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2008年09月14日
川俣晶の縁側歴史と文化下高井戸周辺史雑記total 6718 count

いくら見ていても飽きないぞ・隠された地下の秘密を白日の下に! 東京都下水道局の下水台帳ホームページ!!

Written By: 川俣 晶連絡先

失敗談 §

 最初に失敗談を書きます。私の水路跡趣味は、何よりまず玉川上水から始まっています。何しろ、生まれ育った家(現住所ではない)のすぐ裏手が玉川上水でありながら、タッチの差で水が流れる光景を見られなかったのです。甲州街道については、首都高4号線建設前の甲州街道を見ていますが、玉川上水は埋める前の姿を見ていません。

 更に、いわゆる「ドブ板」について興味対象が広がった理由は、玉川上水下高井戸分水にあります。「ドブ板」と称して蓋をされたドブ川だと思っていたものが、実は上水の分水だったという衝撃。これが、第2の起点です。

 この2つの起点に共通するのは、玉川「上水」というキーワードです。そのため、調査のフォーカスは自然と上水道史へと向かいました。実際、多くの歴史資料館はこの興味を大なり小なり受け止めたと言えます。たとえば、江戸時代の木製水道管などを展示する歴史資料館もあります (新宿歴史博物館等)。

 更に言えば、世田谷方面に拡大した水路跡趣味も、玉川上水の分水の1つである北沢川とその支流の話になります。これもまたキーワードが「上水」です。

 であるから、何も疑いもせず「上水」という切り口でずっと調べていました。そして、調査を続けて最終的に、文京区本郷にある水道歴史館の図書室に到達しました。

 そこで一応、納得のいく結果は得られたのですが、割り切れない妙な違和感が残りました。暗渠化された後の状況がどうもはっきりしないのです。いくら調べても、そこに曖昧さが残るのです。かといって、地下のことは外から見ても良く分かりません。つまり、そこで行き詰まってしまったのです。

 なぜそこで行き詰まってしまったのか。

 間抜けな話ですが、最近になって、やっとその理由が分かってきました。

 かつての水路網は、その後、排水路や下水道になったのです。上水道ではなく下水道です。だから、いくら上水の切り口から追求しても具体像が見えないわけです。

 ちなみに、玉川上水本流はともかくとして、その分水は「水の供給」という役割だけでなく、「水の排出」という役割も持っていたはずです。水田とは常に水を張っておくものではないからです。そして、宅地化が進んだ時点で生活排水が流れ込み、まさに「水の排出」という役割を担わされたと考えられます。そして、水の供給は新たに整備された衛生的な上水道網が担い、かつての水路は「排水」だけを担うことになります。この水路が暗渠化され、下水道に統合されていくのはいわば当然の成り行きといえます。

 であるから、かつての「上水の分水」を追求する場合、宅地化の進行に伴って注目すべき対象を下水道に切り替える必要があったわけです。

※ おそらく、下水道網と公図上の青線をフォローすれば、現在の水路跡の状況がかなり見えてくるのではないかと考えていますが、まだ考えているだけの段階です。青線の方はまだ何も手を付けていません。

東京都下水道局の下水台帳ホームページ §

 下水道網の状況を知る手段は無いものか……ということは、たまに考えていました。しかし、少し別の話題を追っていて、それは主要な興味対象ではありませんでした。また、漠然と、下水道網に関する資料はあるだろうが、どこかに行って閲覧を申請しないと見られないものだろうと思っていました。

 さて、昨晩「神田川 「まる歩き」 しちゃいます!!」さんの蟹川(金川)を何気なく読んでいたときに、以下のような記述に出会いました。

ただ、これは地上から見ての話で、地下では下水道幹線として今でも機能しているようです。都下水道局の下水道台帳を追ってみると、歌舞伎町から早稲田大学前まで、戸山幹線と蟹川の流路は一致しています。

 つまり、下水道と旧水路の流れを照らし合わせるという、漠然と私が考えていたやり方を既に実践済みだったことが分かって、少し勇気づけられたわけです。

 ところが、話はそれで終わりません。「都下水道局の下水道台帳」という言葉が引っかかりました。どこに行けばその台帳は閲覧できるのかと検索してみました。(名前を知ると調査が格段に進むのはよくあること。「都下水道局」「下水道台帳」という言葉2つで検索エンジンが始動できる)

 その結果、あまりのことに口をポカンと開けてしまいました。

下水道台帳案内より (強調筆者)

『下水道台帳』

 下水道局が管理する下水道管の埋設状況は、「下水道台帳」という図面に記載されています。

 下水道局は、この「下水道台帳」(施設平面図 縮尺:1/500)を平成17年4月1日よりホームページ上に公開しました。

「下水道台帳」でわかることは、東京23区の公道の下水道管の埋設状況です。

下水道管の位置・深さ・管径・管種、公共ますの位置等を記載しています。

下水の排除方式(合流式・分流式)もわかります。

印刷様式はA4、A3の縦・横です。

印刷図面の縮尺は1/500です。

 インターネットで下水台帳が閲覧できるではありませんか!

 しかも、最小20メートルという詳細さ。

 外からは見えない地下の状況が丸見え!

 いくら見ていても飽きないぐらいに、エキサイティングな情報の宝庫!!

 見ていると次から次へと、いろいろなことが分かってきました。

流路方向の謎 §

 たとえば「神田川・高井戸南支流跡 (仮称)」は、神田川の支流であった時代には上流部で神田川と別れ、下流部で合流し、流れは全線に渡って一方向だったはずです。しかし、現在は神田川に流れ込む流れはあっても、神田川から別れる流れは見あたりません。(これは神田川を観察しながら歩けば確認できる)、

 ということは、かつての水路跡の下に下水管が埋まっていても、流れる方向は開渠時代とは違うかもしれません。

 このようなアイデアが正しいことが下水台帳で確認できました。

下高井戸分水と神田川の合流点 §

 玉川上水下高井戸分水あるいは神田川の支流と神田川の合流点と考えられる以下の点にある四角い水路口の正体も分かりました。

下高井戸分水と神田川の合流点?

 この部分は「公共溝渠・暗渠」として「合流管=汚水(雑排水を含む)と雨水の両方を流している管」が南方から流れていますが、この管は神田川に接する直前で西に方向を変えています。しかし、「雨水管=雨水のみを流している管」だけがそこで分岐し、そのまま直接神田川に繋がっています。この四角い穴はこれです。

 つまり、以下のことが言えます。

  • 玉川上水下高井戸分水あるいは神田川の支流の大多数(全てではない)は下水道管網となった
  • おそらく開渠時代の最終的な神田川合流点は、下水道網にあっては終点ではなくなり、その先に続きが存在する (これは西に曲がった後、神田川を渡ってその先に続く)
  • ただし、雨水に限ってはそのまま神田川に流し込む構造を取っている (開渠時代の流れを踏襲?)

 これによって、「神田川に開いた穴・暗渠化された玉川上水下高井戸村分水出口……だろうか?」で述べた謎を含め、上記写真の四角い水路口の以下の謎に明確な解釈が付けられます。

  • 水が流れ出ている光景を見たことがない → 雨水限定なら雨天あるいは雨の直後にしか流れない。晴天に見に行っても流れていないのは当たり前
  • 奥から水が流れる音が聞こえる → 西に流れを変える下水道本流の流れもそこにあるので、その音が聞こえている可能性があるが、もちろんそれは神田川には流れ込まない

玉川上水下高井戸分水向陽橋合流説の根拠 §

 「「玉川上水系に関わる用水路網の環境調査」の現物を見るも、玉川上水下高井戸分水向陽橋合流説の確証は得られず」等で触れている玉川上水下高井戸分水向陽橋合流説ですが、下水道網を見ると、旧玉川上水下高井戸分水は確かに向陽橋の方につながっているように見えます。昭和20年代の航空写真をベースに推定した経路に下水道管は繋がっていません。ですから、下水台帳をベースに流路の推定を行ったと仮定すると、玉川上水下高井戸分水向陽橋合流説はあり得ます。

地図にない道 §

 「神田川・高井戸南支流跡 (仮称)」には、実際には道路が存在するにも関わらずGoogle Mapsの地図に道路が描かれていない区間があります。(詳細は上記リンク先参照)。

 この区間は、地下に下水道管が存在しない区間と(完全一致ではないが)ほぼ同等です。

感想 §

 いくら見ていても飽きません。

 ともかく、目から鱗が落ちまくり。

 意外な場所に下水道管があったり無かったり。しかも流れる向きも意外だったり。

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