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2008年01月12日
川俣晶の縁側歴史と文化下高井戸周辺史雑記total 5856 count

実は甲州街道より青梅街道の方が重要度が高いという仮説

Written By: 川俣 晶連絡先

 甲州街道(甲州道中)について考え始めるとすぐ直面するのは、江戸時代の五街道の1つであるにも関わらず、大名も滅多に通らない寂れた街道だという現実です。

 実は他にも違和感が多くあります。

  • 新宿追分で直進する経路は青梅街道であり、甲州街道は脇道に曲がる形になる
  • 中央線(甲武鉄道)建設前の東京西部の鉄道計画には青梅方面に接続する計画はあるのに、甲州街道沿いの計画は1つも見あたらない
  • 東京西部の鉄道網の結節点は八王子かと思いきや、青梅方面につながる立川や福生のウェイトも大きい
  • 甲州街道と青梅街道の双方が通過する東京都杉並区の区役所は、甲州街道沿いではなく青梅街道沿いにある

 まるで、甲州街道よりも青梅街道の方が格上みたいじゃないか!

なぜ青梅街道は重要なのだろう? §

 地図を見ると、青梅方面に価値があるらしいことが歴然と見えてきました。

 青梅方面(青梅街道)と八王子方面(甲州街道)を比較すると、以下のような差が地図上から見て取れます。

  • 八王子方面はすぐ山なのに対して、青梅方面は平地の懐の深さがある
  • 八王子方面は多摩川の支流の浅川があるのに対し、青梅方面は大河と呼ぶにふさわしい多摩川の本流がある

 つまり、何かを行う土地と、安価な物流手段としての川が青梅街道方面の方がよく揃っていることになります。

 逆に、大月や諏訪に抜ける経路として見ると、青梅街道はかなり大回りの経路になります。これが弱点と言えるかもしれません。

 (ただ、WikiPediaに「道程で甲州街道より二里短く」と、甲州街道よりも距離が短いように記述されているのは、具体的にどこからどこまでの距離なのか根拠も示されていないので何とも言えません)

なぜ甲州街道は重要なのだろう? §

 大月や諏訪、更には甲府への移動経路として見た場合、青梅街道よりも甲州街道の方が優れているように見えます。

 つまり、甲州街道の強力なアドバンテージは、明らかに関東平野の外との交通に見て取れます。

 域内については強いて言えば、甲州街道は平安時代の武蔵国の政治的中心であった府中を経由するという長所を見ることができます。しかし、この地が重要性を持つのは鎌倉時代までのようで、江戸時代の街道として考えた場合、さほど大きな価値ではないと考えられます。

域内交通と域外交通 §

 以上をまとめると、以下のような傾向の差がくっきりと出る感があります。

  • 青梅街道=域内交通に強い=商業物流が主=利用者が多い
  • 甲州街道=域外交通に強い=政治軍事が主=利用者は少ない

 つまり、青梅街道と甲州街道の差を、主要目的としての域内交通と域外交通の差と認識すると、いろいろな違和感にすっきりした解釈が付くような気がします。

 たとえば、鉄道建設計画について言えば、民間の自発的プランの段階ではローカルな利便性を前提に計画を立てるため、青梅方面に接続する計画が主になります。しかし、計画が本格化してくると国家の交通戦略体系との整合性の関係上、どうしても域外交通との接続性を避けることができず、青梅方面ではなく八王子方面への接続が重要視されることになります。しかし、これはあくまで「域外交通」との整合性の問題でしかないので、甲州街道沿いに路線を建設する必然性はあまりありません。それゆえに、甲武鉄道(現JR中央線)は甲州街道沿いの高井戸も調布も府中も経由せず、八王子に向かって線路を敷いて良かったわけです。

 逆に青梅方面に連絡するため、それに有利な位置に線路が敷かれていることが地図から見て取れます。そして、青梅に向かう路線が分岐する立川は八王子と並ぶ重要な交通の結節点となり、青梅線直通の列車が東京駅から運転されるわけです。

 しかし、域内交通と域外交通は「街道の繁栄」という観点から見ると対等ではありません。なぜかといえば、交通量に大きな差があると考えられるためです。つまり、商業物流という観点から見ると、域内交通によって移動する人や商品の量の方がずっと多いことが予想されます。だから、域内交通のための街道の方が繁栄すると考えて良いような気がします。それにも関わらず甲州街道が整備され、維持されねばならなかった理由を求めるなら商業物流よりも政治軍事に求められるべきでしょう。しかし、それらはより大局的な観点から強権を持って維持されるものであり、一般大衆から支持され、便利に使われるものとは違います。

 つまり、域内交通のための街道の方が繁栄することが予測されます。それは、青梅街道の繁栄を示唆すると同時に、甲州街道が必ずしも繁栄しないことも示唆します。

 それが、青梅街道の方が重要度が高いという主張につながるわけです。

青梅街道の重要性から解釈できるかもしれないこと §

 このような認識は、東京西部に見られる様々な「ねじれ」を解釈する手段になると同時に、特に新宿西部の状況を考察する助けになってくれる可能性に期待しています。

 それは特に「淀橋」という土地の解釈に強く関係します。淀橋とは青梅街道と神田川の交点に掛かる橋であり、そのあたりは昔から繁栄していました。そして、大東京35区において周辺を含めた地域に「淀橋区」という名前を付けるほどの存在感を示します。

 しかし、甲州街道沿いの新宿西部に「淀橋」に匹敵する存在感を持った場所は今のところ見出せません。内藤新宿は言うまでもなく青梅街道と甲州街道の分岐点であり、青梅街道に対する甲州街道の優越の根拠になりません。そして、その次の宿場町である高井戸宿は言うまでもなく、大きく繁栄した宿場町とは言えません。

 逆に言えば、高井戸宿が起点の日本橋から遠すぎるために新しい宿場を作らねばならない……となったときに、なぜ内藤新宿でなければならなかったのか、という根拠が見えてくる感があります。重要な価値を持つ別の街道との分岐点にこそ、宿場町は必要とされたわけです。

補足 §

 以上は全て単なる思いつきをメモった感想文に過ぎないので、学校のレポートに書いたりしないように! 内容を信じてはいかんぞ!

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