は「作ることができたが持っていなかった」と考えるのが自然に思えます。
一方で、沖田艦隊の任務は、空母部隊が敵艦隊を引きつけている間に遊星爆弾の発射施設を撃破することです。敵艦の分厚い装甲を撃ち抜くことではありません。それゆえに、非力な艦艇であっても十分に戦果を上げられると考えられたのかもしれません。
しかし、万が一、目の前に戦艦が出てきたら、それを撃ち抜くことはできません。ゆえに沖田艦は敵戦艦を撃ち抜けなかった……と考えることができます。
一方で、古代艦(ゆきかぜ)は砲ではなくミサイルで戦う駆逐艦です。駆逐艦は空母を守るために必要とされるので、強力な艦をきちんと建造していたと思われます。
まとめ §
地球防衛軍主力の空母部隊の存在の推定、沖田艦隊の作戦目標の明確化、派閥としての利権派の存在の推定、以上の3点で、冥王星海戦にまつわる私の疑問はおおむね解消しうるようです。
しかし、話はそこで終わりません。
地球防衛軍主力の空母部隊……という存在を推定することにより、ヤマトになぜコスモゼロとブラックタイガーという2つの機種が搭載されているのか、なぜコスモゼロは古代のみが使うのか……といった別の謎に答を出せる可能性が出てきたのです。