「実は甲州街道より青梅街道の方が重要度が高いという仮説」で以下のように述べました。
- 青梅街道=域内交通に強い=商業物流が主=利用者が多い
- 甲州街道=域外交通に強い=政治軍事が主=利用者は少ない
そこで、「域外交通に強い」と「利用者は少ない」が結びつくのか、という疑問が当然あり得ます。
その疑問に答えるには、もう1つの情報が必要です。
それは以下のような情報です。
- 西に対しての関東平野域外交通手段は甲州街道(甲州道中)だけでなく、中山道や東海道もある
- 甲州街道は中山道の途中までの別経路でしかなく、距離も短い。特に理由が無ければ甲州街道は通らない
- 東海道の方がずっと楽な道。特に理由が無ければ中山道も通らない
そもそも、近畿、中国、四国、九州から来る大名はたいてい東海道を通り、中山道も甲州街道も使う意味がありません。
具体的にどれぐらいのシェアの差があるのかというと。『文化財シリーズ26 甲州道中「高井戸宿」杉並区教育委員会』によると文政五年(1822)の五街道を通行する大名数と石高合計は以下の通りです。
- 東海道 1194万8200石 146家
- 中山道 212万8023石 30家
- 奥州道中 257万27石 37家
- 日光街道 18万3850石 4家
- 甲州道中 8万3000石 3家
大名以外のニーズもこの割合と大差ないと思います。
つまり、東海道などと比較した場合、そもそも比較にならないぐらいシェアに差があるわけです。
これに対して、域内交通は活発です。たとえば、杉並、世田谷あたりの農家が作った野菜を江戸に持って行って売る等の活動は毎日のように行われていて、日常的に都市で消費される物品が頻繁に輸送されていたことが容易に予測できます。
オマケ・地図で見る青梅街道の優越 §
複製古地図「東京近傍中部 明治十三年測量同十九年製版」を見ると、新宿近辺での青梅街道の優越が明確に読み取れます。青梅街道は内藤新宿から淀橋を越えてその先まで、ほぼ一体の市街地があるように見えます。しかし、甲州街道側はすぐに市街地が尽きてしまうように見えます。
やはり、圧倒的に青梅街道の方が繁栄しているように見えます。